出版社内容情報
アブー・ヌワースは八世紀から九世紀にかけてアッバス朝イスラム帝国の最盛期に活躍し,酒の詩人として知られる.現世の最高の快楽としてこよなく酒を愛した詩人は酒のすべてを詩によみこんだ.その詩は平明で機知と諧謔に富み今もアラブ世界で広く愛誦されている.残された千余の詩篇から飲酒詩を中心に六十二篇を選訳.
内容説明
アブー・ヌワースは8世紀から9世紀にかけてアッバス朝イスラム帝国の最盛期に活躍し、酒の詩人として知られる。現世の最高の快楽としてこよなく酒を愛した詩人は酒のすべてを詩によみこんだ。その詩は平明で機知と諧謔に富み今もアラブ世界で広く愛誦されている。残された1000余の詩篇から飲酒詩を中心に62篇を選訳。
目次
飲酒詩
恋愛詩
称讃詩
中傷詩
哀悼詩
たしなめの詩
禁欲詩
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
藤月はな(灯れ松明の火)
83
禁酒で有名なイスラム京文化で飲酒をテーマにした詩で有名なのは『ルバイヤート』しか、知らなかった。しかし、こんなにあっけらかんと酒を飲み、男色や略奪愛などの快楽を伴う人生を謳歌する愉しみに満ちた詩人がいたなんて!酒賛美の詩は抑圧的に生きる事を強制する社会や理屈に合わない慣習に従うことへの偽善への批判を込めているようだ。しかし、終盤になると自分の退廃を極め、庇護者すらいなくなって困窮する自身への恥を綴る詩に変わるのが遣る瀬無い。時の流れの無惨さよ。酒を飲んでまた、読みたいですね。2021/11/12
kaori
38
アブー・ヌワースは8世紀アッバース朝最盛期に活躍し、広くイスラム世界で親しまれている詩人であるという。イスラムは禁酒でなかったかとの疑問もあったが、文化の円熟は教義も曖昧になるらしい。同じイスラムのオマル・ハイヤームのルバイヤートを読んだことがあるが、全くその時との印象が違う。私も相当お酒が好きだが、彼の酒への愛は私もたじろがされるほど(笑)酒を愛する人なら彼に対する共感も、ダメダメぶりも愛おしく思えるだろう。なんだか飲むことに対しての罪悪感を払拭してくれたような。解説に彼を俗物とあったが、俗物万歳!→2014/12/22
スプーン
33
アラブの自由人による、飲酒・男色詩集。反骨の詩人の神は酒であった。2021/11/03
はやしま
22
解説に「酒の詩人」として李白、オマル・ハイヤームと並んで挙げられているが寡聞にしてこれまで知らなかった。夜な夜な街に出て杯を交わし、酒をこよなく愛する気持ち、女性や美少年と交わる様子や失恋などが素直に詠われていて、とても魅力的で愛おしくなる。でもそのおおらかな作風を楽しんでいたのに、禁欲詩では遊蕩の日々を反省し、神への信仰を書く変わりようには驚く。放蕩無頼な振る舞いは若さゆえだったのか、貧すれば鈍するのか、解説にあるように実は信仰隠しだったのか。しかし人間らしいといえばらしいのかもしれない。2017/08/13
ユーさん
20
「欲」が出まくっています。1に「酒」2にも「酒」、そしてその先も「酒」。時々「美少年」。ここまでの徹底ぶり、尊敬します。最後の解説長いですね。2017/05/31