出版社内容情報
少年ラーサロが,悪知恵にたけた盲人や欲深坊主,貧乏なくせに気位は高い従士やいんちき免罪符売りなど,次々に主人をわたり歩いてはなめるさんざんな苦労の数々.十六世紀当時のスペインの社会や下層民の生活が風刺鋭く,簡潔な描写で赤裸々に写しだされてゆく.ピカレスク小説をヨーロッパに流行させるさきがけとなった傑作.
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
新地学@児童書病発動中
101
スペイン文学の古典の一つ。作者が分かっていないところが面白い。昔話や神話のように根源的な力があって、読み手を惹きつける内容を持っている。主人公の少年ラーサロが様々な苦労に直面しながら生き抜いて、幸せを掴む。ラーサロにとって一番大切なことは、食べることだ。食べ物を手に入れるために、彼は知恵を絞る。第2話で書かれているように、ねずみの仕業に見せかけて、主人からパンをくすねたりする。訳者によると、この本は16世紀に出版されてたちまち人気を博したそうだ。食べるために、四苦八苦する庶民の共感を呼んだのだろう。2017/04/30
なる
31
スペイン大使館でスペイン文学を紹介するイベントがあり、ドン・キホーテ等を抑えて筆頭として挙げられていた本作。ピカレスク小説というジャンルの先駆けとなった小説だそうで、ラサリーリョことラーサロ少年が色々な人と知り合うたびに召使いとして辛酸を嘗めながらも成長して行く物語の中に16世紀の当時のスペインの社会を鋭く描いている。才知に長けた盲人、ケチな聖職者、貧乏な従士、ずる賢い免罪符売りなどの世渡りのテクニックになるほどと思わせる。仕えた人によって語られる長さに極端な差があって、背景を考えてみるのも興味深い。2023/07/11
YO)))
22
16世紀スペインの底辺小悪党列伝.楽しい.2015/06/06
壱萬弐仟縁
13
37頁の呪師。呪いで病気を直す。特に恐水病を唾液で直したという(115頁訳注(9))。恐水病とは、現代の狂犬病とのこと(広辞苑)。へぇ。唾液では治らんだろうなぁ。2014/01/31
KAZOO
10
何十年かぶりの再読です。作者不明ながら非常に評判になった小説で悪漢小説とでもいうのでしょう。少年がどんどん主人を変えていき、様々な当時のスペインの生活などを活写しているさまは劇か映画を見ている気持にさせてくれます。小冊子ですが傑作だと思います。2013/11/15