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岩波文庫
魅せられた旅人

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  • サイズ 文庫判/ページ数 314p/高さ 15cm
  • 商品コード 9784003263914
  • NDC分類 983
  • Cコード C0197

出版社内容情報

19世紀ロシア作家中,レスコーフ(1831‐1895)ほどみごとにあらゆる階層のロシア民衆を描きえた人はいない.本書は彼の創作力がもっとも旺盛だった70年代前半の傑作で,主人公自らに幼時から老年にいたるまでの放浪の「悲喜劇」を語らせつつ,その矛盾にみちた複雑な個性をあざやかに浮彫りにする.巻末にゴーリキイ「レスコーフ論」を付す.

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

kasim

36
ベンヤミンのストーリーテラー、レスコフ。豪傑風の修道士が行きずりの人々に波瀾万丈の人生を語って聞かせる。馬の目利きとして天賦の才を持った彼は貴族に仕えたりダッタン人と暮らしたり、ジプシーの美女に片想いしたり。1873年といえばフロベールにエリオット、ツルゲーネフとリアリズムは完成済。ドストエフスキーやゾラなど次の一歩も始動している時期。写真めいた油彩が主流のところに木版画が紛れ込んだようで、ピカレスクに近いけどわずかに幻想風味があり、さばさばした語りにかえって深い諦念を窺わせるのは独特の魅力だ。2021/04/01

A.T

19
現在もロシア人は身分証としての国内向けパスポートを所持してます(国外旅行向けには別のパスポートが必要)が、19世紀始めの本作の主人公はそれを失くしてしまった。旅券なしの逃避行だからひたすら裏街道をいく。大作家ドスト〜やトルス〜のようなシリアスな展開が一切なし。楽天的な主人公のドタバタ劇がかの大作家時代にも存在していた記念碑的作品。2020/05/10

qoop

5
ロシアのストーリーテラーによる豪傑一代記。破天荒ながらも信仰心の厚い主人公をはじめ、放蕩だったり強欲だったりするものの、決して憎めないロシア(と周辺の)人々が活写されている。矛盾した行動に生々しい人間像が読み取れ、著者の観察力が偲ばれる。民話的な趣きが濃厚で一種の懐かしさが感じられるのだが、その点も素朴な民衆の姿を鮮やかに見せるのに寄与しているのかも知れない。2014/09/05

刳森伸一

1
湖上で修道僧が語る自身の遍歴の物語。ロシア人だけでなく、ダッタン人や、さらに悪魔や幽霊といったものまでも登場するピカレスク・ロマン。個々のエピソードが面白く最後まで飽きない。もっと有名になってもいいくらい面白い話だ。2013/09/20

コカブ

1
ラドガ湖を渡る船の上で、語り手は修行僧に出会った。修行僧の語る自身の過去は、驚くべきものだった。ある屋敷に奉公していたが、そこを逃げ出して泥棒の一味になる。さらにダッタン人に捕らわれたり、気の良い主人にめぐり合ったりと、様々な人生を歩んでいたのだった…。各章ごとに修行僧の話が一段落していて、古典にでもありそうな形式だった。講談のようにめまぐるしく話が展開して、読んでいて楽しい。ダッタン人が登場するあたり、異文化と地続きのロシアらしさが感じられた。面白いのに、どうしてレスコーフの翻訳が少ないのだろう。2013/02/22

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