出版社内容情報
ライン河畔の貧しい音楽一家に生れた主人公ジャン・クリストフは,人間として,芸術家として,不屈の気魄をもって,生涯,真実を追求しつづける.この,傷つきつつも闘うことを決してやめない人間像は,時代と国境をこえて,人びとに勇気と指針を与えてきた.偉大なヒューマニスト作家ロマン・ローランの不朽の名作.
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
syaori
72
作者は何と歪で何と美しいものを打ち立てたことでしょう。この激しい魂の一代記を通して語られるのは生きること、自己を押し広げ革新し生きること。そして人は自身の仕事を完成せぬままに道半ばで果てるだろうということ。しかし、作者は物語を通しその空虚に見える人生という艱難が何なのかを示し、読者たちにクリストフの「身体を踏み台となして前方へ進めよ」、善も悪も全ての生は肯定されるのだ、だから自身の生を力の限り生きよ、そして彼よりも偉大で幸福であれよと力強く呼びかけ願っていて、その理想の大きさと愛とにとても圧倒されました。2022/03/02
ベイス
67
4か月かけて読了。クリストフという心の友を失ったような喪失感もある。クライマックスは個人的には友オリヴィエの死と、絶望の淵に沈む中で出会った友ブラウンの妻アンナとの運命的な接近と別れ。ここまでであった。クリストフの最後の伴侶となるグラチアは、たしかに陰ながら彼に手を差し伸べる役を果たしてはいるが印象としては弱く、そんな彼女に心酔し全面的に愛を打ち明けるクリストフの晩年の言動は、やや腑に落ちない。それでも、彼女との心の交流は胸に迫るものがあり、彼女の死を伝えられたときの彼の態度は崇高でこの上もなく美しい。2022/07/06
のっち♬
41
苦悶と残忍の無限総和の上に佇む人生、その悪徳と美徳、悲哀、高慢、努力、憂苦を著者は隠すことなく描く。生き、創造し、愛し、失いつつも「我々の体を踏み台となして、前方へ進めよ。われわれよりも、さらに偉大でさらに幸福であれよ」「俺が滅びて俺の作品が存続することだ!それが俺には一挙両得なのだ。なぜならば、もっともほんとうのものだけが、俺から残ることになるのだから。クリストフは死滅するがよい!」これぞ勝つことだ。「いかなる日もクリストフの顔を眺めよ、その日汝は悪しき死を死せざるべし」さぁ勝つために生きよう、進もう!2020/03/12
km
33
教養小説の傑作。これに感激できない人は、無意識に自分の人生を生きている天才か、ゲーテの尨犬でしょう。ロマン・ロランは、技巧においてはプルースト等に及ばないかもしれない、しかしこの作家の力は魂自体の驚くべき清冽さにこそある。その飽くことなき理想追求の姿勢にある。ジャン・クリストフを生涯の友として、彼から力を得て戦う一人となれたことを嬉しく思う。2016/12/22
U
31
感想をまとめてアップしています。「燃ゆる荊」あっての「新しき日」濃かったです。メモしたい言葉や文章が多くありました。この巻、再読するかもしれません。「予自身は、予の過去の魂に別れを告げる。空しき脱殻のごとくに、その魂を後方に脱ぎ捨てる。人生は死と復活との連続である。クリストフよ、よみがえらんがために死のうではないか」(著者による最終章「新しき日」の序)2018/08/16