岩波文庫
旅の日のモーツァルト

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  • サイズ 文庫判/ページ数 159p/高さ 15cm
  • 商品コード 9784003241912
  • NDC分類 943
  • Cコード C0197

出版社内容情報

『ドン・ジョヴァンニ』初演の旅に出たモーツァルト夫妻はある伯爵の一家と近づきになった.音楽を愛し,巨匠に賞讃と敬意を捧げる一家の人々に囲まれて,モーツァルトは幼い日の思い出,創作の插話を語る.芸術をなかだちとして心に通い合う人間の共感,精神の微妙なアンサンブルを詩人メーリケは美しい小説に結晶させた.

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

新地学@児童書病発動中

111
翻訳が読みにくいのは残念だが、モーツァルトの音楽の本質を言葉で表現することに成功した稀有の例だ。オペラ『ドン・ジョバンニ』の初演の旅に出たモーツァルト夫妻は、ふとしたことからある伯爵一家と懇意になり、幼い頃の思い出や自分の作曲の仕方について語りだす。私はモーツァルトの数少ない短調の曲が好きだ。短調の曲にはきらびやかな曲を多く作った偉大な作曲家の哀しみが、さりげなく織り込まれていると思う。メーリケのこの小説は、あの短調の曲にある天才の悲哀と生の儚さに対する諦念を、詩情豊かに描き出している。2015/08/30

松本直哉

25
ドン・ジョヴァンニ初演のためにプラハに赴く途中に作曲家夫妻が立ち寄った貴族の邸での一夜を、まあ見てきたように書いているわけだが、出来立てほやほやの曲をと促されてピアノで弾く歌劇のフィナーレ、序曲の再現のような禍々しいニ短調の和音とともに騎士団長の石像が登場する場面を弾き終えたとき、しばし誰も沈黙を破るものがない。今聴いても何か超自然の力を感じて身の毛がよだつ音楽が、単なる勧善懲悪ならばこれほどの衝撃を与えることはなかっただろう。居合わせた娘の一人がそこに作曲家自身の迫りくる死を聴きとったのも故なしとしない2023/06/28

kthyk

18
一昨日に触れた、ニュートンのプリンキアから丁度100年、モーツァルトは1787年、ドン・ジョバンニを演奏する為にプラハに旅立った。この本はメーリケが1855年に出版した、絶好調の作曲家を抒情豊かに描いた名作。ふたりの天才の時代はあるがままの自然の法則を力学的、音楽的に心置きなく表現する時代。メーリケは超人的な利己主義であるドン・ジョバンニは地獄の勢力がますます圧力を強めるなか、絶望的な戦いをやめず、あらがい、のたうちまわったすえ、一挙手一投足にも高貴さをみなぎらせながら、しかし、ついに没落すると書く。2023/11/09

Greatzebra

14
正直、何がいいのかわからない。映画アマデウスのようにモーツァルトのもっと深いところに踏み込んでいるのかと思って読み始めたが、ちっとも面白くなかった。もっと作曲に当たっての秘話みたいなものとか有れば良いのだが…。私の読みが足りないのだろう。2021/05/31

ラウリスタ~

13
モーツァルトの伝記的短編、ではなく、モーツァルトの楽しげな面に焦点を当てて、たぶんこんな一日もあっただろうな、と想像して書かれた小品。正直どこがいいのかはわからないが、ドイツ最高の芸術家小説などという評価をも得ているらしい。ただやはり普仏戦争以前の夢みる詩人的ドイツ文学って今(日本語の翻訳で)読んでも全然面白さがわからない。2016/03/08

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