出版社内容情報
日本を終生愛してやまなかったハーン(一八五〇―一九〇四)が我が国古来の文献や民間伝承に取材して創作した短編集.『怪談』は俗悪な怪奇小説の類から高く抜きんでて,人間性に対する深い洞察力につらぬかれている.有名な『耳なし芳一のはなし』『雪おんな』など十七編の他に『虫の研究』三編を収めた.
内容説明
日本を終生愛してやまなかったハーン(一八五〇‐一九〇四)が我が国古来の文献や民間伝承に取材して創作した短篇集。有名な「耳なし芳一のはなし」など、奇怪な話の中に寂しい美しさを湛えた作品は単なる怪奇小説の域をこえて、人間性に対する深い洞察に満ちている。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Roy
42
★★★★+ そういや幼稚園児の頃「ろくろ首」になりたかった。記憶を忠実に言うと当時何かの絵本で見た「ろくろっくび」になりたかったのである。絡まる位伸びた首を持て余し(ここ重要)、頬を赤らめ(酒?)愉快な顔をしている姿が羨ましかったのだと思う。しかしここに出てくる「ろくろ首」様は少し形状が違う。もげるのだ。もげるなんて、悲惨過ぎる。嘆いた。あと形あるものが「消える」ってとても美しい事だと思う。往々にして其々の末路の儚さが、線香花火を愛する日本人と重なり、そんな日本人の一人としてとても好きだった。2009/09/02
金吾
26
怖さはありませんが、文章が美しく、作者の日本に対する造詣の深さが伝わってくるように感じます。「耳なし芳一」は子供の頃に読んだときの悲しいイメージが強い作品であり久しぶりに読めて良かったです。2022/04/01
彩菜
23
幾つかの怪談の最後にハーンは蓬莱という国の絵を見せてくれた。遠い昔の霊魂でできた乳白色の大気に包まれる国。それを吸う人々は昔の魂のように見・考えるので邪悪を知らず、その魂がもたらす古き世の理想に対する憧れは人々の無私の生涯の朴直な美しさの内に顕れる…。その美しさは先の話、例えばどこか儚い芳一の琵琶や青柳の情の中にもなかったろうか。彼等が纏う一抹の寂しさはあの大気の色ではなかったか。「怪談」はハーンが創る蓬莱の国で、私はひと時そこに遊んだのかもしれぬ。私の内に今も乳白色の儚い寂しさが凝っていて、真珠のようだ2020/10/25
アーチャー
20
あまりにも有名なベーシック&オーソドックスな作品集。どの作品にも情緒があり、じっくり本を読むことの楽しさを再確認させられます。個人的には”虫の研究”の「蝶」が好きです。しかし「耳なし芳一」は痛そうだったな~。2013/05/29
春ドーナツ
18
「ろくろ首の項にはかならず朱字がある」(79頁)ホーソンの緋文字みたいなものかしら。何が刻印されていたのだろう。水木しげる先生の出番だな。意外だったのは、首が伸びる訳ではなく身体とセパレートすること。夜更けになると屋外に出て羽虫なぞをぱくつく。払暁、寝室に戻って合体。ちょっと待った! 岩国第七版を引く。「井戸のつるべを上げ下げするのに使う滑車」が転じて「自由に伸び縮みする」首になったのではなかろうか。ハーンの「首」は異種に違いない。AとB。どっちが怖いか。西洋人はAをクピドーと勘違いしたりして。2018/12/14