岩波文庫
ヴィヨンの妻・桜桃・他八篇 (改版)

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  • サイズ 文庫判/ページ数 226p/高さ 15cm
  • 商品コード 9784003109021
  • NDC分類 913.6
  • Cコード C0193

出版社内容情報

傷つきやすい心を持つがゆえに飲んだくれずにいられない詩人の動静を,妻の口を通して語る『ヴィヨンの妻』,互いの苦痛を理解しながら冗談に紛らわして辛うじて家庭を営む夫婦を描いた『桜桃』.どの作品にも,緻密な構成のなかに,笑いと道化によって生きる苦しみを表現した太宰治(一九〇九‐一九四八)の文学がある. (解説 小山 清)

内容説明

傷つきやすい心を持つがゆえに飲んだくれずにいられない詩人の動静を、何事にも拘泥せずに問題を解決してゆく妻の口を通して語る『ヴィヨンの妻』、互いの苦痛を理解しながら冗談に紛らわして辛うじて家庭を営む夫婦を描いた『桜桃』。どの作品にも、緻密な構成のなかに、笑いと道化によって生きる苦しみを表現した太宰治の文学がある。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

Willie the Wildcat

71
時流に乗れない/乗らない著者。物心両面で支える井伏氏、兄、そして家族。特に戦中・戦後の矛盾を踏まえた「新現実」への脱却の件は印象的。『ヴィヨンの妻』も同様。”人非人”も、矛盾に苦悩する主人公の救い。一方『桜桃』は、細やかな自身への反抗心の現れ。家族故の我儘。”涙の谷”が、居酒屋の桜桃と重なり自己嫌悪。素直になれない時もある。これまた家族故也。『チャンス』は、共通の心底の想い。半生を過ごすパートナーへの覚悟と決意表明ではなかろうか。”意志”、同感。2018/06/07

優希

39
太宰が戦後発表した作品から選りすぐっているからか、ほのかに影が感じられました。笑いと道化によってしか生きる苦しみを表現できなかったのが刺さります。『ヴィヨンの妻』の最後の一言にハッとさせられました。2024/03/11

太田青磁

16
大いなる愛で主人公を包むヴィヨンの妻。自堕落な主人公を行きつけの店で待つというアイディアに脱帽です、一緒に帰るシーンは素敵ですね。父親失格を自覚している主人公が、逃げるように酒場に行き、対して好きでもない桜桃を子どものことを考えながら投げやりに食べるシーンも印象的です。「トカトントン」聞こえる人には聞こえるんだろうなあ。相談相手の作家のコメントが「気取った苦悩ですね」という刺さる一言。気取ってたっていいじゃないかとも感じる自分も気取ってるのかもしれません。2012/12/22

ひよピパパ

13
太宰の短編十編を収める。個人的には「日の出前」「ヴィヨンの妻」が印象的。どの作品も一読ではスッと自分の中にはなかなか入ってこないが、何度も読むうちにじわじわっとその味わい深さが出てくるー。そんな印象だ。「十五年間」は、太宰の自伝的小説になっているが、その中で「短編小説」に対する熱い思いが述べられており、興味深かった。巻末の解説が一つ一つの作品について丁寧に説明されており参考になる。2019/02/03

くまこ

13
岸田今日子さんの朗読で『ヴィヨンの妻』を聴き読み。26歳という設定の主人公は、岸田さんの演技だともっと若く可愛い感じに聞こえ、セクシーで小悪魔的な印象を強く受ける。夫・大谷の台詞のところは、やさぐれたムーミンという雰囲気が感じられて、とても可笑しかった。太宰治とムーミンが繋がってしまい、しばらく消えそうにない。それにしても岸田さんの演技力には、ただただ驚嘆するばかり。あの少し鼻にかかったお声がとても魅力的で、岸田さんの朗読で『女生徒』や『斜陽』を聴けたらどんなに素敵だったろうかと、溜め息をついた。2013/06/15

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