出版社内容情報
あるいは作者身辺の塵労に沈淪して幽玄暗鬱を極め,あるいは支那美女を画いて豊婉の中に一味の哀感を漂わしむるもの,収め得て7篇.いずれもこの才高き一代の詩人が肺腑を流れ出でし珠玉の文字に外ならぬ.
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
双海(ふたみ)
19
短編集です。「お絹とその兄弟」がよかった。大正8年9月の作だそうです。奉公に出されるんですよ、おきん(お絹)が。奉公先の娘にいじめられてね、ああ可哀そうに。泣きたくなる。2015/08/23
さゆき
7
著者の自選作品集。『侘しすぎる』が読んだ当時の心境に驚くほどマッチしていて、心の友を見つけたような気持ちになった。人は孤独になると大して親しくない人との別れもいちいち惜しくなるし、ただすれ違っただけの人にさえ縁を感じてしまうもの。通り沿いの窓からのぞく、自分が一切介入できない生活にすら嫉妬してしまう孤独な感覚が痛いほどリアルだ。春夫の描く孤独はしんとした独りぼっちの孤独ではなく、自分かわいさや傲慢さが見え隠れする、拗ねたような孤独だと思う。そういうところがまた自分の共感するところでもあるのだけど。2019/12/20
anxi
0
借り物2016/06/18
なおぱんだ
0
明治時代末期から詩や短歌を発表し、大正時代からは小説をはじめ、評論、随筆、翻訳等、幅広い文筆活動を行った作家による短編小説集です。私にはあまりなじみのない作家でしたが、この作品集には、物語の広さや深さに加えて文章のうまさが光る短篇ばかりが収められています。表題作を含む7編の短編は、短いながらも最後まで文章の重みを感じさせてくれます。2020/08/27
コノヒト
0
『厭世家の誕生日』読み出してすぐ楽しくて、私は金のことをウダウダ言う小説が好きなのか、と気付かされた。『侘しすぎる』は例の谷崎とのことですね。2020/11/06