岩波文庫<br> 末枯/続末枯/露芝

岩波文庫
末枯/続末枯/露芝

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  • サイズ 文庫判/ページ数 186p/高さ 16cm
  • 商品コード 9784003106525
  • NDC分類 913.6
  • Cコード C0193

出版社内容情報

昔「旦那」と呼ばれた人が時の流れとともに落魄してゆく哀れさを,周囲の芸人たちの目を通して描いた「末枯」「続末枯」.浅草の商家の「奥」を舞台に少女のはかない恋を描いた「露芝」.作者がこよなく愛した東京下町のいわゆる市井人の立ち居ふるまいや会話を高度な文脈で書き止めたこれらの作品は,後世への貴重な文献となるであろう.

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

新地学@児童書病発動中

89
何気なく読み始めった本だったが、非常に気に入った。『末枯・続末枯』は噺家の世界を描く小説。東京の下町の空気を伝えるしっとりとした文章が魅力。俳句で生かされている鋭い感性が小説の中でも発揮されている。 『芝露』の方は商家に勤める少女の片思いを描く小説。さりげない季節の描写が美しい。悲しい結末はいつまでも印象に残ると思う。2014/06/18

shinano

9
大正期庶民生活での情と義理や柵を衒わない文章で綴り肩が凝らない。庶民文化世界からの「末枯」「続末枯」は、目を患い光を失いながらも噺家で生き続け老いていくほどに義理を失わずにいようとする者、身代を使い果たし強情な気質の和らげをやっと知って再出発を始めたときに愛人を失う者。大棚商家の若い男女奉公人たちの世界「露芝」は、好きな人が病いの為に国元へ帰るときのほろ苦い涙、恋敵であり友人でもある人への詮索と同情など、若い時に一人前の人間となるために味わう酸っぱい甘い苦いの感情を思い出します2010/06/22

しんこい

7
お金に執着しないというか、粋を重んじるというかそんな老舗の旦那の話と、義理や芸に執着する落語家の芸談が入り混じって、良い感じです。今や失われた情緒ですね。2014/12/12

桜もち 太郎

2
大正時代に書かれた味わい深い「末枯」「続末枯」「露芝」の三作品。「末枯」「続末枯」は芸人とその取り巻きの物語。特にP85の盲目の芸人が行う高座の姿を語る所は圧巻。お客が高座に魂を惹きつけられる、夕立の音に講釈が持っていかれる。自然と芸人のまわりに客がたまりだす・・・。「男はつらいよ」の「寅次郎相合い傘」に出てくる渥美清の長台詞を彷彿とさせる。「露芝」は最高。何が最高ってとにかく味わい深い。一人の男を思う女心の侘しさが愛おしかった。読みやすい作品だった。2015/09/07

なおぱんだ

1
明治時代末期から昭和にかけて活躍した俳人であり、劇団の演出を手掛けるとともに小説も書いた文芸人である著者の作品集です。いずれも小粋な会話が小気味よく、下町の人情を絡めた悲哀を感じさせる展開が染み入ります。べらんめえ調の江戸っ子の言葉使いが、うまく人の心の奥底に潜む人情を引き出してきて、胸の奥に響かせる結末で結ばれるところは、見事としか言いようがありません。あまりなじみのない作家でしたが、何度も読み返したくなるようなとても素晴らしい作品集でした。2020/08/02

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