出版社内容情報
寺田寅彦(一八七八―一九三五)の随筆は芸術感覚と科学精神との希有な結合から生まれ,それらがみごとな調和をたもっている.しかも主題が人生であれ自然であれ,その語りくちからはいつも温い人間味が伝わって来る.二十代から最晩年の五十代後半まで書きつがれた数多の随筆から珠玉の百十余篇を選んでこれを五巻に編んだ.
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
KAZOO
21
随筆集の最後の巻に来ました。今ちょうど日経新聞の日曜日に梯久美子さんが寺田寅彦の妻たちの話を連載されています。これらの随筆には自分の身内などの話はあまり出てきません。昭和9~10年に発表されたものが中心となっています。本当に幅広い趣味の持ち主だったのですね。最後は俳句の精神で締めくくられています。この5つの随筆集と柿の種は何度も読み返すことになると思います。2014/09/08
OZAC
9
以前ある雑誌で寺田氏の「地図をながめて」が紹介されていて、地形図の測量のことなど非常に詳しくかつ読みやすく書かれていたのを覚えている。今回改めて彼の随筆を読んでみて、その文章に格調の高さというか品格のようなものを感じた。さすが夏目漱石のお弟子さんだなと得心。2017/10/26
ge_ha
7
この最終巻も楽しんで読めました。自然大好き俳句大好きな科学者の眼から見たあれやこれや。面白い!ただ最後の方の随筆では、日本の自然や俳句が好きすぎて、他国を蔑視してるような空気を感じた。僕の詮索のしすぎかな?書かれた時代がらしょうがない部分もあるのかな?2013/03/08
ダージリン
5
足かけ4年を超えたが、やっとこの随筆集を全巻読み通すことが出来た。この巻は天災についての随筆が多いが、震災続きの時代にあって重く心に響くものがある。全篇を通じ、文章の俳味が何とも魅力的で、侘び寂びが漂い、変な膠着性が皆無な文体に惹かれてしまう。俳句がこの人の感性を形作ったのだろうか。この人の文章を読んでいると自分も俳句をつくってみたくなる。2016/05/04
うろたんし
3
ついに、読み終えてしまった。長い旅だった。めくるめくめぐる季節のように、これら五冊の随筆集をひとりひもときながら、これからの日常のページをめくっていきたい。2013/07/21