内容説明
1980年代に海外進出を果たしたバンド「ダンチュラ・デオ」は実在したのか? 原曲を丸パクりして証明すると嘯くギタリストの喜三郎に惹かれる僕。慶大生バンドの戯れは、やがて歴史的陰謀の情報戦へと巻き込まれてゆく。フェイクがオリジナルを炙り出し、真実がウィキペディア的に編集される時代の狂騒と不気味を描く。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
こーた
179
噓から出たまことを、まことしやかに、もの騙る。架空のロックバンド「ダンチュラ・デオ」のコピーをはじめた「僕」たちは、オリジナルを捏造するつもりが、気づけば本物の物語に飲み込まれている。wikipediaの記事を装って進むアイデアはおもしろい。だがその文章や構成はあまりに粗く、勢いは急速に萎んでいく。これならもういっそのこと本でさえなくて、横書きのだらだらとスクロールできるWEBページなどに書いてもよかったのでは。小説という枠を壊そうとして抜け出せず、けっきょく元の型にはまってしまっているのが、惜しい。2019/02/11
starbro
153
第160回芥川賞受賞作・候補作シリーズ第四弾(4/6)です。鴻池 留衣、初読です。本書は、慶應妄想変態フェイクバンド小説でした。著者は島田雅彦に近い匂いがします。島田雅彦のように何度もノミネートされますが、受賞に到らないかも知れません。ダンチュラ・デオのライブを観てみたい♪続いて、候補作「居た場所」へ。 2019/03/25
アマニョッキ
55
まず表紙がよい。なるほど、ダンチュラ・デオのアルバムタイトルが「ジャップ・ン・ロール・ヒーロー」なのね。そう考えると本当虚構のなかに虚構が…もう入れ子状態でなにがなんだかわからなくなってくる。でもきっとそれが鴻池さんの狙っているところかなと。ポストトゥルース上等なところとか、手放しにwiki信じちゃう(そして語っちゃったりする!)ところとか本当うんうん頷いちゃう。世間に風穴を…空くかな?でもやるんだよ!2019/03/23
ミライ
40
160回芥川賞候補作品。wikipediaをベースにして物語が構成される異色の内容。1980年代に海外進出した日本のバンド「ダンチュラ・デオ」を現代のバンドが丸コピで再現する、しかしオリジナルの方の「ダンチュラ・デオ」にはとんでもない秘密があり、中盤から虚構か現実かわからない急展開に(というか超展開)! 伊坂幸太郎的なエンタメ性もあり、非常に楽しめた。面白すぎて、著者である鴻池留衣氏の他作品「ナイス・エイジ」も買ってしまった。2019/02/03
あじ
37
虚言癖のある喜三郎が『ダンチュラ・デオ』という、実在するかも怪しいバンドのリスペクトに傾倒していく。「だよなー」「そうだったろう」見たことも聞いたこともない“ダンデオ”を語る人々が湧いて、Wikipediaが更新される。あくまで喜三郎が語るダンデオが【公式設定】だが、虚構が膨れ転がり出すと手に負えない局面へと物語はハンドルを切る。本作は芥川賞候補作に挙がったが、それとは一線を画す組織で形成された小説に思えた。生検に回しておくとしよう。★判定持ち越し2019/02/18