内容説明
本書は、ニクソン政権からオバマ政権にいたるまで、米国の対中政策の中心的な立場にいた著者が、自分も今まで中国の巧みな情報戦略に騙されつづけてきたと認めたうえで、中国の知られざる秘密戦略「100年マラソン(The Hundred-Year Marathon)」の全貌を描いたものだ。日本に関する言及も随所にあり、これからの数十年先の世界情勢、日中関係、そしてビジネスや日常生活を見通すうえで、職種や年齢を問わず興味をそそる内容となっている。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
5 よういち
94
米国のニクソンからオバマにいたる政権で、対中国防衛政策を担当した著者が語る中国の脅威◆これまで中国という国は羊の皮を被り続け、水面下で爪を研いでいた。米国との共存となれば日本は中国圏に組み込まれる可能性は充分にある。無関心ではいられない。◆かつて米国は中国に対して「脆弱な中国を助ければ、やがて民主的で平和的な大国になる」という希望的観測を持っていた。しかし、中国という国は共産党革命100年に当たる2049年までに世界一を奪取するという目論見があった。近年中国関係者はこのことを憚ることなく口に出し始めた。2019/10/27
Miyoshi Hirotaka
44
中国という呼称が定着したのは戦後。それまでは支那と呼ぶのが普通。略称が台湾と中共が同じなのがややこしい。支那は征服王朝が入れ替わり、政治システムの一貫性はない。一方、半植民地時代からの劣勢を挽回し、世界の頂点を目指す「百年マラソン」が進行中。わが国を戦争に引き込んだのも、ソ連の前で弱いふりをしたのも、朝鮮を戦わせたのも全てが策略。人権、民主主義、環境などの価値観を受け入れる気はなく、努力する素振りは時間稼ぎが目的。国家戦略は支那人の歴史的な知恵の産物。孫子の兵法や戦国策から導かれる思想が基になっている。2017/08/02
Tui
39
ごめんなさい、私かつて対中政策を担当していた者ですが、あの国を甘く見てました。このままだとアメリカが負ける流れです。もう手遅れかもしれませんが、軌道修正するために不可欠なことをお伝えします、懺悔します。という博士による本。中国はアメリカに強い警戒と敵意を持ち、100年マラソンという名のもと2049年に経済的にも軍事的にも世界の覇権を握ることを目指す国、として報告されています。その内容は今の中国の対外政策と極めて合致しており、あまりの現実味に読んでいて空恐ろしくなる。さて日本は…呑気だとしか言いようがない。2016/08/09
ばたやん@かみがた
36
中国問題の最高権威と言われるピルズベリー氏が書いた故にその内容が意味を持つ。私には、1950年代から中国の野望にソ連が気付き米国に警告を発していたこと、NATO軍によるベオグラード爆撃の際の中国大使館の誤爆について米国の意図ありと最後まで中国側は信じていたこと等が衝撃的だった。全体通して浮かび上がってくるのは、米欧日を信じず、それらの国々が苦心を重ねて作り上げた国際慣行・技術を利益の有るときは利用するか、無視するかして、いつか先進国の寝首を掻こうと富国強兵に邁進する「異形」の大国の醜悪な姿である。(続2019/01/08
Willie the Wildcat
32
中国共産党革命100周年の2049年での覇権!?政治・経済・軍事のみならず価値観への影響力行使。基本的人権や自由、あるいは環境問題への脅威。AIIBなど、国際機関の秩序見直しの兆候が個人的には気になる。著者の多彩な調査結果からの論理展開は理論的。一方、『資治通鑑』や『兵法三十六計』の視点は興味深いが、至極当然のアプローチとも言える。但し、伝統的思想を踏まえた戦略立案・実施は有用。中国の切り崩しに負けない同盟諸国とのこれまで以上の密な連携の維持が生命線。それにしても古書・格言に改めて感じる中国の歴史の重み。2016/04/11