内容説明
旧主信長が夢見た天下統一を秀吉はついに成し遂げる。だがその心には、老いて得た嫡子・鶴松の行く末への不安、いかな栄達もこの世かぎりという哀感が漂っていた。家中に石田三成ら武家官僚と他の武将たちとの軋轢が生じるなか、秀吉は自らを鼓舞し、明国討伐に着手する。豊臣家瓦解の源泉となった唐攻めを、苛烈にして臨場感豊かに描く第四巻。
感想・レビュー
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姉勤
16
伊達政宗への寛大な処置など東北経営を確立した秀吉は、信長から引き継いだ夢というべき、明征服へ乗り出す。鉄砲の質と量、百年に渡る戦国を生き抜いた兵法が、怠惰と盲従によってもたらされた「平和」な朝鮮半島を蹂躙する。快進撃と云う錯覚は、諸処の判断を誤らせ、現代の官僚と言うべき三成らと前線の小西、黒田、加藤清正などの前線の部将との齟齬と確執を生み、兵站の破綻は明軍とゲリラに苦戦を強いられる。千利休への賜死、後継を嘱望した実子と母との死別は、老いと云う「毒」とともに、聡明と智で天下人となった秀吉の精神を蝕んでいく。2014/10/10