内容説明
上司の不始末の責めを負って同心の職を辞し、きっぱりと刀を捨てた喜八郎は、長屋住まいの庶民相手に鍋釜や小銭を貸す<損料屋>に身をやつした。といってもただの損料屋ではない。与力の秋山や深川のいなせな仲間たちと力を合わせ、巨利を貪る礼差たちと渡り合う。田沼バブルのはじけた江戸で繰り広げられる、息詰まる頭脳戦。時代小説に新風を吹き込んだ、直木賞作家・山本一力の輝かしいデビュー作。人情味と後味の爽快さは一作目から群を抜いてます。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
やま
122
損料屋喜八郎始末控え1作目 2006.05発行。大活字本。喜八郎は、恩義の有る先代米屋政八の頼みで、2代目を守るために奮闘する物語です。浪人の子として生まれた喜八郎は、かつて大畑姓を名乗り北町奉行所の祐筆として一代限りの末席同心であったが、奉行甲斐守用人・芝田克行が行った米の先物取引で二千両を超える損失を一身にがぶる事件が起きた。その事件は、喜八郎御役不始末を咎めて蓋をしました。北町奉行所四番組上席与力・秋山久蔵も、喜八郎も先代米屋政八に金で返しきれない借りがあります。そして恩義を感じています。🌿続く→2020/12/10
とし
104
損料屋喜八郎始末控え1巻。損料屋野喜八郎さん、庶民相手に夏の蚊帳、冬の炬燵、鍋、釜、布団を賃貸するのが生業、現代のレンタルショップと思ったが、与力や深川の仲間と札差の陰謀を阻止し始末する筋書きかな。様々な事・物・人の描写が細かく書かれているが、すらすらと読むことができ良かった。 2014/11/01
オリックスバファローズ
70
一番の敵役とも言えそうな伊勢屋四朗左衛門も、単純な悪人ではなく、同情すべき部分もある人物として描かれていて、そうした人物像のあたたかみも、心地よい読後感をもたらしていて、色々な意味で“痛快”な作品でした2018/07/31
Atsushi
56
旗本・御家人救済のため札差に債権放棄をさせた「棄捐令」。その後の貸し渋りによる景気低迷はバブル崩壊後の日本経済と見事に重なった。江戸の情緒と当時の人々の粋が心に沁みる一冊。シリーズ化もされているようだ。続編も読んでみたい。2018/08/10
tengen
46
損料屋という年寄り向け商売の喜八郎。その実は米屋二代目を支える傍ら、元上司の与力・秋山を手助け札差社会にはびこる悪に立ち向かうやり手の元同心であった。☆彡さて伊勢屋の良心と野心は。棄捐令の影響はまだまだ続くのか。江戸屋の女将・秀弥との関係は深まるのか。今後の展開が気になります。☆万両駕籠/騙り御前/いわし祝言/吹かずとも2017/03/07