内容説明
持病の発作に恟々としながらも、医者の目を盗んでは麦酒をがぶがぶ。養生のためといっては、何も食べずにひたすら眠る。動悸、不整脈、喘息、蕁麻疹…。ご存知百間先生が、己の病、身体、健康について飄々と綴った随筆を集成したアンソロジー。
目次
一病息災
夜船
養生訓
寿命
億劫帳
沙書帳(抄)
巡査と喘息
病閑録
病歴
黒リボン
目
歯
早春の結滞
八十八夜は曇り
輪舞する病魔
禿げか白髪か
病牀通信
著者等紹介
内田百〓[ウチダヒャッケン]
明治22年(1889)、岡山市に生まれる。六高を経て、大正3年、東京帝大独文科を卒業。この間、漱石の知遇を受け、門下の龍之介、草平らを識る。以後、陸軍士官学校、海軍機関学校、法政大学などで教鞭をとる。昭和46年4月、八十二歳で没
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感想・レビュー
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いつでも母さん
82
『一つくらい病を持っていると、かえって気を付けるので長生きすること』らしいが、百聞先生は一つ位の病では無い!だが、82才で亡くなったと云う。それも老衰で。お見事です。未熟な私は恥ずかしながら存じ上げなかった方ではあるのだが(ほ~んと、読メに感謝なり)言葉や、かなづかいに多少時間はかかるも面白く、いやビックリして読了した次第。このような家族がいるとさぞや家人は大変だっただろうな・・(汗)吉行淳之介さんもあちらの世界で、ようよう百聞先生と楽しく語られているのだろう・・なんてほっこり思って、ページを閉じた。2016/02/05
キジネコ
42
百閒先生には病気があった。この本に云う一病とは心臓神経症という病気だそうです。病気持ちの私が日々を照らす道標を求めたわけではなく、ゆったりした語り口に浸ることに慰安を求めて読了。医師に全幅の信頼を寄せる我儘な患者がおりました。酒も飲むし感情の赴くままに自堕落を決め込み塩梅に窮すれば主治医に安堵の確約を求める。検査の結果に関心を示さず治療の要諦を満たす医師の工夫の為の行為なので患者は預かり知らぬ、と割り切る先生。死との距離を飄々と測り乍ら82で没した文筆家の能天気を改めて見習いたいものだと思う読書でした。2022/12/21
阪口まな
7
内田百閒が麦酒などなど飲みながら病に悩み死に怯える随筆集。申し訳ないが大変おもしろい。内田先生は82歳で冥土へ旅立たれた。こうした人ほど大往生なのやもしれない。。我が曾祖母は実に半世紀ほど「自分はもう長くない」と言い続けたものだ。2020/02/16
こかち
7
久しぶりに百間せんせい読んだけど、まったりとろーり、偏屈そうなのにユーモア満載で、とにかく大好きです。酔っぱらって転んだり、妄想で現実逃避したり、可愛いおじいちゃんだなぁ。日本酒呑みたくなる。2019/07/21
桜もち 太郎
6
「福の神が家のまはりを取り巻きて貧乏神の出どころもなし」と落語の歌を引きながら、「病魔が家のまわりを取り巻き・・・長寿の神は出どころもなし」と自身の病気を揶揄するところが面白い。貧乏の話では、皇族の披露宴に招待される立場でありながら、着ていく服がなくサイズの合わないものを友人から借りるところも百閒らしい。巻末の吉行淳之介の「百閒の喘息」は面白かった。2015/01/24