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「日本の受容」というテーマは、むずかしい。少なくとも、三つの問題がある。
まず、「受容」という場合、受容者を特定しなければならない。誰が受け入れているのかという問題だ。ここでは、英語で執筆された本に限定し、筆者の日本以外での生活体験が、日本での期間より長いという条件を付けた。英語が世界の共通語であるという現実と共に、私自身が日本語と英語以外の言語に精通していないからだ。また、英語で本を出版した人の中には、日本育ちで日本在住の人たちがたくさんいるが、彼らの出版物を「日本の受容」の尺度にするのには、無理があるだろう。
もうひとつには、「日本」とか「日本人」とかの輪郭が明確でなくなってきているという問題がある。「日本とはどこのことか」「日本人とは誰のことか」といったテーマについて、論争がある。その決着がついていない。そのことを意識しながらも、とりあえず
Japan とか Japanese とかの語がタイトルの中に含まれている本に限ることにした。この基準は妥協にすぎない。
さらに、本の選択に当たって、私の日常のレーダーに現れてきた著書という限定がつく。このため、私が慣れ親しんでいる社会学や人類学の本が多いという偏りが出た。私自身の主観から見て、優れた仕事と思われるものが中心である。しかも、なるべく「今」に近い業績を伝えたいと思い、過去10年間、つまり1995年以降に発行された図書だけを取り上げた。
こうした基準は、より広いジャンルを考えると、明らかに欠落部分を生む。あらゆる選択は、最終的には個人の好みに依拠する。ご勘弁願いたい。
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『Companion
to the Anthropology of Japan (Blackwell Companions to Social and Cultural
Anthropology)』
Robertson, Jennifer Ellen/ Robertson, Jennifer Ellen (EDT) Blackwell Pub(Published
2005-07) ISBN:0631229558
「日本に関する人類学」の集大成。日本の社会や文化に取り組む気鋭の人類学者たちが共同執筆した。30章にわたって、「人類学のいま」を提示する。人類学の植民地主義的・国家主義的過去の分析から始まり、エスニシティー、ジェンダー、階級、自然観、都市と農村、幼稚園や学校教育、スポーツと余暇、大衆文化、食文化、宗教、生命倫理など、多角的に解析し、全体として日本の多様性を掘り下げ、百科辞典的な役割をも果たしている。
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『The
Modern History of Japan : From Tokugawa Times to the Present』
Gordon,
Andrew Oxford Univ Pr(Published 2003-02) ISBN:0195110617
徳川時代から現在までの200年の歴史を、明晰な筆致で描いた。数ある概説書の中でも群を抜いている。外圧と社会内部の諸勢力の交錯を背景に、日本の近代を地政学的・巨視的に分析する一方で、工場現場、家庭、農村や都市、大衆娯楽など庶民生活に焦点を当て続け、世界現代史の一変種であるという視点を失わない。
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『歴史としての戦後日本<上><下>』
アンドルー・ゴードン【編】、中村政則【監訳】 みすず書房(2001-12-20出版(上)、2001-12-20出版(下)) ISBN:4622036797(上)、4622036800(下)
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『A
sociology of Work in Japan』
Mouer, Ross/ Hirosuke, Kawanishi/ Mouer,
Ross E./ Kawanishi, Hirosuke Cambridge Univ Pr(Published 2005-05) ISBN:0521658454
日本の勤労者の生活を、日本社会全体の流れの中で検討し、労働問題の各分野を総合的にとらえる。労働市場、社会政策、グローバリゼーションなどが引き起こす変化に目を据えつつ、雇用、勤労意欲、労働時間、社会保障、転職、労使関係などを、多角的に分析した。今日の日本の労働についての決定版。
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『日本の労働社会学』
河西宏祐【著】 早稲田大学出版部(2003-01-20出版) ISBN:4657031015 |
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『Colonizing
Sex : Sexology and Social Control in Modern Japan (Colonialisms, 4)』
Fruhstuck, Sabine Univ of California Pr(Published 2003-10) ISBN:0520235487
性科学や性に関する知識が、社会管理や海外進出の道具として、明治以来、どのように日本のエリートによって利用されてきたかを詳説する。性教育、出産、産児制限、性病、優生、公衆衛生などの分野で、科学の名の下に、人々の行動を一定の方向へ向けることで、日本帝国の拡張が図られた姿を描写するユニークな業績。
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『Contemporary
Japan and Popular Culture (Consumasian S.) -- paperback』
Treat, John
Whittier/ Skov, Lise Taylor & Francis Ltd(Published 1996-09) ISBN:0700703284
日本の大衆文化についての本は増え続けているが、この本は広告、音楽、映画、テレビ、小説などの分野を主題に、人種論、イデオロギー論、ポストモダニズムなどの理論取り組み、ジャパニーズ・スタディーズをカルチュラル・スタディーズへ連結させた草分けの書である。
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『Embracing
Defeat : Japan in the Wake of World War II』
Dower, John W. W W
Norton & Co Inc(Published 2000-08) ISBN:0393320278
第二次世界大戦の敗戦直後、廃墟から立ち上がった日本の各層が、昨日までの敵の占領支配を「抱きしめた」のはなぜか。人々が絶望を超えて、民主化革命と戦後復興に突入していく歴史の決定的瞬間を、生き生きと精密に描き、ピューリッツァー賞を受賞した巨大作。直ちに日本語に翻訳され、日本にも多くの読者を持つ。
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『敗北を抱きしめて ― 第二次大戦後の日本人 増補版<上><下>』
ジョン・W・ダワー【著】、三浦陽一・高杉忠明【訳】 岩波書店(2004-01-30出版(上)、2004-01-30出版(下)) ISBN:4000244205(上)、4000244213(下)
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『Environmental
Politics in Japan : Networks of Power and Protest』
Broadbent, Jeffrey
Cambridge Univ Pr(Published 1999-08) ISBN:0521665744
大分県を定点観測地として、経済成長促進派に対抗する環境保護運動の展開を綿密に描く。その対立が国家機構と交錯しつつ、環境政策の形成に突き進んでいく状況を、巨視的データや社会運動の理論を駆使して、立体的に解析する。多様な方法論の組み合わせながら、産業社会の持つジレンマに迫る力作である。
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『Feminism
in Modern Japan : Citizenship, Embodiment, and Sexuality (Contemporary
Japanese Society)』
MacKie, Vera C. Cambridge Univ Pr(Published 2003-04)
ISBN:0521527198
日本のフェミニスト思想と女性運動の歴史を19世紀後半から現在に至るまで跡づける。日本の女性の手で書かれたテキストを豊富に織り交ぜながら、今日のジェンダー論争に至る道筋を、歴史の文脈の中で考えるための出発点を提供する。
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『Gambling
with Virtue : Japanese Women and the Search for Self in a Changing
Nation』
Rosenberger, Nancy Ross Univ of Hawaii Pr(Published 2001-03) ISBN:0824823885
個人の生活意識を通して、1970年代から90年代までの女性の変遷をとらえた好著。日本人の自己意識に関する研究の系譜に属するが、主婦、勤労女性、一家を支える独立した女性、介護に献身する女性、若い独身女性などのさまざまな「自己」のあり方が、多角的に検証されている。
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『Gender
and Human Rights Politics in Japan : Global Norms and Domestic Networks』
Chan-Tiberghien, Jennifer Stanford Univ Pr(Published 2004-08) ISBN:080475022X
日本のNGOが1990年代以来、グローバルな規範を日本に持ち込み、女性や子供の人権のあり方を根本的に変化させ、国家機構も対応を余儀なくされてきている状況を精緻に分析した。ピル、セクハラ、慰安婦、ドメスティック・バイオレンス、子供の買春の5つの争点を軸に、NGOが日本社会にもたらした衝撃を明晰に描く。国境を越えるフェミニズムのつながりが、地球規模での市民社会の発展に寄与する道を示唆する力作である。
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『Japan
: Who Governs? : the Rise of the Developmental State』
Johnson, Chalmers
W W Norton & Co Inc(Published 1995-03) ISBN:0393037398
1980年代の初頭、MITI
and the Japanese Miracle を世に問い、日本の経済発展を「開発国家モデル」で説明し、世界に衝撃を与えた著者が、さらにこのモデルで日本の富と権力の基礎を説明する。官僚の持つ巨大な支配力の構造を、切れのよい分析で説明し、経済・政治・国際関係の形を浮き彫りにした。
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『Japan's
Minorities : Illusion of Homogeneity (Sheffield Centre for Japanese
Studies/routledge Series)』
Weiner, Michael (EDT) Routledge(Published 1997-02)
ISBN:0415152186
「日本人」が純血民族であるという神話を、歴史と現状を俯瞰しつつ、論破した総括書。それぞれの専門家が、部落、在日、アイヌ、日系、沖縄の人々などの問題を取り上げ、日本はマイノリティの存在しない単一文化の社会であるという虚構を脱構築する。個々の集団の立場を熟考するだけではなく、この分野の全体像を示そうとする定番。
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『Learning
to Be Adolescent : Growing Up in U.S. and Japanese Middle Schools』
Letendre, Gerald K./ Rohlen, Thomas P. (FRW) Yale Univ Pr(Published 2000-10)
ISBN:0300084382
日米の中学生の育ち方を、学校現場で観察しつつ、その類似性と相違点をあぶり出した。そもそも「アドレセンス」という概念そのものが英語圏の土壌で構築されたものであることから始まり、思春期の子供たちが自制と反抗、創造性や勉強の目的といった問題をどう考えているか、教員はどのような態度で生徒と向き合うかなどを、比較考察する。きめ細かいフィールドワークの成果。
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『Men
of Uncertainty : The Social Organization of Day Laborers in Contemporary
Japan (Suny Series in Japan in Transition)』
Gill, Tom State Univ of
New York Pr(Published 2001-02) ISBN:0791448282
海外ではほとんど知られることがなかった日本の日雇い労働者の日々を、寄せ場やどや街の現実から照らし出した研究書。核家族や会社社会とは縁なく暮らす人々の集団文化が、巨大都市の只中に存在する様を描ききることによって、紋切り型の日本社会論への挑戦を示唆する。
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『Molding
Japanese Minds : The State in Everyday Life』
Garon, Sheldon Princeton
Univ Pr(Published 1998-11) ISBN:069100191X
近代日本国家が、市民の品行や道義の世界をどのように管理してきたかを検討しつつ、過去一世紀以上の軌跡をたどる。国家管理の受け手となる集団や個人が、国家と協力していく複雑な関係を解き明かし、国家機構と対峙する市民社会という単純な図式を打ち破る秀作。
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『Practically
Religious : Worldly Benefits and the Common Religion of Japan』
Reader,
Ian/ Tanabe, George Joji Univ of Hawaii Pr(Published 1998-11) ISBN:0824820908
日本の宗教研究で知られる二人が共同で仕上げた最新作。「現世御利益」を中心とする庶民宗教の力学分析を通して、日本社会の岩盤に迫る。実際的な利益を求める人々の願望を満たすために、どのような仕組みが作られてきたかを、お守り、絵馬、地蔵、年中行事、縁起物などから、「御利益」のある場所のガイドブックまで、徹底検証。
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『Re-Inventing
Japan : Time, Space, Nation (Japan in the Modern World)』
Morris-Suzuki,
Tessa M E Sharpe Inc(Published 1998-03) ISBN:076560082X
日本の論壇でも広く活躍中の筆者が、自然、文化、文明、人種、民族、女らしさ、家族、国民、市民、国際化など、さまざまな概念が人々を国民国家の枠内に閉じこめるために使われてきた過程を、日本の近現代史の中で検証する。カルチュラル・スタディーズの流れをくみながら、明快な文章が印象的な逸品。
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『Regime
Shift : Comparative Dynamics of the Japanese Political Economy (Cornell
Studies in Political Economy)』
Pempel, T. J. Cornell Univ Pr(Published
1998-11) ISBN:0801485290
バブル経済の崩壊と選挙制度の変換と共に、1990年代の初頭から日本の政治経済体制は急激な変容をとげた。この変動が1960年代から始まった高度成長経済の成功に根を持つことを示しつつ、日本の政治経済システムが不安定な新しい局面に入ったことを説得的に解明する。官僚主導の「開発国家」モデルが説明力を失ったことを論証する抜群の書。
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『Social
Theory and Japanese Experience : The Dual Civilization (Japanese Studies)』
Arnason, Johann P. Kegan Paul Intl(Published 1997-05) ISBN:0710304854
ヨーロッパの社会理論を究めた筆者が、日本語以外で書かれた日本関係書を読破して、古代から現代に至る進展を総括する野心作。文明論的視座からの取り組みで、日本の「近代」をヨーロッパと比較しつつ、日本による「資本主義の再発明」までを解き明かす試み。
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『Strangers
in the Ethnic Homeland : Japanese Brazilian Return Migration in Transnational
Perspective』
Tsuda, Takeyuki Columbia Univ Pr(Published 2003-05)
ISBN:0231128398
日本に在住するブラジル系日系人コミュニティが、受け入れ側の同化主義的圧力に対して、移民ナショナリズムを強めていく過程を、日本とブラジルの両方のフィールドワークを通して分析する。国際的移民研究の理論分野にも貢献する優れた研究書である。
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『The
State of Civil Society in Japan』
Schwartz, Frank J. (EDT) Cambridge
Univ Pr(Published 2003-11) ISBN:0521534623
市民社会論のひとつの頂点を示す共同研究。国家と対抗したり協力したりしながら、新しい領域を切り開いていく市民社会の状況が15章にわたって論議される。消費者運動、農協、労組、宗教団体、メディア、NGOなどの諸領域の実証研究と共に、比較研究の視点がちりばめられていて、民主主義に関する一般理論にも一石を投じる。
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『Manga
: Sixty Years of Japanese Comics』
Gravett, Paul Laurence King
Pub(Published 2004-08) ISBN:1856693910
マンガ60年史である。スシ、カラオケなどと共に、世界的に受容されつつある日本の大衆文化の重要ジャンルを、手塚治虫から現在に至るまで、多面的に描写。海外の若者文化の一角を形成しているマンガ文化の源流と現在の姿を、多くの原画を示しながら、外国の読者から見た魅力を余すところなく提示する。
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