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十 六

東 浩 紀

ゼ ロ 年 代 の 批 評 の 地 平
―― ポ ス ト モ ダ ン の 世 界 に 生 き る


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マルクス主義は終わった。ゼロ年代の批評家達は、面白いものを自分で探せ!
 マルクス主義は終わった、とかいう言葉にまだ敏感に反応するひとがいるかもしれませんが、とりあえず常識的にはマルクス主義は冷戦とともに終わったわけです。そしてそれは、グランドセオリーがなくなったことを意味します。したがって教養の体系とか道筋がなくなった。これはよく言われます。しかし、道筋なんかは自分で探せば良いわけで、そのための道具はインターネットとかいろいろある。

フランス現代思想とか、かつて現代思想といわれていたものは、基本的にマルクス主義の一部でしかないので、実は本屋の思想の棚には左翼的文脈の中にのるような本しか並んでなかったりする。例えば法哲学者のカール・シュミットなんかは、アガンベンが『ホモ・サケル』などで取り上げたりすると、思想のコーナーに攻め入ったりしてきますが、そうでなければ、彼は右翼のひとだと思われているので、普段は政治思想や政治哲学のコーナーに置いてある。つまり思想の棚というのは、けっこうイデオロギー的なバリケードで守られている。だから、本屋さんのフリーペーパーでこんなことを言うのもどうかと思うのですが、まずそれを信用するなということですね(笑)。人文の棚・思想の棚というのは不自然に作られているので、信用してはならない。面白いものは自分で探せということですね。

 さらに言えば、マルクス主義が全体的な体系として機能していた時代には、マルクス主義自体が貪欲で、様々なフィールドの、例えばサイバネティックスや認知心理学なんかを取り込んでいこうとしていた。けれども80年代から90年代にかけて、マルクス主義そのもののパワーが弱くなったんで、撤退に入った。日本では特に「批評空間」がそうだったんですが、文化左翼になってしまった。その結果、彼らの言っている“批評”は文学批評や美術批評くらいになってしまった。これからは、まずそれを大幅に拡張しないといけない。

ひと昔前は、文芸誌と柄谷行人ばかり読んで、フランス映画とか観て、それだけで「批評やりたい」「思想やりたい」って奴がいっぱいいたわけですけど、いまはそんなスタイルはありえない。陳腐な言い方になりますが、まずはあらゆることに対して好奇心をもたないと。そしてそれには、謙虚さが必要です。例えば、現代思想っぽい用語を一回覚えてしまうと、現代思想っぽい言葉で喋っていない人はバカに見えるわけです。二十代前半くらいには起こりやすい現象ですね。しかし、現代思想っぽい言葉をちゃんと言っていないひとがバカに見えるようになったら、むしろ危険だと思うべきです。それは、頭がひとつのターミノロジーに支配されてしまっているということだからです。しかし、二十代前半と言うのは、何か勉強するとすぐ支配されちゃって、ちょっと違うタームでものを考えているひとが現れると、すぐ「こいつわかってないよ」と判断しがちなんです。大学院生ってそういうもんなんですね。そういう傲慢さへの自己チェックはとても大事だと思います。

【東浩紀談/聞き書き:じんぶんや 仁】

◎選者:東浩紀[あずま・ひろき]

選者:東浩紀さん1971年生まれ。哲学者・批評家。国際大学グローバル・コミュニケーション・センター教授・主幹研究員。東京大学大学院総合文化研究科博士課程修了。専攻は現代思想、表象文化論・情報社会学。初の著作『存在論的、郵便的』(新潮社)にて第21回サントリー学芸賞受賞後、『郵便的不安たち』(朝日新聞社)、『不過視なものの世界』(朝日新聞社)、『動物化するポストモダン』(講談社)、『情報自由論』(html version: http://www.hajou.org/infoliberalism/)、『網状言論F改』(青土社)、『動物化する世界の中で』(集英社)、『自由を考える』(日本放送出版協会)等、著作・対談集を精力的に刊行。また、個人事務所波状言論より、『波状言論 完全版(CD-ROM)』、『「動物化するポストモダン」とその後(CD-ROM)』、『美少女ゲームの臨界点』、『美少女ゲームの臨界点+1』を発行、発売している。

◎最 新 刊
波状言論S改―社会学・メタゲーム・自由 波状言論S改―社会学・メタゲーム・自由

東浩紀【編著】
大澤真幸/北田暁大/鈴木謙介/宮台真司【著】
青土社(2005年11月10日発売/\1,680(税込))
ISBN:4791762401

保守主義とラディカリズム、「あえて」とアイロニー、2ちゃんねるとSNS、弁証法と動物化、イデオロギーや世代の差異を越え、思想的課題を語りつくす。宮台真司、北田暁大、大澤真幸、鈴木謙介と東浩紀が、メタな理論とベタな現実の往復運動=批評を実践する、画期的鼎談集。

第1章脱政治化から再政治化へ
(政治的転回をめぐって;強度ある世界のために)
第2章リベラリズムと動物化のあいだで
(八〇年代から遠く離れて;インターネットと応答責任)
第3章再び「自由を考える」
(現象学的身体と環境管理;動物は自由か)

◎2005年11月末発売の雑誌
InterCommunication InterCommunication』(NTT出版)に、GLOCOM東浩紀研究室渾身の制作による「情報社会を理解するためのキーワード20」(監修:東浩紀+濱野智史)が掲載されます。項目は「コミュニケーション」「認知限界」「エンパワーメント」「オープン」「情報財」「価値」「ネットワーク」「組織」「プラットフォーム」「データベース」「自由」「秩序」「身体」「環境」「ユビキタス」「公共性」「創発」「セキュリティ」「ゲーム」「認証」。参考文献は100以上。すべての項目が、isedの議論を引き継ぎつつ、そのさきの新しいパラダイムに到達するための問題提起的な解説になっており、概念相関図も2つ発表されています。東浩紀氏の情報社会論に興味のあるかたは、必読です。

◎波状言論(東浩紀個人事務所)商品の取扱いを始めました。

今までは、東氏によるネット販売と一部の書店・小売店でしか扱っていなかった、東氏の自主制作商品4点を、紀伊國屋書店新宿本店5階人文書売場にて販売開始いたしました。
波状言論 完全版(CD-ROM) 『波状言論 完全版(CD-ROM)』

\4,200(税込)
「動物化するポストモダン」とその後(CD-ROM) 『「動物化するポストモダン」とその後(CD-ROM)』

\3,675(税込)
美少女ゲームの臨界点 『美少女ゲームの臨界点』

\2,835(税込)
美少女ゲームの臨界点+1 『美少女ゲームの臨界点+1』

\1,260(税込)

■場所紀伊國屋書店新宿本店5階カウンター前
■会期12月1日(木)〜2006年1月3日(火)
■お問合せ紀伊國屋書店新宿本店 5階売場 03-3354-0131 

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