内容説明
〔神風吹かず〕一九四四年七月、東条内閣が総辞職する。アメリカ軍はレイテ島に上陸。フィリピン沖海戦では神風特攻隊が初出撃するが大敗、日本海軍は事実上壊滅する。本土空襲が次第に激しさを増すなか、硫黄島が陥落、不沈戦艦〈大和〉もあえなく沈没――いよいよ敗戦の色が濃厚になってくる。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
skunk_c
59
レイテ沖海戦からレイテ島の攻防戦、硫黄島、そして沖縄戦の端緒までを書く。インパールはあっさりと触れているが、チャンドラ・ボースの動きに注目しているのが面白い。またいわゆる大陸打通作戦について、意義を認めるような記述となっている。東京大空襲や各戦場での状況は、多くのインタビューの成果が出ていて、戦争の悲惨さを淡々とだが十分に表現している。ヤルタにおけるルーズヴェルトとスターリン、そしてチャーチルの関係はあまり踏み込んでおらず、ここは他書で補うべきか。全体に「フェア」な視点の戦史であり、今も読む価値ありだ。2022/07/18
てんちゃん
33
フィリピン沖での連合艦隊の事実上の壊滅、硫黄島の陥落、東京大空襲、沖縄本島はの連合国軍の上陸――。全く勝ち目のない戦いに挑む様子は読んでいて辛い。この巻では戦艦武蔵の最後についても記載されていたが、読書中にBSで「戦艦武蔵の最後」の再放送を視聴。現在ご存命の武蔵の乗員だった方が、武蔵の撃沈後、生き残ったにも関わらず口止めのためか日本にも返してもらえずそのままフィリピンの激戦区に送り込まれたことを語っていた。この本を単なる小説のように読み進んでいた自分を恥ずかしく思った。ほんの少し前にあった「事実」なんだ。2017/01/30
けやき
28
太平洋戦争のノンフィクション。四巻。東条内閣の総辞職から鈴木貫太郎内閣の組閣まで。米軍のレイテ上陸、硫黄島の死闘、東京大空襲を経て、戦艦大和の最期、沖縄戦まで。2016/08/13
まると
11
第四巻は東条内閣の総辞職からレイテ海戦、大和撃沈、沖縄戦が始まるところまで。日本の敗戦が濃厚になるに従って、戦争は凄惨を極めていく。米軍捕虜に対する日本軍の扱いのひどさに身の毛がよだつ。これに対し、博愛的で高潔なはずの米軍側も、日本の都市への無差別爆撃を自国民に憚ることなく開始する。報復は報復を生み、人間の心を持った人間がどんどんいなくなっていく。戦争の恐ろしい本質が濃密に顔をのぞかせている。2019/10/28
Sumiyuki
9
敗色濃厚なれども、戦つづく。一撃講和論のためか、面子のためか。少なくともそこに皇民の「安寧」はない。あるのは国体護持や組織の意向。日増しに拡がる戦力差のために、人が「大量」に死んでいく。残された拠り所は「大和魂」と「神風」。栗田海軍中将「国が滅びるのに艦隊が無傷で残っていたら恥ではなかろうか。私は大本営が栄誉ある好機を与えようとしているのだと信ずる。諸君は奇跡といったものがあるということを思い出してほしい。決戦において戦勢を挽回する機会がわが艦隊にはないと誰が言うことができるだろうか」2020/01/08