内容説明
仇討(あだうち)といっても、理由はさまざま。この短篇集のキーワードは「色欲」と「仇討」。殿のご寵愛ただならない美男の小姓が仲間に殺された、殺人をおかし仇討におびえながらも女色にふける若者、同僚の妻への横恋慕など、それぞれの内情があり、仇討のために狂わされる人生がある。人間の本性をしたたかに描き出す傑作短篇集。それにしても、色子と呼ばれる若者を抱かせる陰間茶屋、尼姿の娼婦がいる比丘尼(びくに)宿と、江戸時代の性風俗の豊富さは驚きです。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
優希
94
面白かったです。「仇討」という名の群像劇でした。燃えたぎるような情念を感じ、それが物語の核になっているのでしょうね。殺し合いに取り憑かれた人たちの悲喜こもごもを見たような気がします。勧善懲悪ではない仇討。格好良いイメージではなく、愚行のような姿が描かれていると思います。2016/03/23
Kira
19
図書館本。読むのは三回目か。何度読んでも読みごたえたっぷりで夢中になる。仇討ちをめぐる当事者たちの生きざまと、さまざまなドラマが描かれる。本書に収録された九篇の他にも、仇討ちを描いた短編や長編がいくつもあり、このテーマは池波氏のライフワークのひとつだったのかなと思えてきた。仇討ちに焦点をあてて池波小説を読み返すのも面白いかな。2022/12/17
Kira
7
図書館本。読むのは二回目。仇討ちによって人生を狂わされた人々を描いた九篇を収録。仇討ちは、討つ側にも、討たれる側にも長く過酷な生活を強いる。仇討ちが織りなす様々なドラマと、当事者の生きざまが描かれている。それを群像と名づけた本書のタイトルがいい。読みごたえたっぷりだった。 2021/08/28
えりすこ
6
仇討にも様々な形、経緯がある。討つ側も、追われる側も、もう普通の暮らしには戻れない、という中で、どういう風に人間は生きていたのかね。2016/07/06
unichin
5
池波正太郎初期の仇討にまつわる短編集。事件の発端のほとんどが金と色なのはいつの世も同じ。どの仇討も興味深かったですが、ほろ苦さの残る「坊主雨」が特に好きでした。片岡仁左衛門丈の「霊験亀山鉾を観劇したばかりなので映像が頭の中で蘇りました。2023/02/19