内容説明
群雄並び立つ乱世を描く中国古典「三国志」を語るに、著者に優る人なし──世は前漢、後漢あわせて四百年、遂にその巨木も朽ちて、まさに倒れんとする時代。相続く天変地異、疫病の流行は悪政の報いか。ところが天子たる霊帝は遊び呆けてばかり……。道教『太平道』による造反、黄巾の乱をきっかけに、まずは、曹操、孫堅、劉備、関羽など天下制覇を夢みる梟雄、智将の登場。道教『五斗米道』からの視点を加え描く壮大な戦国ドラマ、陳三国志の幕開けである。
感想・レビュー
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カムイ
44
三国志を誰の目から見るとガラッと変わる作品がこの[秘本三国志]五斗米道の陳潛の立場からみた三国志である。時代は後漢滅亡間近にあり覇権を競い合う中、弱い立場でありどのように身の安全を考えうるだけ考え時の権力者に柳のような身の振る舞いを愠んなく発揮している。まだまだ序盤なので様々な手を尽くし儒教の生き残りを模索する陳潛、他の三国志作品は武将メインが多いが弱者からの目線は新鮮な読み物となる。吉川英治氏の劉備側からの三国志も面白いが一歩引いた角度の見方で三国志を捉えることは静謐な読み物となった。正史三国志を定本→2022/02/27
金吾
34
○子供の時読みましたが、それまで読んでいた三国志と見方がかなり違うのに驚いた記憶があります。それ以来ですが、白馬寺や五斗米道からの視点は面白いですし、曹操主体なのもいいです。2023/02/13
つみれ
23
冒頭でいきなり五斗米道について語っているということ自体、この三国志が変化球であることを告げている。大抵、三国志の物語は、劉備か曹操のうちの片方を主役に据えるか、章によって語り手が次々と入れ替わる群像劇のようなスタイルをとるかのどちらかになる。五斗米道という新興宗教のなかに語り手を配するのはよほど珍しいと言わねばならない。英雄たちの行動の裏に新興宗教の生き残りをかけた策略の存在が仄めかされるなど、独特の解釈が目を引く。陳舜臣の考えや説明が「作者曰く。」という形でたびたび差し挟まれるのもまたおもしろい。2016/09/18
サワ
17
お久しぶりの三国志。 吉川三国志を以前に読んだが、人物の描かれ方が吉川三国志のそれと随分変わっているのは面白い。内容や物語の骨子(黄巾の乱→董卓→長安遷都)を維持しつつも、翻訳者が変わった作品のように読み進めるのもまた一興。正史と演義をもっと深めたくなる一冊です。ありがとうございました。2022/12/25
飛鳥栄司@がんサバイバー
17
20年ぶりくらいの再読。「五斗米道」視点で進む三国志。正史ベースの三国志なので物語性は地味に進む感じ。この巻は長安遷都まで。2022/07/16