内容説明
いま、ジェンダー研究は、旧い因習や規範・制度からの解放という闘いから、人間観、社会観の根底からの見直しへと歩み出した。研究、一方で背景にある社会システムや法制をあいらだし、ひろく意識調査などを重ねて客観的な理論の構築をすすめると共に、問題意識を大胆に解放して、経済や文化、芸術など全ジャンルの既成価値の再検討・再構築に乗り出そうとしている。本記念論集の論考はその先駆の役割を担っている。
目次
第1部 ジェンダー論の諸相(「家」意識を支え再生産するもの―慣習・しきたり、社会通念を通して考える;教育とジェンダー―山梨県中学校教師の意識調査から見る教師の現実;装いとジェンダー―纏足とハイヒールとコルセットとブラジャーと;強豪力士は女だった!?―鹿児島県井出水主加紫久利神社の石灯篭をめぐる説話から)
第2部 文学・芸術とジェンダー(錯綜する物語―薫くみこ『十二歳の合い言葉』の魅力;シータ像の変容―インド英語文学における寡婦;ネラ・ラーセンの作品における売春、あるいは人種混淆と性の禁忌;再考・丸木俊の画業―裸婦と朝鮮人女性の表象)
第3部 仕事・ライフ・ジェンダー(共生社会と「女性の社会進出」;二〇〇八年不況と就業構造の変容―ジェンダー視角からの考察;「協同労働」の優位性を捉えなおす―ワーカーズ・コレクティブ調査に見る女性たちの労働観;次世代を担う女性農業者の人材育成―日本の農政における女性支援施策から)