内容説明
99.9%の生物種が消える?「絶滅」から生命の歴史を眺める!この世は公平な場所ではない?進化論が私たちに呼び覚ます「魅惑と混乱」の源泉を、科学と人文知の接点で掘り当てる、進化思想の冒険的考古学!
目次
序章 進化論の時代(進化論的世界像―進化論という万能酸;みんな何処へ行った?―種は冷たい土の中に ほか)
第1章 絶滅のシナリオ(絶滅率九九・九パーセント;遺伝子か運か ほか)
第2章 適者生存とはなにか(誤解を理解する;お守りとしての進化論 ほか)
第3章 ダーウィニズムはなぜそう呼ばれるか(素人の誤解から専門家の紛糾へ;グールドの適応主義批判―なぜなぜ物語はいらない ほか)
終章 理不尽にたいする態度(グールドの地獄めぐり;歴史の独立宣言 ほか)
著者等紹介
吉川浩満[ヨシカワヒロミツ]
1972年3月、鳥取県米子市生まれ。慶應義塾大学総合政策学部卒業。国書刊行会、ヤフーを経て、文筆業(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
どんぐり
67
進化論をめぐる著者の思索。進化論は、生存を適者の基準(自然淘汰説)としたことで経験科学としての有効性を獲得した。日常的な実感の世界においては、「適応しなきゃ淘汰されるぞ」「進化したな」など実際には進化論や進化現象と関係がないところで用いられている。進化論をめぐる専門家と素人、専門知識と一般常識、科学理論と世界像の分業体制という見方が面白い。2015/09/10
たかしくん。
57
理不尽こと偶発的な事象を無視しては語れない「進化論」がテーマですが、著者の言わんとするところは、寧ろそこに至るプロセスにフォーカスし、科学や学問のあり方を問いかける、スマートな様に見えて実は骨太な1冊です。進化論を従来の「自然科学」の土俵に持ち込ませるグールドと、いやいや「適応主義こそが科学を優先する」と反論するドーキンス。この主題の結果は後者に軍配は上がるものの、最終章での「グールドの地獄めぐり」を振り返りながら、科学とそれに相対する歴史学の方法論の違いの考察は、正直難しいながらも圧巻でした。2015/02/09
ころこ
44
進化論とそれに反対する議論をしているようで、我々のものの見方について考察しています。事後的に見出された恣意的な法則性が世界のルールであり、歴史であり、進化論である。超越論的な視点が無い以上、勝者が勝利の理由を法則化するのは原理的に止むを得ない。しかし、勝者が考える勝利の法則は単なるトートロジーであり、敗者による言語化不可能な真実に近づくことは科学の営みではないかも知れないが、これこそ真に思考することだといえるのではないか。我々の近代意識は適者生存を基本としており、この様な説明をすることに問題が無いと感じて2019/07/04
まこみや
43
久しぶりに線を引き、付箋を貼り、書き込みをしながら熟考しつつ読みました。「進化論」という科学と人文学の中間にある学問を追究することで、「人間」に対する遠心力と求心力との間の往復運動の重要性を説いています。そうした大きな思想的問題を、まるでエンタメ本を読ませるかのような筆致で記述していて、最後まで興味と興奮を切らさずに読むことができました。酷暑の夏に頭をクールダウンさせることができた貴重な読書体験になりました。ありがとう。2020/08/17
venturingbeyond
36
ちくま文庫の増補新版が出たのを機に、7年来の積読解消をと一気に読了。噂に違わぬ良書。進化の理不尽な本質と進化論の通俗的理解を入口に始まる考察は、ドーキンスとグールドの論争あたりから急速にドライヴがかかり、科学と歴史の二重性に引き裂かれた進化論のあり様から、この二重性に引き裂かれた人間存在の本質の考察という本書の核心部分に到る展開は、読む側も同様にドライヴさせる。進化論の魅力と深淵(≒人間の可能性と業の深さ)を的確に定置する人文的教養の可能性と価値を堪能できる一冊。2021/07/07