内容説明
少子化に伴い二〇〇九年には、大学・短大「全入時代」がやってくる。今や定員割れは当たり前。大学の倒産も現実味をおびつつある。さらに企業など社会が大学に向ける目も厳しくなっており、若者のモラトリアムとしての大学は消滅し、中身の充実が求められている。大学間競争の激化、統合再編など「生き残り」をかけた動きも急だ。国立大学の「法人化」も間近に迫る。いままでの常識では考えられなかった状況に、大学はさらされている。大学はどこへ行こうとしているのか。変貌する大学の姿を、現場の新聞記者が多面的に解説する。
目次
第1章 学生が集まらない!
第2章 「学力低下」を考える
第3章 変わる学生気質
第4章 揺らぐ「基盤」
第5章 国立大学は変われるか
第6章 合従連衡の時代
第7章 岐路に立つ短大・女子大
第8章 多様化する学びの形
第9章 早慶戦・番外編
第10章 サバイバルに向けて
著者等紹介
古沢由紀子[フルサワユキコ]
1965年生まれ。読売新聞社会部記者。87年早稲田大学政治経済学部政治学科卒業後、読売新聞入社。大学だけでなく初等中等教育も含め、教育問題全般をカバーしながら、取材を重ねる。98年から2000年まで文部省担当。社会部教育担当として新学習指導要領の実施や、大学改革など、変革期にある「教育」を様々な角度から検証している
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
佐島楓@入院中
24
2001年初版。18歳人口が減る中入学者集めに苦労する学校、ゆとり教育導入後の誤算など、すでに考えたり読んでいたりすることも多かった。この時点でネット大学の可能性について触れているのには少し驚いた。好きなときに大学に行き、好きなときに学べるというのがこれからのライフスタイルの理想だ。勉強とは本来楽しくて能動的なものだと思うのです。 2014/07/31
okanotomokazu
4
ちょうど国立大学法人が設立されるタイミングで書かれたものなので、当時の問題意識、展望などが伝わってくる。その後、どうなったかを比較すると、さらに勉強になる。 少子化、学力低下などの大学を取り巻く環境はいまも全く同じ。その中で大学自身がどう変革し、対処していくか。 その改革は、「大学が何を目指すか」、「どういう学生を育てるのか」という価値観に貫かれていなくてはならない。枠組みを変えるだけでは、本当に魅力ある大学にはならないだろう。 私立大学も国立大学も、サバイバルの時代。小手先の戦術ではなく、理念が必要だ。2012/04/17
ミツ
3
社会部教育担当の新聞記者による、変動する日本の大学状況を記した著作。 ちょうど10年前の2001年、小泉内閣による改革が行われた年に書かれており多少古いが、多くは今現在でも十分に当て嵌まる状況であり、また今現在の大学状況を巡る諸制度がどのような背景から来ているのか知ることが出来た。 四年制大学だけでなく短大や専門学校についても触れられ、ゆとり教育や学生の気質、国立大学法人化、大学統合、女子大などについて論じられた後、著者自身による展望が語られる。2011/02/07
Naota_t
2
★3.2 大学全入時代を迎え、読売新聞記者がその背景を検証する。今や多くの大学は定員割れが当たり前。18歳人口が減少しているにも関わらず、大学は増える矛盾。各大学も方向を探ってはいるが、奈良女子大学が共学化しない理由の一つに、進路の教員枠に男性が入って女性の枠が狭まるから、というのは苦笑しかない。何のために大学に行くのか、社会はなぜ大学を必要としているのか、人生と社会を真に豊かにするために大学に何ができるのか、何のために存在しているのかを示せない限り淘汰されても仕方がないと思うし、そうすべきだと思う。2020/08/10
tooka
1
学校間のタテの連携が驚くほど隔絶していること、大学の法人化に伴うメリットと副作用、そして株式会社の学校の紹介が参考になった。一方で私学への補助金が自明視されていて本の議題に上らないことが不満。事務員のアウトソーシング大いに結構。しかし委託して財政のスリム化を目指すだけでいいのか。中国みたいにノウハウを盗み取るくらいの気概はないのか。学生の学習意欲の低下を嘆く一方で、大学側にもかつての自立心はない。意欲のなさは目くそが鼻くそを笑っているように見える。2011/02/22




