内容説明
明治維新後、金貸業から事業を拡大させた大堂家の娘・菊乃は、身分違いの伯爵家に嫁ぐ。そこで待ち構えていたのは、歌舞伎より能を、世界情勢より貴顕社会の噂話を好み、欲望と快楽に耽る一家だった。生家との違いに驚き、爛れた伯爵家の闇の深さを知った菊乃は、持ち前の負けん気が顔を出すのを感じていた…。女性の権利が認められなかった激動の明治時代、旧弊な価値観はびこる格式張った家に、菊乃が新時代の風を巻き起こす!
著者等紹介
山口恵以子[ヤマグチエイコ]
1958年、東京都江戸川区生まれ。早稲田大学文学部卒業後、会社員、派遣社員として働きながら、松竹シナリオ研究所で学ぶ。脚本家を目指し、プロットライターとして活動。その後、丸の内新聞事業協同組合の社員食堂に勤務しながら、小説の執筆に取り組む。2007年『邪剣始末』で作家デビュー。13年『月下上海』で第20回松本清張賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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まこみん
96
明治期、都内に1万坪の土地に総檜和風邸宅と外国人設計の洋館のニ邸宅を構える、財閥大堂家の美しい娘菊乃。彼女は政略結婚の相手、ニ礼通敬に一目惚れ。ニ礼家は公家華族だが、内情はお金が無く菊乃の持参金目当てと判っていたが、自分に自信のあった彼女は気にしてはいなかった。しかし嫁いでみると退廃した公家内の数々の闇に甘い期待は打ち砕かれる。彼女は尊敬する祖父に意見を聞き、自分の意思を貫く事を決意。強かにニ礼家の柵を粛清していく。後半の娘の場面では、次に繋ぐ者としての芯が通ったしなやかな強さと深い愛に凄さを感じた。2017/04/17
ゆみねこ
65
財閥の娘・菊乃は、元公家の仁礼伯爵家の通敬に嫁ぐ。夫の度重なる裏切りにもめげず、ひたすら家名を守るために菊乃がとった行動は…。昼メロにしたら、かなり見ごたえのあるドラマが出来そうです。文章が読みやすいのであっという間に読了。2016/03/27
taiko
60
札差から財閥に成り上がった大堂家の娘菊乃は、公家華族二礼家に嫁いだ。 嫁ぎ先の伯爵家は、伯父久の言葉を借りると化け物屋敷。夫通敬は結婚前から妾を囲っていたり、女中をお手付きにしたり、兄の未亡人と恋仲になったりと、光源氏を地で行く様子。 その事実を目の当たりにしながらも、菊乃は二礼家のために嫁として務め続けた。…世を知らぬお嬢さまがしたたかな女になって行く話は、著者の他の作品にもありましたが、菊乃のしたたかさには頭が下がります。二礼家の存続だけが心の支えの菊乃の復讐や娘への言葉など、→続く 2019/07/04
ぷれば
45
明治維新後、政商の大堂家の娘・菊乃が嫁いだ先は、身分違いの伯爵家だった…。激動の明治、新旧の価値観、格式、プライドがドロドロにぶつかりあう時代。泥沼のような闇の中、菊乃が選んだ人生とは!?毅然とした美しいヒロインが眩しい。2016/04/15
Rie
43
舞台は明治維新の頃。伯爵家へと政略結婚した菊乃。しかし夫は妾を囲い、心は離れる一方。生家とは違った価値観のなか一人疎外感を味わっていた。けれど持ち前の気質で困難を乗り越えていく…。怖いくらいに強い菊乃。身近にいたら圧倒されてしまいそう。それだけに夫の弱さ、ズルさがみえてくる。ドロドロした展開になるかと思いきや案外さらっとしていて読みやすかった。2016/01/27