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二 十 四

巽 孝 之

日 米 文 化 の 変 容
── 9 . 1 1 テ ロ 以 後 の ト ラ ン ス リ ア ル !


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巽孝之さんエッセイ:日本文化の変容を考えるために
巽孝之さん新刊
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日本文化の変容を考えるために  わたしに初めてアメリカを実感させてくれたのは、1967年に小学校高学年だったころ、ビートルズのアメリカ制覇でピークに達していたロックンロールでした。ちょうどSFに夢中になっていたわたしは、1968年より背伸びして買い始めた早川書房の月刊誌<SFマガジン>で小松左京という作家の長篇連載『継ぐのは誰か?』を読みふけるようになり、電脳空間に自由自在にアクセスできる電波人類(ルビ→ホモ・エレクトリクス)という強烈なアイデアもさることながら、何よりもヴァージニア大学都市のサバティカル・クラスでくりひろげられる知的にして奔放な大学生活に憧れたものです。やがて1969年には、少女雑誌<セブンティーン>で、水野英子のロック漫画『ファイヤー!』に接し、アメリカ文化の影響は決定的になりました。その15年後、わたし自身が20代の終わりに3年間のアメリカ留学を果たし、アメリカ研究の仕事に就いたのも、これらのアメリカ像が魅力的だったからにほかなりません。

 ふりかえってみると、ビートルズはイギリス人ですし、小松左京も水野英子も日本人です。したがって、いまにしてみると、彼らアメリカ外部の表現者によって描き出されたアメリカには、巧妙なまでに「毒」が刷り込まれていたこともわかってくる。そして何よりも、戦後日本社会がいかにアメリカとの妥協のうえで独自の混成主体を発明しなければならなかったか、このように発明されたサイボーグ的主体こそ「自然」なものと信じこまなければならなかったかが、わかってくる。だからこそ、文化を相対化する視点の先覚者とも呼ぶべき九鬼周造の『「いき」の構造』と土居健郎の『「甘え」の構造』を、わたしは大学時代このかた、何度となく読み返しています。

 ただし1980年代の高度資本主義時代を経ると、日米文化は単純な影響関係でも相対関係でも計れません。ハイテク情報空間が稠密になりグローバル化が進めば進むほど、何らかの影響がなくても地球上の文化は同時多発するし、そもそも因果関係の論理、リアリティの根拠を攪乱してしまうほどに、文化の混淆は進むばかりです。9.11同時多発テロの勃発が、長く封印されてきた文化の「毒」を世界に解き放ったことも重大でしょう。ならば、その「毒」は蔓延するしかないのか、別の毒によって制されるものなのか、それとも、まさにそこから新たな文化がもたらされるのか――こうした問いかけのうちにこそ日米文化の変容を考えるヒントが潜むと思い、新著『フルメタル・アパッチ』(デューク大学出版局)を上梓した次第です。

【巽孝之】


選者:巽孝之(たつみ・たかゆき)
選者:巽孝之さん1955年東京生まれ。コーネル大学大学院博士課程修了(Ph.D.,1987)。慶應義塾大学文学部教授。アメリカ文学専攻。
代表作に『サイバーパンク・アメリカ』(勁草書房、1988年度日米友好基金アメリカ研究図書賞)、『ニュー・アメリカニズム』(青土社、1995年度福沢賞)、『E・A・ポウを読む』(岩波書店、1995年)、『メタファーはなぜ殺される―現在批評講義』(松柏社、2000年)。『アメリカン・ソドム』(研究社、2001年)、『リンカーンの世紀』(青土社、2002年)、『「白鯨」アメリカン・スタディーズ』(みすず書房、2005年)、Full Metal Apache (Duke UP, 2006)ほか。主要論文に“Literary History on the Road: Transatlantic Crossings and Transpacific Crossovers,” PMLA 119.1 (January 2004)など。

編訳書としてダナ・ハラウェイ他『サイボーグ・フェミニズム』(トレヴィル、第2回日本翻訳大賞思想部門賞)、ラリイ・マキャフリイ『アヴァン・ポップ』(筑摩書房、1995年)、J・G・バラード他『この不思議な地球で』(紀伊國屋書店、1996年)、編著に『日本SF論争史』(勁草書房、2000年、第21回日本SF大賞受賞)ほか。共編著として『事典 現代のアメリカ』(大修館書店、2004年)、『アメリカの文明と自画像』(ミネルヴァ書房、2006年)ほか多数。

【ゼミHP】
http://web.mita.keio.ac.jp/~tatsumi/

今回の「じんぶんや」選者、巽先生には紀伊國屋書店のDVD専門販売サイト「Forest Plus」でDVDコンシェルジュをつとめていただいています。
ぜひ合わせてご覧ください。
http://forest.kinokuniya.co.jp/Cngintro/9

巽孝之さん新刊
Full Metal Apache : Transactions between Cyberpunk Japan and Avant-Pop America (Post-contemporary Interventions)
Duke Univ Pr(2006-06出版)
ISBN:0822337746
今夏、巽孝之・慶應義塾大学文学部教授(アメリカ文学)による英単著がついに刊行。米デューク大学出版局のシリーズ”Post-contemporary Interventions"(批評理論・文化理論の泰斗スタンリー・フィッシュとフレドリック・ジェイムソンが共同編集を務める)の一巻として発売された本書は、日米現代文化の潮流と相即不離の現象、サイバーパンクとアヴァンポップを縦横に論じつくす画期的な比較文化論です。


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■場所 紀伊國屋書店新宿本店5階カウンター前
■会期 8月4日(金)〜9月4日(月)
■お問合せ 紀伊國屋書店新宿本店 5階売場 03-3354-0131 

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