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十五

池 内 紀

深 ま る 秋 に 読 み た い ド イ ツ 文 学 の 2 0 冊


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池内紀著作・翻訳
※ 選書:池内紀/本の紹介文:じんぶんや【歩】
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文学以外

池内紀さんイラスト_1 若いころは長篇小説が好きだった。その点、ドイツ文学はぴったりで、トーマス・マン、へルマン・ヘッセ、ローベルト・ムージルといった二十世紀の代表的な作家たちは、えんえんと長い小説を書いた。

  ろくすっぽわかりもしないのに、仔細ありげにひらいていた。向学心というよりも、当時そういうのがカッコよかったせいである。その証拠に、中身はさっぱり覚えていないが、恋人に話して聞かせたくだりは、いまもくっきりと記憶に残っている。話して聞かせたい一心で読んだからだ。

 カフカを通して短篇の魅力を知った。どちらかというと寓話風のフシギな物語が好きである。しかし、いまでも長篇の楽しさが忘れられない。原稿の注文もなくなって、うんと退屈な日々が訪れたら、五百頁、千頁なんてのをひらいて、少しずつ、ひと月で一冊というふうに読んでみたいと思っている。

  同じ長篇でもブロッホやユンガーやギュンター・グラスは世代が若いぶん、スタイルが随分ちがう。現代作家のシュリンクやゼーバルトとなると、さらにもっとちがってくる。かわるがわるに読むと、二十世紀から、二十一世紀にわたる知的遺産を、丸ごと手にしたようで、なんとも豪勢な気分になれる。

  ごぞんじのとおり、ドイツ人は昔から、色や造形よりも音楽や観念で特色を示してきた。それは文学のありようでも同様で、ドイツの詩人や作家たちは、詩作したり物語るだけでは満足できないらしい。文学に「文学以外」のものをまじえずにはいられない。

 ケストナーの『人生処方詩集』は詩が人生相談を兼ねている。ブレヒトの『三文オペラ』は、オペラの形でブルジョワをこっぴどくからかった。ヘッセの『庭仕事の愉しみ』では土いじりが日常の哲学を代理している。文豪ゲーテの『イタリア紀行』は、とびきり早くに出た「地球の歩き方」である。旅先から友人・知人に書き送ったものを、あとでまとめた。現代の「メール」と同じやり方で本を作った。

 みなし児カスパール・ハウザーをめぐる謎は、いまなお十九世紀の謎である。失業者アドルフ・ヒトラーが政治に打って出て頭角をあらわし、みるまに独裁者にのし上がった経過は、二十世紀の謎である。ドイツ文学を「文学以外」の目で眺めると、とほうもなく多彩で、こんぐらがった謎々のようにおもしろい。


池内紀さんイラスト_2
【池内紀】

◎選者:池内紀

選者:池内紀さん1940年兵庫県姫路市生まれ。ドイツ文学者・エッセイスト。1966年から96年まで神戸大、都立大、東大でドイツ語、ドイツ文学を教え、退官した後は文学に限らず広いジャンルでのエッセイを執筆。『諷刺の文学』(1978)で亀井勝一郎賞、『海山のあいだ』(1994)で講談社エッセイ賞などを受賞。また、『ファウスト』(1999)で毎日出版文化賞、『カフカ小説全集』(2000〜02)で日本翻訳文化賞など多くのドイツ文学翻訳でも業績を残している。その他に、『ぼくのドイツ文学講義』(1996)、『ゲーテさんこんばんは』(2001)など。

『 池 内 紀 の 仕 事 場 』 全 8 巻   内 容 紹 介
池内紀の仕事場 第1巻 第1巻 世紀末の肖像

池内紀【著】
みすず書房(2004-06-15出版)
ISBN:4622081318

世紀末におけるウィーンを中心に同時代の精神や空気をクリムト、フロイトなどの人物を通して描く。

池内紀の仕事場 第2巻 第2巻 <ユダヤ人>という存在

池内紀【著】
みすず書房(2005-09-16出版)
ISBN:4622081326

カフカ、カネッティ、ヨーゼフ・ロート。迫害を受けながら偉大な業績も残すユダヤ系の作家・思想家はどのように生きていたのか。ユダヤ人の姿をまとめたエッセイ集。

池内紀の仕事場 第3巻 第3巻 カフカを読む

池内紀【著】
みすず書房(2004-04-15出版)
ISBN:4622081334

5年もの歳月をかけて新しく翻訳しなおされた『カフカ小説全集』。訳者としての池内氏とカフカの間にあるさまざまな思索が戯れるエッセイ集。新しいカフカ像を切り開く。

池内紀の仕事場 第4巻 第4巻 自由人の暮らし方

池内紀【著】
みすず書房(2005-02-15出版)
ISBN:4622081342

世間に動かされることなく、自らの道を漂泊するように歩く単独者たちの生き方。作家・内田百けん(門+月)、画家・辻まことなどの肖像を写し出す評伝集。

池内紀の仕事場 第5巻 第5巻 文学の見本帖

池内紀【著】
みすず書房(2004-12-15出版)
ISBN:4622081350

樋口一葉、夏目漱石、志賀直哉、司馬遼太郎など、小説を読む愉しみ、文学の遊び方を読書の達人の目を通して展示する。読書の見本市。

池内紀の仕事場 第6巻 第6巻 架空の旅行記

池内紀【著】
みすず書房(2004-10-15出版)
ISBN:4622081369

少年の頃読んだ空想の世界をもう一度旅する。それは二十世紀の回顧でもあり想像力の挑戦でもある。フランダースの犬からアトランティスまでファンタジーを横断する。

池内紀の仕事場 第7巻 第7巻 名人たちの世界

池内紀【著】
みすず書房(2004-08-16出版)
ISBN:4622081377

トニー谷、花菱アチャコなど「話し」の達人たちのコトバの乱舞によって浮かび上がる世界を人・土地・作品の視点から読み直す。ラジオから聞こえてきたあの話芸をもう一度。

池内紀の仕事場 第8巻 第8巻 世間をわたる姿勢

池内紀【著】
みすず書房(2005-04-15出版)
ISBN:4622081385

エッセイスト池内紀が生きてきた時代、空間、社会。時に正面から、時に斜めから眺めつくしたその生活と意見、省察をまとめた無類のエッセイ集。池内氏はこうして生きてきた。

◎池内紀特製 私家版「いきもの図鑑」をプレゼント

みすず書房『池内紀の仕事場』全8巻刊行を記念して、池内氏自らが執筆、描画し、私費を投じて作成された私家版「[いきもの]図鑑」を「じんぶんや」が入手しました。「仕事場」全8巻を予約購入された方にのみ贈呈されていた、この冊子を今回2冊以上お買い上げのお客様にプレゼントさせていただきます。

モグラみたいな人、ヤモリみたいな人、キノコみたいな人、あなたの周りにいる人はどうも何かの動物に似ていませんか?口先でせっせと事件をかき回す「クチノハシ」、もう倒れてしまっている枯木に群生する「族きのこ」など、長年の社会・人間観察で養ってきた池内さんの奇眼がどこにでもいる人びとの気になる行動を架空の動物に寄せて語る、とびきりのヒューマン・エッセイ。「あ、こんな人いる」と思わずにんまりしてしまうエッセイが30編収録されています。

■場所紀伊國屋書店新宿本店5階カウンター前
■会期11月1日(火)〜11月30日(水)
■お問合せ紀伊國屋書店新宿本店 5階売場 03-3354-0131 

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