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十二

道 場 親 信

「戦後60年」を問い直す
――東アジアの中の戦後日本――

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東アジアの冷戦と植民地主義の継続
朝鮮戦争再考
歴史認識
反戦平和の戦後経験
「戦後日本」を問い直す
反戦平和
そのほか
「現代思想」(青土社)道場親信の寄稿号
特別掲載「『占領と平和』あとがきのあとがき」/ 道場親信
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「戦後60年」を再審する

「戦後」という時代は今年で60年目を迎える。最初の「戦後生まれ」が民間企業では定年を迎える年だ。この長きにわたる時代経験が、近年では十分に理解されることもなく否定されつつある。その最たるものが、「時代に合わなくなった」という理由で改憲を進めようとする「戦後生まれ」の政治家たちの姿だといえるだろう。アメリカ合衆国憲法はいくどかの修正を経験してはいるが、制定以来200年にわたって維持され続けている。同じ敗戦国であったドイツ連邦共和国の憲法は、ポスト冷戦期に「統一」された同国の東半分にまで拡大された。「時代に合わなくなった」から「新憲法」を制定しようという自称「リベラル」の人々も含め、「新しさ」だけが価値であり続けてきた高度成長期的な“古い”感性にどっぷり漬かった人たちは、今度は憲法までも消費して使い捨てようとしているのだろうか。

そんな時代だからこそ、「戦後」という歴史性にこだわる必要があるというべきだ。新しいか古いかという受動的な消費基準によって誤った政治を買わされないためにも、この60年を生きてきた経験をつかみ直し、成功も失敗も含め、自分に連なる歴史として現実感覚をもってとらえることなしには、「新しさ」だけが価値の「改革」(それは「保守」すべき民衆理性を根こそぎ解体するネオリベラリズムの暴力の別名でしかない)に対して、自分や自分の愛する人たちを守るためにも必要な最低限の思考の場をも明け渡してしまうことになるだろう。私たちはアイデアや思いつきのみによってコミュニケーションの場、対抗的な公共性を作り出すことはできない。歴史にアクセスする方法が必要なのである。

もちろん、歴史にアクセスするということは、自分にとって都合のよい・心地よい過去を並べることで自足できるものではない。自らの観念の閉域を食い破る問いかけに直面することもあろうが、そこから逃げては、歴史はただの寝物語になってしまうだろう。歴史意識の危機は、政治の危機と相即したものであるといえるが、この危機に際して、歴史にアクセスする方法を豊かにしていくための作業に乗り出すことが必要であろう。今回の選書は、その第一歩のお誘いである。東アジアにおける冷戦と植民地主義の継続、冷戦構造を形づくった朝鮮戦争の再考、歴史認識問題、「反戦平和」経験、そして「戦後日本」という時間を問い直すさまざまな経験と場所、これらを通じて「戦後60年」を再審に付していく作業には多くの人々の協働が必要である。きょうこのコーナーに立ち寄っていただいたことを一つの機会として、一緒に考えていきましょう。
(道場親信)

道場親信[みちば・ちかのぶ]
1967年愛知県生まれ。
大学非常勤講師や予備校などで糊口をしのぐ非正規労働者。専攻は日本社会科学史・社会運動論。思想史・運動史・社会史の交差点となるところでの時代の連関構造に興味を向けて作業するも、体力がなく、よくぐったりしている。著書に、『占領と平和―“戦後”という経験』(青土社、2005年)、『社会運動の社会学』(共著、有斐閣、2004年)、『もうひとつの戦後へ』(共著、社会評論社、1996年)など。『現代思想』最新号(2005年8月号)に「Not in our names!:「戦争被害者」であることと靖国問題」を掲載。

『占領と平和――“戦後”という経験』
道場親信【著】/青土社

“戦後”はいかにうみだされ、どのように生きられてきたのか―『菊と刀』の抜本的読みなおしなど、膨大な資料を縦横に駆使し、日米合作の占領が作り上げた東アジア冷戦体制とナショナリズムを再審にかけ、反戦平和運動の実践と思想のうちに豊饒な抵抗の歴史を見出す、戦後史研究の新たな展開。

○道場親信さんより
本書は、「戦後」と呼ばれた時代、今日にまでつながる第二次世界大戦後の日本の戦後を、国境の内側に閉じた歴史意識から解放して、「東アジア」という広がりの中で読み直そうという意気込みのもとに書かれています。序論では「東アジア」という視点から戦後日本の社会思想や社会運動をどのようにとらえ直したらいいのか、という点についての現時点でのアウトラインを示し、第T部では、ルース・ベネディクトの『菊と刀』の執筆と受容を通じて、戦後日本における「自己像」の形成史を追う、という構成になっていますが、ここでは「占領」という経験と戦後社会科学の形成との関連をも問う形になっています。第U部では「反戦平和」の運動史(行動と思想)を追いかけながら、どのような想像力、イノベーション、そして認識の限界が生み出されたのかについて考察しています。それはいま現在の私たちの立っている位置を考える上で不可欠の作業ではないかと考えたからでした。「戦後」という時代意識はいま急速に風化しつつあり、一つの歴史的時代としての理解も焦点を失って憶測やでたらめな理解が拡大してきています。この時代を生きてきた先輩たちとともに、自らの足もとに至る歴史を所有するための想像力の涵養につとめることは、アジアと共生し、寛容な社会をつくっていく上で必要な「市民性」をも豊かにしてくれるものと思っています。ともに歴史をつかみ直す作業に歩み出しませんか。


■場所紀伊國屋書店新宿本店5階カウンター前
■会期8月1日(月)〜9月5日(月)
■お問合せ紀伊國屋書店新宿本店 5階売場 03-3354-0131 

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