内容説明
いまや世界第二位として、グローバル経済の要となった中国。その中国の政治と経済の路線は二十年前にトウ小平が敷いたものだった。毛沢東の死後、最高権力者となったトウ小平は、いかにして今日につながる道を開いたのか? 中国取材四十年のベテラン伊藤正が、豊富な取材と膨大な史料を駆使して書いた一冊。最高指導者が胡錦濤から習近平に交代し、 貧富の格差など現代中国の矛盾も広がった中国の行く末が注目されるいま、必読の書です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
glaciers courtesy
5
鄧小平は開明的と言われているが、自分の歴史そのものである共産党の一党支配の継続という部分については議論することすら許さず暴力を用いても圧殺する。その上での人生、政治活動だったことがわかる。そう考えると明治維新をもたらすために大政奉還をした徳川慶喜は偉大だったといえるが、比較出来ないのは自ら戦い政権を勝ち取った創業者世代の鄧小平と15代目の慶喜では全く環境が違うということか。もしくは生き残る政治家とはこのようなものだとも言える。驚いたのは中国と台湾の統一が合意寸前だった時代があったということ。知らなかった。2016/03/21
鈴木貴博
3
下巻は毛沢東の死とその後の権力闘争、その後も続いた曲折、そして最後に今に残された鄧小平の遺産を考える。上下巻を通じ、現在の中国の直接の原点と言える鄧小平とその時代について理解が深まった。2021/07/25
Roy
3
現代の中国の発展に鄧小平が果たした役割は計り知れないものがある。経済発展と共産党の独裁、経済的な革新と政治的な保守という構造を築いたと言ってもよいと思うが、天安門事件が起こる前後に革新派と保守派をバランスさせながら統治していたとも言える。また、一方で文革後に華国鋒を追い落とし、権力を掌握するために華国鋒と対立する保守派と共闘したことが後々まで続く微妙な権力構造を形作ったとも言え、鄧小平が実は党内の力学をコントロールすることに苦慮していたのではないかと感じた。2019/06/15
ホン
3
国民生活の向上、国家繁栄のためにアメリカ、日本とも協調し学ぶところも多いと感じた鄧小平だが一党独裁だけは絶対譲れないとする確固たるものがある。これだけの人口ともなればその方が好都合との判断なのだろうか、でも今 その既得権者による数多くの賄賂容疑、ますます広がる貧富の差による格差社会、しいては国の欲のため他国領土の侵害による国際秩序の乱れとか大きな問題が続発している。その中国の近代史の流れを知るのに絶好の作品だと思うがその中国では発売禁止になっているらしい、こういう作品こそ中国の人にも読んでもらいたいと思う2015/06/18
dexter4620
1
鄧小平は経済改革者のイメージでしたが、その印象を変えてくれる一冊。『周恩来秘録』に書かれていた失脚による浮き沈みだけでなく、南方巡行など晩年の政策や後継者選びについての情報も新鮮でした。何より、天安門事件の時に現地にいた筆者が書いていると言うことが名著の証拠でしょう。2024/01/20