内容説明
毎朝新聞政治部記者の弓成亮太は、自他共に認める花形記者だ。昭和46年春、大詰めを迎えた沖縄返還交渉の取材中、弓成は日米間にある密約が結ばれようとしていることに気づいた。しかし物証がない。熾烈なスクープ合戦の中、弓成に蠱惑的な女性の影が……。「外務省機密漏洩事件」に材をとり、国家権力に叩きのめされた男の挫折と再生劇として甦らせた、構想10年・毎日出版文化賞特別賞受賞の傑作。ドラマ化原作! 電子版には、この作品に寄せる著者の談話を特別収録。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
遥かなる想い
157
例の毎日新聞記者の外務省機密漏えい事件を 扱った小説である。それにしてもあの時代、なぜ我々は事件の本質には目を向けず、男女の スキャンダルにばかり目を向けたのか。山崎豊子も存命の人に気をつかっているからなのか 書ききれていない感じがした。韓国ドラマであれば、あからさまに書き込んだだろうに。2010/04/28
zero1
112
舞台は昭和46年。沖縄返還での日米密約を追う敏腕の新聞記者、弓成。機密文書が国会で野党の追及に使われる。外務省の審議官付き女性事務官に接触した行動は正しかったのか?情報源の秘匿と政治家の外圧、報道の自由に知る権利と公務員法。山部(ナベツネがモデル)、小平(大平)、横溝(横路)など登場する人物たちが実名に近く興味深い。この巻の終盤、事件に大きな動きが。実際にあった西山事件を基にしているだけに、「無い」とされた文章が「あった」とするモデルケースと言っていい。批判はあるが近代史も学べる貴重な作品。二巻に続く。2019/08/20
ユザキ部長
82
読み始めはなかなか難しくても中盤からスピードアップ。さて、誰を応援する?新聞記者、弓成のデカい態度はどこまで許せる?2017/05/03
キムチ
63
スキャンダラス満ち満ちた西山事件を扱っている事はつとに有名。登場する政治家の氏名を1,2字しか弄っておらず、モデルが誰かは推測に難くない。当時、新聞マスコミを賑わしていた事をうっすら知っていたが、何せ子供。今振り返ると政治家は「偉い人」とステロタイプに考える時代は変わって行きつつあったようだ。そして佐藤首相は沖縄返還に政治生命を賭け 功への焦りすらあったのではと感じる。主人公弓成の人物描写を反感もたれるべく描いているのは筆者が意図したものだろうか。2014/02/06
修一朗
48
2013年9月の逝去を機に,かつて愛読していた山崎豊子先生を再読するつもりで半年積読。この度,私が入院したので読む時間が出来た。昭和47年の西山事件がモデル。本では外務省内情,政治家同士の権力闘争が圧倒的なリアリティをもって描かれる。取材,文章,ぶ厚い! 字を一つ一つ彫りつけたかのよう。これこそ山崎先生の真骨頂。最近,他の作家で,外務省,国連を扱った本を立て続けに読んだが,取材が薄っぺらくて読むに耐えなかった。主人公の弓成は傲岸不遜,私が最も友達になりたくないタイプ。逮捕されたところで次巻に続く。2014/04/26
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