内容説明
戦後の万葉研究の第一人者による、初めての個人全注釈の文庫版。隣接諸学との多様な交流の成果も踏まえた、現代万葉学の集大成。一群の詩の背景、状況をいきいきと語る歌群ごとの釈注。新鮮な感動を呼び起こす充実した内容。『万葉集』は、5世紀初頭から8世紀中葉まで、およそ350年にわたる4500余首の歌を収める。『万葉集』の「目録」に「古今相聞往来歌類」と称する巻十一と巻十二とを収録。「柿本人麻呂歌集」を先立て、次に作者不明の歌を「正述心緒」「寄物陳思」などの歌体で分類するこの二巻は、多彩な表現で万葉びとの愛情生活を描きだしている。「正述心緒」には「女の歌+男の歌」の群をいくつか繰り返すという配列がとられ、「寄物陳思」は詠み込む「物」ごとに集められている。【文庫版:リフロー型】
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
MrO
3
この夏の公開講座の準備で読んだ。一首の後ろに広がる世界を描き出していて、この濃度で4500首を読み通した伊藤博さんの偉業はもっと評価されるべき。三部作の頃から、ずっと尊敬してました。2012/07/12
KAZOO
2
伊藤先生の釈注は非常にわかりやすく、読めます。万葉集についてはもう何回も読んでいるのですが、純文学的な観点から通読しているのはこの伊藤先生のものが初めてです。それだけ理解しやすいと思います。今までは犬養先生や橋本さんの旅や史跡と一緒に書かれているものを中心に読んでいたので、硬いかなと思われましたがそのようなことはありませんでした。2014/04/23