内容説明
みじめな境涯から、天下人にまで登りつめた豊臣秀吉のまわりにはいつも陽気で、にぎやかな気分が漂っていた。しかし、三好武蔵守吉房に嫁いだ秀吉の実姉ともは、そのはなやかさの陰で、豊臣家一族に流れている暗く残忍な血に気づいていた。秀吉の晩年の悩みはひとえに世継問題だったが、秀頼の誕生でともの長男で秀吉の養子である関白秀次の一族は根絶やしにされる。天下取りから滅亡まで、空前の栄華の一部始終を見とどけたともの目を通して豊臣家の栄光と悲惨を描く。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ナオデラ
8
杉本苑子らしい人物描写が繊細な作品。秀吉の姉ともの視点から父木下弥右エ門から受け継がれた秀吉、秀次、秀勝、秀保に現れる躁鬱な狂気の血。一代で興り一代で亡んだ豊臣の天下を別角度から抉り取った良作。既存の秀吉観を覆します。2015/07/09
ホームズ
6
秀保、秀勝、秀秋など秀吉の一族の狂気がすごかった。本当に全員狂っていたのかは疑問ですが、滅んだ一族にはそれなりの理由があるんでしょうね。やっぱり秀吉は好きになれませんが周りの一族には興味ありますね~(笑)2009/05/02
とと
1
一代で上りつめた豊臣秀吉の親族であるが故に分不相応な地位についた事で起きる不幸を読んで、分相応の生活が結局幸せなんだなと感じました。2021/01/16
sarara0904
1
大河ドラマを見て、再読。 秀吉の実姉から見た豊臣家の物語。関白秀次たち三兄弟の運命が、豊臣家の繁栄の陰で狂わされていくさまが描かれる。秀吉の持つ極端な性格が、亡き実父からの遺伝的なものではないかという説を採り、立志伝的な秀吉像とは異なる描写や解釈が興味深い。2016/07/10
さき
0
秀次切腹の場面は読むたびに泣いてしまう。血腥いのに清々しい。昇華。浄化。2017/11/30