内容説明
華やかな時代の影に隠れた厳しい現実を描く、巨匠ジェイムズ・リー・バークの初期長編。
著者等紹介
バーク,ジェイムズ・リー[バーク,ジェイムズリー] [Burke,James Lee]
1936‐。アメリカ、テキサス州ヒューストン生まれ。ミズーリ大学に学び、学士号と修士号を取得。その後、石油関連や報道関係、社会福祉関連の仕事に就き、1965年からの二年間はウィチタ州立大学で教師をしていた。ハードボイルド作家としての活躍が高く評価されており、『ブラック・チェリー・ブルース』(89)と『シマロン・ローズ』(97)でエドガー賞長編賞を受賞している他、Sunset Limited(98)でゴールド・ダガー賞、The Tin Roof Blowdown(2007)でガムシュー賞最優秀ミステリ賞を、それぞれ受賞。2009年には、アメリカ探偵作家クラブより巨匠賞を授与されている(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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harass
54
ミステリ作家の初期純文学長編。六〇年代、ケンタッキーの炭鉱街は長年の労働争議で疲弊し騒然としていた。貧しい少年の主人公はそんな街から飛び出すのだが、父親の瀕死の知らせを聞く。『ネオンレイン』で名を挙げる前の作品で、都合のよさなどのエンタメ要素が皆無でいろいろ考えてしまった。帯には復讐譚とあるが、少年には手掛かりもつかめるはずもない…… 息苦しいほどの未来がなく閉塞感が強い。読んでいる途中に、プロレタリア文学や米社会主義者の自然主義文学を連想してしまった。この作家の理想主義傾向を少し理解できた。2016/11/10
maja
15
人力から掘削機械に移り代わっていく時代のケンタッキー州東部山岳地帯の炭鉱を背景に、この地で生きる一家と少年が描かれる。この谷間の地で生計を立てる道は炭鉱以外では密造酒造りしかない。近代化の狭間に取り残されていく炭鉱労働者たち。親から受け継がれてきた気質のみで選択の余地の無い、前からやってくるものに、ただぶつかるしかない少年ペリ-の生きる道のりは厳しい。本書を読み終えて思うのは、他の作品を読み返すと前に受けた印象と違う何かに気づきそうな気がする。作家の無名時代の作品を読み終えてそんな気分になった。 2019/10/27