内容説明
スピノザの主著『エチカ』は万人の普遍的理解を求め、数学的明晰をめざしたいわゆる幾何学的形式で書かれている。だがその一般的概念を堅牢に積み重ねた形式的叙述は、事象の具体的な個別性の展開を阻んではいないか?スピノザの究極の意図が、われわれにおける最高の幸福の獲得という、明確に「個」を志向したものである以上、この疑問は放置できない―叙述の中に隠れた個別性をめぐって精細に読み解かれる、スピノザ哲学の中核的課題。
目次
序論 個別性の問題
第1章 観念と概念―スピノザによる形而上学批判の射程
第2章 「身体の観念」とは何か―『エチカ』の存在論的結構
第3章 人間の幾何学―関係性の一般理論のなかで
第4章 至上の喜びのありか―『エチカ』の到達点の解明
結論 概念と個別性
著者等紹介
朝倉友海[アサクラトモミ]
1975年生まれ。東京大学大学院人文社会系研究科博士課程修了、博士(文学)。現在、東京大学大学院人文社会系研究科助教。専攻は哲学(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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Bevel
5
「対象的—形相的」の区別が重要だとか、共通概念の部分でエチカの論述が循環しているとかの指摘はもっともだけれど、最終的な解釈はそれほど魅力的ではないと自分には感じた。具体例を持たない要請されただけの共通概念など、苦労して読んだだけにがっかり。ゲルー、ドゥルーズ、佐藤に関する批判も論拠が細かく断定的に見え、著者の解釈がどのようにまったく別の観点を提示しているのかはわからなかった。でも、著者は個別的な本質の直観知を自己に気づくという形ですでに得ているらしいので、良かったなという気分になってほっこりした。2014/07/04