出版社内容情報
株式仲買人の出身ながら社交界の寵児スワンは,ある日友人に最下層の粋筋(ココット)オデット・ド・クレシーを紹介される.追う女,追われる男の立場はいつしか逆転し,初老の男は年下の恋人への猜疑と嫌悪に悶える(スワンの恋).二人の結婚からジルベルトが誕生し,幼い
内容説明
社交界の寵児スワンと、粋筋の女オデット。追う女/追われる男の立場はいつしか逆転し、男は年下の恋人への猜疑と嫉妬に日夜悶える(スワンの恋)。ジルベルトは二人の娘、幼い「私」はシャンゼリゼで見たこの少女に思慕を捧げる(土地の名‐名)。―二つの恋の回想。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
starbro
191
★『失われた時を求めて』岩波文庫版全14巻完読プロジェクト、 https://bookmeter.com/users/512174/bookcases/11525156 今回は、第2巻『スワン家のほうへⅡ』、スワンの恋 in Parisでした。さいたま図書館と千代田図書館で各1名ずつ、完読プロジェクトの同志を発見して嬉しくなりました。続いて第3巻『花咲く乙女たちのかげにⅠ』へ。トータルの感想は、全14巻完読後に。 2020/01/31
lily
151
不安が愛を増幅させ、知性をも凌駕する感覚だけが到達できると思われる世界に触れたときの快感、世の中には2種類の人間しかいないんだ、心が広い人とそうでない人と信じ、嫉妬の矢が真実探求の情熱へ、容姿が一気に劣化しようとも変わらぬ情熱、倦怠感と自殺願望、恋に生きる歓び、虚無こそが真実、嫌われるより真実を訊いて憎しみを減量させたい欲、鎮まった苦痛が変形した苦痛を呼ぶ、そんな賢さ故に極限までの哲学的思考があらゆる矛盾を往復させる。そんな誠実さ、全力で恋に踠き賭けるスワンが愛おしく虜になる私がいた。悔しい程心掴まれた。2019/08/12
のっち♬
102
社交界の寵児スワンの粋筋の女オデットへの恋が主軸となる。気にも入らなければ好みでもない女に対する大恋愛を通して、恋がいかに主観的で、理想化した虚像に対するものであるかがまざまざと描かれている。音楽や絵画が絡んだ恋のきっかけにはじまり、恋の情念がもたらす様々な性格の変異、恋を継続させる「無数の継起する愛や、無数の相違なる嫉妬」など、恋愛心理の省察は実に仔細で丹念。著者の芸術に対する姿勢が随所に現れており、社交サロンでの人間の愚劣な生態への冷ややかな目線も印象的。「私」の純朴な恋の方は爽やかさが際立っている。2020/09/22
syaori
70
小品としても美しい「スワンの恋」。ボッティチェリのチッポラ、菊、ヴァントゥイユのソナタ、カトレア、嘘。スワンのなかでオデットのイメージは、何度も変化し修正され、そのたびに陶酔し苦しみ、それでも毒薬であり解毒剤でもある彼女から離れられないスワンに胸をかきむしられるような気持ちになるのですが、訳のせいかいつもより冷静にスワンとオデットの出会い、恋の始まりと、それが死んでいく様子、終わりをたどることができました。次の「土地の名ー土地」で、語り手とオデットとスワンの娘ジルベルトとのパリでの交流が描かれて以下次巻。2017/06/08
ケイトKATE
64
第2巻は主人公の“私”が生まれる前のユダヤ系ブルジョワのシャルル・スワンと粋筋の女オデットの恋愛模様が描かれる。ここでは、スワンがオデットを所有したいがために、自分の理想とするオデット像を作り上げてしまい、現実のオデットを見ずに気に障る言動や行動に嫉妬し苦悩する姿が滑稽で情けない。恋愛において、特に男性は女性に対して所有への欲望から、勝手な妄想を抱いてしまうことへ批判が伝わる。女性が同性に対する鋭い批判は多く見たが、男性であるプルーストの同性批判も本質を突いているので心が痛い。2021/08/05
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