出版社内容情報
蝶ではなく毛虫を愛し,服装,動作などことごとく伝統的習俗に反逆する「虫めづる姫君」など,平安後期の貴族生活の様々な断面を巧みに切り取った10篇の短篇と,数行の断章1篇からなる,洗練と機知の短篇物語集.
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
317
10篇の短編物語からなるが、篇中でもっとも個性が際立つのは抄出されることも多い「虫めづる姫君」だろう。現代でさえ女性たちの大半は(いや男性もそうかも)虫をあまり好まない。男の子たちでさえカブトムシやクワガタムシは好きでも、やはり「かは虫」(毛虫)は苦手だろう。ところが、この姫君はそれを「手のうらにそへふせて、まぼり給ふ」のである。「耳はさみ」(お行儀が悪く見苦しいと、たしか枕草子にあった)する姿などは活発そうで可愛いとさえ思うのだが、当然ながら王朝の美意識からは大きく逸脱している。そこがまたいいのだけど。2017/03/03
藤月はな(灯れ松明の火)
86
「花桜折る少将」の題名ってそういう意味なのね^^;でも「はいずみ」にしろ、オチには「男って本当に馬鹿だね~」とも思わんでもない(笑)有名な「虫愛ずる姫」はお洒落でもないが、蛇を好む自分としては姫の言動に頷く所と「うん、苦手なものもあるけど、私は好きだよ・・・」とちょっと寂しい所もあり。個人的には花の性質に因んで相手を評する事で花の香りや色合い、花びらの肌触りなども感じられるような知的な洒落が効いている「はなだの女御」と幻想小説的な「貝合」が好きです。2017/04/25
NAO
62
蝶は愛でるのにその前の姿である毛虫を嫌うのはおかしい、本来の姿を大事にせずお歯黒をしたり眉毛を抜くのはおかしいと合理的なことを理路整然と言うのに、古い慣習にとられた面も持つ「虫めづる姫君」。「貝合」の対照的な二人の姫君。「はいずみ」のしっとりした夫婦愛を描いたあとの、どたばた劇。『堤中納言物語』の作者は、相反する二つの事柄が生み出すおかしさが好きだったようだ。2017/03/20
tsu55
18
正確な成立年代も、編者も、題名の由来も不明な短編小説集。滑稽な話、それも、話の内容もさることながら、語り口の面白さに味わいのある話が多く、黙読するより、声に出して読んだほうが、本来の面白さが味わえりのではないかと思う。一番気に入ったのは、欲深な僧が山籠もりに必要な道具を女に要求するという内容の「よしなしごと」で、まるで語り物のようなリズムが楽しく、これに適当な「オチ」をつければ、落語になるんじゃないかな、などと思ったりした。2022/10/23
双海(ふたみ)
15
虫めづる姫君の可愛らしさといったら、ね?私、好きです。2014/04/13