第七講広 田 照 幸 選 教 室 に 現 れ る 未 来
『教育基本法を考える――心を法律で律すべきか』 市川昭午/教育開発研究所
著者は、中央教育審議会のメンバーとして教育基本法改正を審議する過程に居合わせた。審議のあり方がいかにずさんなものであったのかを明らかにしている。目配りのきいた議論で、教育基本法改正問題の全体像がよく理解できる。
『子ども・学校・社会――「豊かさ」のアイロニーのなかで』 藤田英典/東京大学出版会藤田英典の原点。現代社会論としても興味深い。
『市民社会と教育――新時代の教育改革・私案』 藤田英典/世織書房安易な改革に警鐘を鳴らす。私は感動した。
『大衆教育社会のゆくえ――学歴主義と平等神話の戦後史』苅谷剛彦/中公新書苅谷の大ヒット作。現代教育を考えるための基本図書。
『階層化日本と教育危機――不平等再生産から意欲格差社会(インセンティブ・ディバイド)へ』苅谷剛彦/有信堂高文社すぐれた実証研究。主張はクリア。
『ゆとり教育から個性浪費社会へ 』岩木秀夫/ちくま新書オヤジ的怒りがやや目につくが、いろんなことを考えさせられる。
『教育における分権と選択――学校・国家・市場』ジェフ・ウイッティ他 熊田聡子訳/学文社日本の改革がいずれ直面する問題にとって参考になる。
『多元化社会の公教育――新しいタイプの公立学校の創設と教育の公共性 』マイケル・アップル他/同時代社日本人著者とアップルら外国人との発想のズレが、今の日本を浮き彫りにする。
『未来形の教育――21世紀の教育を考える』 市川昭午/教育開発研究所教育の未来構想についての可能性を考えさせてくれる良書。
『教育基本法改正論批判――新自由主義・国家主義を越えて 』 大内裕和/白沢社後ろ向きの批判ではないのが買える。ただし、代案は出せていない。
『学校の現象学のために』 小浜逸郎/大和書房名著。私はかつて、この本を初めて読んだ時に、教育の見方が一変する衝撃を受けた。現場感覚で教育を語る教育論の分野において、議論の枠組みが変容する画期になった。今読んでも新鮮で、新しい発見がある。
『若者たちに何が起こっているのか』 中西新太郎/花伝社ステレオタイプ化された「若者論」とは一線を画す。若者を等身大でとらえ、そこに現代社会の問題を読みとる。改善に向けた案がやや抽象的なのが難点だが、「今どきの若者」が理解不能になっている人には一読を奨める。
『<非行少年>の消滅――個性神話と少年犯罪 』土井隆義/信山社出版常識を疑っていろいろ面白い指摘がある本。
『「個性」を煽られる子どもたち――親密圏の変容を考える』土井隆義/岩波ブックレット 薄いブックレットだけれど、重要な議論。今の子どもが気の毒になる。
『思春期の危機を生きる子どもたち 』中西新太郎/はるか書房
いい感性で若者をみている。
『青少年に有害!――子どもの「性」に怯える社会 』 ジュディス・レヴァイン 藤田真利子訳/河出書房新社
青少年に対するまなざしが、いかに危ない「了解」の上に成り立っているのかがわかる。他山の石にしたい。
『学校のエスノグラフィー――事例研究から見た高校教育の内側』古賀正義/嵯峨野書院
イメージで高校を語る乱暴さを排して、リアルにみていこう。
『少年犯罪の社会的構築――「山形マット死事件」迷宮の構図』北沢毅、片桐隆嗣/東洋館出版
「青少年事件」が社会的に作られていく過程と構造とがよくわかる。
『希望格差社会――「負け組」の絶望感が日本を引き裂く 』山田昌弘/筑摩書房
若者を取り巻く社会論として、データも豊富でわかりやすい。
『ひきこもり文化論』 斎藤環/紀伊國屋書店
引きこもり問題に対するバランスのとれた議論。
『親と教師が少し楽になる本――教育依存症を超える』 佐々木賢/北斗出版
この人の感性は信頼できる。
『メディアの教育学――「教育」の再定義のために 』今井康雄/東京大学出版会シロウトには難しい章もあるが、丁寧に読むと、現実感覚に溢れた議論が展開されていることがわかる。「教育すること」が難しい現代において、教育思想を原理的に組み立て直そうとするチャレンジングな本。
『道徳の伝達――モダンとポストモダンを超えて』 松下良平/日本図書センター今の世の中のほぼすべての「道徳教育論」は、本書で原理的な吟味を受けているといえる。道徳を教えることについて何かを言いたい人は、本書を読んで、自分の持っている信条の可能性や限界について、立ち止まって考えてみてほしい。
『他者の喪失から感受へ――近代の教育装置を超えて 』 田中智志/勁草書房
ポストモダン論からの教育思想の追求。私は異論あり。
『野性の教育をめざして――子どもの社会化から超社会化へ 』亀山佳明/新曜社
柔軟な思考の論文集。
『教育のパラドックス パラドックスの教育 』(絶版) 加野芳正、矢野智司編/東信堂
わかりやすくて、考えさせられる本。※出版社品切れのため入手できませんでした。ゴメンナサイ。古書店や図書館で探してみてください(じんぶんや)
『〈近代教育〉の社会理論』 森重雄、田中智志編著/勁草書房
社会学的な視点からの新しい教育思想への模索。
『教育不信と教育依存の時代』 広田照幸/紀伊國屋書店
教育不信の声が高唱される現代は、実は、教育に無限のパワーを期待する、教育依存の時代でもある。幻想に満ちた教育論の世界から抜け出して、教育の現実を直視してみよう――そんな思いに溢れた本である。
『日本人のしつけは衰退したか――「教育する家族」のゆくえ』 広田照幸/講談社現代新書
「家庭の教育力の低下」像を否定して、インパクトがあった。
『教育言説の歴史社会学』 広田照幸/名古屋大学出版会
教育の語られ方の問題を提起して、新たなジャンルを作った。
『教育には何ができないか――教育神話の解体と再生の試み』 広田照幸/春秋社
「教育の限界」を見きわめることで、可能性を再考。読みやすい。
『教育』 広田照幸/岩波書店(思考のフロンティア)
個人化・グローバル化が進む現代。そこにおける教育のあり方を模索。苦闘の記録。
『「理想の家族」はどこにあるのか?』 広田照幸編/教育開発研究所
過去を美化せず、現在を過度に憂えず、未来を悲観せず、家族を見つめる。
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