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三十五

文化系書店Life堂 vol.2

鈴木謙介氏エッセイ Life?
書籍版”Life” イベント告知
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●鈴木謙介氏エッセイ

 文化系書店Life堂 Vol.2「セカイ・TOKYO・新宿」へお越しの皆様

このブックフェアは、紀伊國屋書店「じんぶんや」と、TBSラジオで放送中の番組「文化系トークラジオ Life」とのコラボレーションで実現したものです。ブックフェアとうたってはいますが、パーソナリティ陣による選本だけでなく、CDも置いてあれば、リスナー製作の同人誌も置いてあって、なんだか悪ノリの過ぎたお祭りみたいになってます。

そもそも『Life』という番組が、あれもこれもと放り込まれた「文化的具材」のごった煮みたいなものだし、別にそれで構わないのですが、せっかく紀伊國屋書店という「権威ある」場所で、反権威的象徴闘争(笑)を仕掛けたのですから、この場を借りて、今回のLife堂のテーマ、そして「祝祭」の意味について書いておこうと思います。

世界を見渡すのが、本当に簡単になったなあと思います。小沢健二が『天気読み』で「星座から遠く離れていって景色が変わらなくなるなら/ねえ本当はなんか本当があるはず」と歌ったのは93年のこと。今では僕らは、Google Earthを使って、ずうっと遠くから、一気に「いまここ」までズームインすることができます。「セカイ」と「ここ」を等価に繋いでしまうテクノロジーは、おそらく僕らの欲望をもっとも的確に表現しているのだと思います。

「いまここ」から「セカイ」を見渡し、一気に「いまここ」へと回帰する。いまここを起点にしながら、外部からの訪れによっていまここを変化させるというダイナミズム。日本の思想界隈ではこの数年、外部性を持った「力」の強度と、そこから生じる革命の可能性が論じられています。そして、「失われた10年」の影響を強く受けた若い世代の論者が、いままた「政治の季節」の中心になろうとしています。

僕は、セカイの力で起きる革命ではなく、「いまここ」で起こる祝祭に、とびきりの美しさを感じます。なぜなら、それはひとりでは起こすことができないものだからです。今回のテーマの元ネタである『宇宙 東京 世田谷』(97年)に収められた名曲『Weather Report』でフィッシュマンズは、「風が吹き続けて いつもここにいるよ/だれかがいつもそばにいたはずさ」と歌っています。

セカイから訪れる圧倒的な力で、不遇な現状を否定すること、それによる革命を目指すのは大事なことです。けれど僕はそれでも、まず「いまここ」にいる「だれか」のことを考えていたい。そのだれかと手を繋ぐことで生まれる祝祭を、大切にしたい。『Life』という番組、そのリアル版である「Life堂」、それを作り上げてくれた人たち。僕はその全体をひとつの祝祭であると考えています。そして、その祝祭こそが、ほんとうの意味での「革命」を、「いまここ」にもたらしてくれるのだと。

ここに訪れてくれたあなたが、僕らの大きな「祭り」の輪に参加してくれれば、これ以上の喜びはありません。

【鈴木謙介】

Life?
80年代。バブルの波に乗って、たくさんの「大きな文化」が生まれた。
それは、バブルが崩壊した後の不景気の時代、90年代の後半まで続く
爆発力を持った「メガカルチャー」の時代だった。

一方、その大きなうねりの下で、別の流れも生まれていた。
何か「人とは違う生き方」を求める人たちが、アンダーグラウンドから
水面に顔を出そうと、必死でもがいていた。
その力が生んだのが「サブカルチャー」の時代だった。

けれど、「サブカルチャー」は、世の中に大きな文化が存在していないと、サブとしての役割を果たすことができない。
たくさんの人たちを惹きつけすぎたサブカルチャーは、いつの間にか、
自分自身が「大きな文化」になってしまった。

00年代の僕たちはいま、メガカルチャーからもサブカルチャーからも、
同じくらい離れたところにいて、その日の気分で、好きな方を選ぶことができる。
それはとても自由だし、素晴らしいことだと思う。
でも、結局のところ本当に好きなのはどっちなんだろう?

どっちも好き、と言えばそうだけど、
「本当に?」って訊かれると悩んでしまう。
多分その気持ちは、両方とも「ほんとう」。
でもそのことは言葉にはできない。
きっと僕たちは、「それとは違うんだ」って形でしか、自分のことを
表現できなくなってしまったんだと思う。

言ってみりゃそれは、メガカルチャーでもなくサブカルチャーでもなく、
いつも反転の像しか写さないネガの文化、「ネガカルチャー」。
否定形でしか語ることのできない「本心」であり、

好きと嫌いが、

冷静と熱狂が、

善と偽善が、

パクリとオリジナルが、

右と左が

矛盾なく同居する文化。

そんなシーンの中で、僕たちは自分の生活さえ、
コンピューターの向こう側でハックするようになって、
ログに残されたものばかり体験し、
バラバラになっていく自分自身をどこかで捉えきれないでいるんじゃないか。
My Life on the Screen.
それだけでいいんだろうか。

なんとも表現しづらい感情を言葉にするために、
僕たちはラジオという場所を選んだ。
答えはおろか、まだ問いかけすらできていない僕たちの「Life」を、
なんとかして表現したい。
そして同じような気持ちでいる人たちと、それが何なのか確かめたい。
それだけのために、色んなことについて話そうと思う。

カーテンを閉めた部屋の中で、

くたびれた最終電車の中で、

昼休みの屋上で、

この声を聴いてくれるなら、僕たちはとても嬉しい。

【文=鈴木謙介】

”文化系トークラジオ Life”(TBSラジオ)HPより転載
http://www.tbsradio.jp/life/about.html

●書籍版”Life”広告


文化系トークラジオLife 文化系トークラジオLife

著者:鈴木謙介、仲俣暁生、佐々木敦、柳瀬博一、斎藤哲也、森山裕之、津田大介
収録ゲスト:黒沢清、本田由紀、高原基彰、水越真紀
本の雑誌社
予価:1,900円+税
ページ数:288頁
判型:四六判・ソフトカバー・2〜3段組



■場所 紀伊國屋書店新宿本店 5Fカウンター前
■会期 2007年10月20日(土)〜11月20日(火)
■お問合せ 紀伊國屋書店新宿本店 03-3354-0131

● イベント ●
第91回新宿セミナー@Kinokuniya
『文化系トークラジオ Life』(本の雑誌社)刊行記念
"ポスト「失われた10年」に語るべきこと"

今、文化系界隈で話題のラジオ番組、「文化系トークラジオ Life」(TBSラジオ)の書籍版刊行(11月9日発売予定・本の雑誌社)を記念し、若手社会学者として注目されている鈴木謙介氏ら、番組パーソナリティ陣によるトークイベントを開催いたします。
「失われた10年」の精算が進みつつある今、そこで起きたこととは何だったのか、次の時代に向けて、私たちは何をテーマに据えるべきなのか、といったことについて、番組では扱いきれなかった論点も含め、縦横無尽に語り尽くします!

■出演予定:鈴木謙介(GLOCOM研究員・Lifeメインパーソナリティ)、仲俣暁生(編集者・文芸評論家)、佐々木敦(HEADZ代表・批評家)、柳瀬博一(編集者)、斎藤哲也(編集者・ライター)、森山裕之(雑誌編集者)、津田大介(IT・音楽ジャーナリスト)

■日時:2007年11月11日(日) 14:00開演(13:30開場)
■会場:新宿・紀伊國屋ホール(新宿本店4F)
■料金:1,000円(全席指定・税込)
■前売取扱:キノチケットカウンター(新宿本店5F/受付時間10:00〜18:30)
■予約・問い合わせ先:紀伊國屋ホール 03-3354-0141(受付時間 10:00〜18:30)
■主催:紀伊國屋書店
■協力:本の雑誌社
■後援:TBSラジオ&コミュニケーションズ

※当日は終演(16:00予定)後、サイン会を開催いたします。
※ご来場のお客様全員に、”TBSラジオLife×紀伊國屋書店じんぶんや”特製バッジ(イラスト 中村佑介)をプレゼントいたします。


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