紀伊國屋書店
HOMEENGLISH
紀伊國屋書店新宿本店
店頭在庫検索 

じんぶんや
じんぶんやとは? ↑ロゴをクリック↑
二 十 八

柴 辻 俊 六

史 実 と 小 説 と ド ラ マ の 狭 間


テーマをクリック! 関連書籍リストにリンクしています。
トップページ
柴辻俊六さんエッセイ
柴辻俊六さんの選ぶ本
歴史書懇話会
じんぶんやバックナンバー


柴辻俊六さんエッセイ

 今回、NHK大河ドラマ「風林火山」の時代考証を担当することとなった。原作は井上靖の同名小説であり、主人公は山本勘助である。原作は新潮文庫で280頁のものであって、その主文献は『甲陽軍鑑』である。勘助の生涯と同時代の信玄とその側室となった由布姫(諏訪御料人)を中心にまとめた小説である。時代的には勘助の生まれた明応9年(1500、異説もある)から、川中島の合戦で戦死する永禄四年(1561)までの69年間を扱った物であり、これを49回分のテレビドラマに編成し直している。

 第一回でいきなり川中島合戦のシーンが出てきた後、ついで天文4年(1535)8月の信玄の父信虎による今川氏輝との万沢合戦から始まる。勘助43歳の時であり、この時初めて勘助と甲斐との関係があったという設定である。これ以前の勘助については何も確実な史料がなく、生地についても駿河国富士郡山本と三河国牛久保説とがあって、学界では確定されていない。ドラマでは山本説を採っている。その後の進行に関しても、シナリオでは原作にはない勘助の今川義元・北条氏康・真田幸隆(綱)との接触が何回かにわたって挿入された後、ようやく12回に至って原作での勘助の武田家仕官へと入っていく。

 ことごと左様に『甲陽軍鑑』以外に参考資料がない人物だけに、その後の展開に関してもかなり事実とは掛け離れた「史実」が盛り込まれている。ただしこうした勘助の動きは別として、この時代の信玄・義元・氏康の関係した事件については、すでに明らかにされている史実が正確に盛り込まれている。中にはこれまで学界では必ずしも明らかではなかった真田幸隆の武田家仕官を天文15年(1546)4月の河越夜戦時における勘助の調略によって実現したといった新説も展開されている(23回)。これは今まで誰も言っていないことであるが、その可能性は高いと思われる。勘助に関しては『甲陽軍鑑』以外に確実な史料が皆無に近いだけに、創作の可能性はその後も限りなく広がっているが、信玄と関東戦国史という観点では史実が語られていく。

【柴辻俊六】


選者・柴辻俊六さん
選者・柴辻俊六さん【プロフィール】
1941年山梨県中巨摩郡龍王村に生まれる。
1970年早稲田大学大学院文学研究科博士課程終了
現在、山梨県史編纂専門委員、早稲田大学・法政大学・日本大学非常勤講師

【主要著書】
人物叢書 真田昌幸』(吉川弘文館)
甲斐武田一族』(新人物往来社)
戰國遺文・武田氏編 第6巻』(東京堂出版)
武田信玄合戦録』(角川書店)
信玄の戦略―組織、合戦、領国経営』(中央公論新社)


柴辻俊六さんの選ぶ本
武田信玄合戦録 武田信玄合戦録

柴辻俊六【著】
角川書店(2006-10-31出版)
ISBN:4047034037

武田信玄の侵略戦争の経過について、戦略と領国経営を関連付けつつ平易に記述している。

信玄の戦略―組織、合戦、領国経営 信玄の戦略―組織、合戦、領国経営

柴辻俊六【著】
中央公論新社(2006-11-25出版)
ISBN:4121018729

信玄戦略の虚像と実像について、典拠史料を示しながら、諸説の再検討をしている。

武田信玄(歴史文化ライブラリー) 武田信玄(歴史文化ライブラリー)

平山優【著】
吉川弘文館(2006-12-01出版)
ISBN:4642056211

信玄侵攻戦の概要を述べた後、内政と軍制に重点をおいて新見解を展開している。

戦史ドキュメント 川中島の戦い 『戦史ドキュメント 川中島の戦い<><>』

平山優【著】
学習研究社(2002-06-17出版(上)、2002-06-17出版(下))
ISBN:4059011266(上)、4059011347(下)

川中島合戦に至るまでの信玄・謙信の対立要因を父の代にまで遡って詳細に検討している。

武田信玄(人物叢書) 武田信玄(人物叢書)

奥野高広【著】
吉川弘文館(1985-12出版)
ISBN:4642050213

戦後初の本格的な信玄伝記。領国拡大経過と領国支配の要点をコンパクトにまとめている。

book 『定本武田信玄』(品切入手不可)

磯貝正義【著】
新人物往来社(1977-01出版)
ISBN:4404007876

甲斐源氏の発祥にまで遡って信玄に至るまでの武田氏を明らかにし、信玄の事績も詳細。

武田信玄―芳声天下に伝わり仁道寰中に鳴る 武田信玄―芳声天下に伝わり仁道寰中に鳴る

笹本正治【著】
ミネルヴァ書房(2005-11-10出版)
ISBN:4623045005

信玄の評伝として信玄の人間像の析出に重点を置く。統治者として戦争・政治に言及する。

戦国大名の日常生活―信虎・信玄・勝頼(講談社選書メチエ) 戦国大名の日常生活―信虎・信玄・勝頼(講談社選書メチエ)

笹本正治【著】
講談社(2000-05-10出版)
ISBN:4062581841

信玄を中心に大名の年中行事としての日常生活を主に、戦争・政治・家族ほかを検討する。

武田信玄を歩く(歴史文化ライブラリー) 武田信玄を歩く(歴史文化ライブラリー)

秋山敬【著】
吉川弘文館(2003-08-01出版)
ISBN:4642055606

歴史の旅と題して、信玄の関係した史跡を、街道に沿って地域ごとに解説している。

武田信玄像の謎(歴史文化ライブラリー) 武田信玄像の謎(歴史文化ライブラリー)

藤本正行【著】
吉川弘文館(2006-01-01出版)
ISBN:4642056068

これまで信玄像とされていた高野山成慶院蔵の像画を信玄ではないとして詳細に証明する。

真説・川中島合戦―封印された戦国最大の白兵戦 真説・川中島合戦―封印された戦国最大の白兵戦

三池純正【著】
洋泉社(2003-08-21出版)
ISBN:4896917529

永禄四年の川中島合戦のみに限定して、実地踏査により戦記類の記述を検討し直している。

山本勘助 山本勘助

上野晴朗【著】
新人物往来社(2006-07-10出版)
ISBN:4404032951

初めての本格的な山本勘助伝。『甲陽軍鑑』と実地踏査をもとに、勘助の生涯を詳述。

book 『武田信玄―知られざる実像』(品切入手不可)

小和田哲男【著】
講談社(1987-12-05出版)
ISBN:4062035952

信玄に関する簡便な通史。従来の諸説への疑問と新見解が示されている。

甲斐源氏と武田信玄 『甲斐源氏と武田信玄』(品切入手不可)

磯貝正義【著】
岩田書院(2002-03出版)
ISBN:4872942345

甲斐源氏と信玄、「甲州法度」・「生島足島起請文」の分析、民政と戦略ほかを検討している。

山本勘助のすべて 山本勘助のすべて

上野晴朗・萩原三雄【編】
新人物往来社(2006-12-15出版)
ISBN:4404034326

山本勘助に関する17本の論文・人名事典・年表・文献を収録。最新の成果による。

甲陽軍鑑 甲陽軍鑑

吉田豊【編訳】
徳間書店(1971-07出版)
ISBN:4192425653

『甲陽軍鑑』の一部の口語訳。重要事件に限定して抜粋し、口語訳と解題を付している。

戦国人名辞典 戦国人名辞典

戦国人名辞典編集委員会【編】
吉川弘文館(2006-01出版)
ISBN:4642013482

武田氏関係の人物も含めた、主に関東・中部地方の大名・家臣団の詳細な人名辞典。

武田信玄大事典 武田信玄大事典

柴辻俊六【著】
新人物往来社(2000-10-10出版)
ISBN:4404028741

信玄に関する事項別の辞典。通過儀礼・人名・地名・城館・合戦・遺跡・基本史料ほか。

戦国遺文 武田氏編 『戦国遺文 武田氏編』
<第1巻><第2巻><第3巻><第4巻><第5巻><第6巻>

柴辻俊六・黒田基樹【編】
東京堂出版
(2002-04-30出版(第1巻)、
2002-09出版(第2巻)、
2003-03-30出版(第3巻)、
2003-09-30出版(第4巻)、
2004-04-30出版(第5巻)、
2006-05-30出版(第6巻))
ISBN:4490305834(第1巻)、
4490305842(第2巻)、
4490305850(第3巻)、
4490305869(第4巻)、
4490305877(第5巻)、
4490306385(第6巻)

武田氏に関する編年文書集。全6巻に約4300の文書・銘文原文と、人名・地名索引。

book 『甲陽軍鑑大成』(品切入手不可)

第1巻 本文編 [上]
第2巻 本文編 [下]
第3巻 索引編
第4巻 研究編
第5巻 影印編 [上]
第6巻 影印編 [中]
第7巻 影印編 [下]

酒井憲二【編著】
汲古書院
(1994-04出版(第1巻)、
1994-08-15出版(第2巻)、
1994-12-23出版(第3巻)、
1995-01出版(第4巻)、
1997-10出版(第5巻)、
1997-12出版(第6巻)、
1998-01-15出版(第7巻))
ISBN:4762932981(第1巻)、
476293299X(第2巻)、
4762933287(第3巻)、
4762933295(第4巻)、
4762933929(第5巻)、
4762933937(第6巻)、
4762933945(第7巻)

最古写本による厳密な本文の校訂本。ほかに詳細な研究篇・索引篇を付し、全四巻。

歴史書懇話会
歴史書通信

1968年から歴史書の普及とその販売の推進を目的に活動しています。

「歴史書通信」(隔月刊)は会員社の新刊・重版案内、書店フェア情報等を掲載する情報誌で、歴史関連のエッセイも掲載し、歴史知識の普及を図っています。

紀伊國屋書店でも無料配布中。
歴史書懇話会サイトにはフェア等の案内をはじめ、各社の新刊案内、歴史書関連のメール通信を配信するメーリング登録の受付、「歴史書通信」PDF版を掲載しています。

http://www.hozokan.co.jp/rekikon/


■場所紀伊國屋書店新宿本店5階カウンター前
■会期 1月9日(火)〜1月末日
■お問合せ紀伊國屋書店新宿本店 5階売場 03-3354-0131 

※ 各書籍のリンクをクリックするとKinokuniya BookWebの詳細画面にジャンプします。


back
Copyright by KINOKUNIYA COMPANY LTD.