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二 十 五

あ た ら し い 、 詩 が は じ ま っ て い る
── 2 0 代 、 3 0 代 の 詩 人 た ち


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エッセイ:詩に、新しい時代がやって来た。
詩人たちの選ぶ3冊:
石田瑞穂選小笠原鳥類選キキダダマママキキ選久谷 雉選コマガネトモオ選斉藤 倫選杉本真維子選手塚敦史選永澤康太選藤原安紀子選三角みづ紀選水無田気流選
 
「現代詩手帖」とは
シリーズ「新しい詩人」第1弾、好評発売中!
シリーズ「新しい詩人」第2弾、9月末刊!
じんぶんやバックナンバー

石田瑞穂
選者:石田瑞穂さん己の言葉を贈与する機会とは、何か。詩人には予めすべてが封じられていて、ゆえに一切を書こうとする。赦しはない。われわれは「ここ」から逃れないことを知っているだけだ。読まれることは期待できず、残閃のまま閉じられていく不幸な作品もあろう。インクに孕まれる裸の未来は傷跡に見えるかもしれない。
ただ「新しい詩人」は、そのことにけっして盲目ではいないだろう。

1973年埼玉県生。99年現代詩手帖賞受賞。

田村隆一全詩集 田村隆一全詩集

田村隆一【著】
思潮社(2000-08-26出版)
ISBN:4783723125

50年以上、詩を書き続けた詩人の集成であるとともに、詩人と歩みをともにした戦前から今にいたる「現代詩」の集成でもある。「どんな詩も中断にすぎない/死は「完成」の放棄だ」という詩的思想をより多くの未知の読者に感じ取ってもらいたい。

生まれないために 生まれないために

キキダダマママキキ【著】
七月堂(2004-06出版)
ISBN:4879440663

今を、どう探すか。未来を、どう生きるか。「生まれないために」という幼年の言葉は、いつしか〈よく生き、よく死ぬため〉の逆説に充ちた祈祷へと変貌する。若手が若手にしか書けない第一詩集を刊行することの衝撃を申し分なく伝えた詩集。

ウィリアムズ詩集(海外詩文庫15) ウィリアムズ詩集(海外詩文庫15)

ウィリアム・カーロス・ウィリアムズ【著】、原成吉【訳編】
思潮社(2005-07-01出版)
ISBN:4783725144

「赤い手押し車」の新訳に目からうろこ。ベストの訳者、解説者が揃ったW.C.W.の訳詩集の傑作。ビート世代の庇護者であり、「事物を離れて観念はない」と歌ったアメリカ詩の巨人ウィリアムズ。その詩を読めば、きらめくばかりのアメリカン・シーンが読者の心にふりそそぐ。長詩「砂漠の音楽」は、ここ、今、の地獄の業火にとろけるコーラ瓶のミドリ色だ。


小笠原鳥類
選者:小笠原鳥類さん魚の皮膚のように、画面は金属の虹色に輝き、泳いで角度を変えると色彩が移ろう。いろいろな顔に似た、輪郭のあまりない形が、大量のウロコでできている金属の画面に次々に出現する。潜水してどこまでも――深海まで――、魚である映像機器を追いかける作業が、この一冊にまとめられた。実際には、夕暮れの犬の散歩でもあった。

1977年岩手県生。99年現代詩手帖賞受賞。2004年『素晴らしい海岸生物の観察』(思潮社、歴程新鋭賞受賞)。

ODEXVAG オーデクスバグ ODEXVAG オーデクスバグ

外山功雄【著】
新風舎(2005-04-25出版)
ISBN:4797457597

大量の情報を詰め込み、密度が過剰な新たな言語を発生させています。言語でもないのかもしれず、文字の一つ一つがリズミカルに粒立つ、言語以降の風景でしょうか。「寝文字も揉めれば海は煮あがる/なんでもよろしの潤沢にかえる」

twins twins

水嶋きょうこ【著】
思潮社(2006-03-15出版)
ISBN:478372122X

軟らかく崩れるような青白い水の、静かな水槽のような書物であると思います。大量の生き物が幻のように発生してくる場でもあります。「雨の日には黒い傘のような肉体の中で細胞たちがさわいでいる/水カビのおしゃべり 病む金魚」

N極とS極をムササビが移り飛ぶ夜に N極とS極をムササビが移り飛ぶ夜に

大澤武【著】
七月堂(2006-03出版)
ISBN:4879440884

大量の部品を組み合わせて未知な機能の驚くべき機械を作り上げているようです。意外に懐かしい歌のような部分もあります。「おっと、眠りと目覚めの断層にねむるなよ。走る閃光。/何ものだ、お前さんは。」


キキダダマママキキ
選者:キキダダマママキキさん誰もいなくなっても、私は対‐話者を手離すことがない。私という対‐話者を。私の貌は遂に終ることがないのだ。笑いは笑いによる。もう人との暮しは諦めた。これからは無数の精霊と暮して行くことにする。薄くぼんやりとした神だ。廃された神。カサカサの欲望が晒されている。常に風を。私はその姿を告げる者。

1979年愛媛県生。2004年『生まれないために』(七月堂、小野梓賞受賞)。

オーロラ抄 オーロラ抄

今井義行【著】
思潮社(2005-10-31出版)
ISBN:4783719993

「メール」「サウナ」「中華鍋」等、どうにも手がつけられない言葉を声色によって詩へと昇華させる驚くべき力量。今日の中原中也とは過言でない。「ほのかに煙たがられてく 声根の力の無さ」が彼の抒情の芯であり、読者は他人の自己愛に共感する奇跡的時間を得る。

十六夜のように 『十六夜のように』

竹内敏喜【著】
ミッドナイト・プレス

誠実に語ることを決心すれば、人にとっては饒舌でしかない場合があることも覚悟しなければならない。ただ誠実さを詩人が疑いためらった時「街道では 雲ばかりみあげるようになり/なぜか幾度も小銭をひろった」――、正直さの魅力。(語り口を自覚的に綻ばせえているのは最新詩集『ジャクリーヌの演奏を聴きながら』水仁舎)

世界の優しい無関心 世界の優しい無関心

倉田比羽子【著】
思潮社(2005-07-31出版)
ISBN:4783719845

「私という圧倒的な事実(虚無)」を自覚し、それでもなお詩を書かねばならぬ“詩人という難しさ”が全篇を一貫している。高踏と俗の間で起こる彼女の心の振幅を考えた時、詩人はやはり絶対的に、世間において異質でなければならぬのだ。


久谷雉
選者:久谷雉さん時代よりも半歩進んだものが人々に愛される、と述べたのはどこの国の小説家だったか。ニッポンの現代詩のことばは「半歩」の位置で踏みとどまるのがどうも苦手なようだ。二歩も三歩も先に行ったかと思えば、六歩や七歩もおくれをとっていたりする。しかし農夫や鳥のまなざしの届きにくい梢の先で熟してゆく果実というのもあるものだ――。

1984年埼玉県生。2003年『昼も夜も』(ミッドナイト・プレス、中原中也賞受賞)。

凪渡り及びその他の短篇 凪渡り及びその他の短篇

高浜寛【著】
河出書房新社(2006-03出版)
ISBN:4309728472

海から吹いてきた風に煽られてぼろぼろに衰弱した光が、高浜寛のマンガには濃密に封じ込められている。海を原風景に持たない人間の胸をも、柔らかに衝いてくる。そして、そんな光の中で悲喜劇に見舞われる男女の肉体もまた限りなく――懐かしい。

菅原克己全詩集 菅原克己全詩集

菅原克己【著】
西田書店(2003-03-31出版)
ISBN:488866367X

流れるものの中から生まれた言葉のいのちというのは意外にみじかい。あっという間にはるか彼方へ流されてしまう。しかし、菅原克己の言葉たちは政治運動という「流れ」の現場から紡ぎだされたものでさえ、今なお瑞々しさを失ってはいない。彼がかたく握りしめていたであろう何かは、ささやかでありながら、しかし読む者をあたたかく照らしてゆく。

続続・鮎川信夫詩集(現代詩文庫154) 続続・鮎川信夫詩集(現代詩文庫154)

鮎川信夫【著】
思潮社(1998-11-10出版)
ISBN:4783709238

詩をあるていど読んでいる人にさえも、最晩年の鮎川信夫の詩は薦め難いところがある。しかしわが国の現代詩の書き手の中で、こんなにも品格のある衰えをみせた人は他にいないのではないか。言葉がはげしく痩せてゆくこと、それ自体が「詩」になっている凄み。


コマガネトモオ
選者:コマガネトモオさん詩は読者にとっても個人的な経験に近い。孤立した夜に人知れず読むような存在であると思う。世界への違和感や孤立感を端緒として、詩に描かれるべきは読者諸氏それぞれの充足へ向かうそれぞれの枝、充足への系統樹であろう。私たちはもう柔らかい光の射し込みを単純に心地良いと思える充足へ、ようやく向かおうとしている。

1977年東京都生。2000年現代詩手帖賞受賞。

この世あるいは箱の人―高橋睦郎詩集 この世あるいは箱の人―高橋睦郎詩集

高橋睦郎【著】
思潮社(1998-03-31出版)
ISBN:4783710589

本書から同じ作者による『柵のむこう』(不識書院、2000)、さらに『恢復期』(書肆山田、2001)のラインには、存在の根源的な問いかけが展開される。抑制のきいた穏やかな筆遣いに私は震える。繊細であることとはつまり、かすかな声さえをも取りこぼさない厳しさであるのだと知る。

素晴らしい海岸生物の観察 素晴らしい海岸生物の観察

小笠原鳥類【著】
思潮社(2004-06-30出版)
ISBN:4783719306

ただ単に異界の博物誌なのではない。「……の観察」とまるで当事者でないような題名で、遠巻きをあえて表明しているのだが、実はこの祝祭の主役である著者の、優しさと厳しさとが紡ぎ出す物語が本当の主題であろう。「虹色脳油、ながれ」、サイコウ!

脳のなかの幽霊 脳のなかの幽霊

V.S.ラマチャンドラン/サンドラ・ブレイクスリー【著】、山下篤子【訳】
角川書店(1999-07-30出版)
ISBN:4047913200

症例が面白い。錯覚ゲームをつい友人とやりあってしまった。科学と文学と芸術とを自在に行き来するラマちゃんの博識に圧倒される。どこからが未解決なのかがきちんと示されているので、夢が膨らむ。


斉藤倫
選者:斉藤倫さん詩を書くのは、ふとんの中から、足先でシーツや毛布の乱れを直す感じに似ています。本当は外に出て整えればいいのになぜかそうしないんですね。横着なのか、それとも、とてつもなく寒いのか。もしかしたらふとんの外の世界なんかもともと存在しないのかも……そんな想像をしながら、今日ももぞもぞと書いています。

1969年秋田県生。2004年『手をふる 手をふる』(あざみ書房)、2005年『いぬはなく』(ヒヨコ舎)。

no picture 藤富保男詩集(現代詩文庫57)

藤富保男【著】
思潮社(1973-11出版)
ISBN:4783707561

いまでは手に入りにくい、詩集『正確な曖昧』や『魔法の家』が全篇収録されています。『8月の何か』や『魔法の家』は、ことばで起こしえたひとつの奇跡だと思えます。「へん」を追いこむことで「ふへん」をうみだす。それが奇跡でなくてなんでしょうか。

シャンプーリンス シャンプーリンス

佐内正史【著】
ソニー・マガジンズ(2002-10-04出版)
ISBN:4789719383

誰がなんといってもこれは詩集です。ぼくは読むたびに絶望します。写真家の詩に勝てない自分に。そしていろいろいいわけを考えます。コトバを超えた、外や内から、詩を生み出そうとがんばります。要は力をもらってるんですね、シャンプーリンスに。

ラインマーカーズ―The Best of Homura Hiroshi ラインマーカーズ―The Best of Homura Hiroshi

穂村弘【著】
小学館(2003-06-20出版)
ISBN:4093874492

ベスト・オブ・ホムラヒロシ。ってことはベスト・オブ・現代短歌。ぶっちゃけこんな安い本ってない。五万円くらいでもいいと思う。必読です。だって、たとえば「ごーふる」で示された問題に、ぼくらはまだ一度だって答えを出せていないのだから。

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