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十 八

杉 本 良 夫

海 外 に お け る 日 本 受 容


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杉本良夫さんエッセイ:「英語・地方人」も楽しからずや
杉本良夫さんの本
杉本良夫さんの選ぶ本(洋書)
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トランズ・パシフィック・プレス原本
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今回は、映画「SAYURI」の上映を好機に、「海外における日本受容とその克服」をテーマとして、オーストラリアのラトローブ大学教授杉本良夫先生に選書をして頂きました。杉本先生は、大学で教鞭をとる傍ら、トランズ・パシフィック・プレス(日本の人文・社会科学関係の学術書を英訳出版することを主な目的)という出版社を設立、精力的な活動をされています。洋書和書を交えた”優れた日本研究書籍”について選んでいただくとともに、出版社紹介を兼ねて刊行書籍を同時展開いたします。じんぶんや初の洋書和書のコラボレーションをお楽しみ下さい。

「英語・地方人」も楽しからずや
 日本人は英語が下手だ。そう長い間いわれてきた。この通説は神話になりつつある。海外で活躍するビジネスマンの世界を観察する限り、その英語力は相当なものだ。これには、いろいろな遠因がある。国境間を頻繁に移動する国際実務家層が発生してきたことが、そのひとつ。企業内教育や学校教育の変革もじわりと効いてきた。とくに若手には、有能な使い手が量産されている。10年ほど前を思い起こすと、昔日の感が深い。

 そんな中、日本語圏に暮らしながら、英語で書かれた日本分析の書籍を手にする人も増えてきた。英文で発表された日本観察書を、そのまま読みこなす実力が蓄えられている。書かれっぱなしではない。共感や批判を持って読破する読者層がある。海外の日本研究者が「日本」や「日本人」について、日本語以外の言語で、何を書いているのか。それを傍受する力が、さらに広がっていく兆しがある。

 英語で書かれた大量の日本書の中で、日本語に訳されているのはごく一握りだ。地道な社会科学の研究書が、翻訳されて日の目を見るのは、もっと少ない。ここに、ひとつのアンバランスがある。

 その逆はどうか。日本語で書かれた人文系の学術書は、ほとんど英語化されることがない。英語が世界の共通語である現状では、それは海外では全く知られていないのと同じことだ。

 すべての分野が、そうだというわけではない。日本発のマンガやアニメは、世界の若者文化に大きな影響を持つ。村上春樹や吉本ばなななど、若手の小説も、海外で人気が高い。国籍や地域を問わない共通の感覚が生まれているからだ。一方で、武士道、五輪の書など、異国趣味の世界も、根強い読者を持つ。理科系の重要論文は、ほとんど英語で発表されている。

 対照的に、人文・社会科学が日本国内に閉じこもっている。これは、もうひとつのより大きな不均衡である。文化に根ざす特殊概念の問題などがあるにしても、だからこそ、ますますグローバル・コミュニケーションに力を入れるべきではないかと思う。私が5年前に小さな英文学術出版社を、オーストラリアに設立したのは、そんな動機からである。

 英語が共通の言葉であるのは、世界の文化権力の偏在のせいである。もちろん、この現実は不公平だ。しかし、いまや英語の日常的使用者は、英語を母語としない人の方がネイティブ・スピーカーより多い。「英語帝国主義」論も、英語で書かれないと、世界各地に届かない時代である。

 英語国人は英語が世界の標準語であるおかげで、単一言語の中で暮らしている。一方、非英語圏に育った人々は、国際伝達の世界では二重言語生活者となる。東京育ちの人たちよりも、方言と東京語のバイリンガルである地方出身者の方が、言語生活は豊かであるのと同じように、日本語人も世界の地方人として、同じような豊かさを享受できると思う。その楽しみを使って、二つ以上の言語間の「受容」と「発信」の両方の幅を拡げたい。

【杉本良夫】

選者:杉本良夫さん
選者:杉本良夫さん1939年生まれ。社会学者。オーストラリア・メルボルンのラトローブ大学教授。京都大学を卒業後、毎日新聞記者を経て、アメリカ・ピッツバーグ大学に留学、6年間滞米。社会学博士号取得。1973年からラトローブ大学で教鞭を執り、在豪32年。

1980年代から日本人論や日本文化論の批判的論陣を張り、Images of Japanese Society (Kegan Paul International)、Constructs for Understanding Japan (Kegan Paul International) や『日本人論の方程式』(ちくま学術文庫)、『日本人論に関する12章』(ちくま学術文庫)などで、日本単一文化論批判や比較社会学のための多様性モデルを展開し、日本社会論のパラダイム転換に先駆的役割を果たした。反ナショナリズム・個人の多文化化の立場から書かれた『日本人をやめる方法』(ちくま文庫)、『「日本人」をやめられますか』(朝日文庫)などは広い読者を獲得した。これらの書籍は、日本の大学入学試験の試験問題にもよく使われている。多文化モデルに基づいた概説書 An Introduction to Japanese Society (Cambridge University Press) は英語圏での日本社会論の標準的テキストとして知られる。

日本の新聞・雑誌などへの寄稿の他、NHKラジオ第一放送「ラジオ深夜便」の「ワールドネットワーク」のコーナーで、10年間にわたって隔週、オーストラリア便りを放送している。『オーストラリア―多文化社会の選択』(岩波新書)など、オーストラリア関係の著作も多い。

2000年にメルボルンで英文学術出版社 Trans Pacific Press を設立。同社の代表として、日本の人文社会科学の業績を翻訳・校閲して英語で世界に発信するプロジェクトを開始した。これまでおよそ50巻の発行に関わってきている。

杉本良夫さんの本
book 日本人論の方程式

杉本良夫、ロス・マウア【著】
筑摩書房(1995-01出版)
ISBN:4480081798

日本人をやめる方法 日本人をやめる方法

杉本良夫【著】
ほんの木(1990-10-10出版)
ISBN:4938568144

オーストラリア―多文化社会の選択 オーストラリア―多文化社会の選択

杉本良夫【著】
岩波書店(2000-07-19出版)
ISBN:4004306825

An Introduction to Japanese Society (Contemporary Japanese Society) An Introduction to Japanese Society (Contemporary Japanese Society)

Sugimoto, Yoshio
Cambridge Univ Pr(Published 2003-01)
ISBN:0521529255

■場所紀伊國屋書店新宿本店5階カウンター前
■会期2月1日(水)〜2月28日(火)
■お問合せ紀伊國屋書店新宿本店 5階売場 03-3354-0131 

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