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十 七

小 和 田 哲 男

戦 国 時 代 を 読 む ・ 見 る ・ 学 ぶ
―― 「 功 名 が 辻 」 時 代 考 証 者 が 選 ぶ 2 0 点


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小和田哲男さんエッセイ「私が武将の苗字の読み方にこだわるわけ」
小和田哲男さんの選ぶ20冊
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今回は新春にちなんで、NHK大河ドラマ「功名が辻」の時代考証責任者である小和田哲男氏に選書をしていただきました。題して、「戦国時代を読む・見る・学ぶ −「功名が辻」時代考証者が選ぶ20点」。選者の小和田哲男氏は、戦国時代研究の第一人者として知られ、吉川弘文館の新刊『戦国人名辞典』の編集もされています。「じんぶんや」としてはこちらを真骨頂として捉え、刊行にあわせ戦国時代に関する良質な専門書籍を集めたフェアも同時開催いたします。


私が武将の苗字の読み方にこだわるわけ
 今年のNHK大河ドラマは司馬遼太郎原作の「功名が辻」である。信長、秀吉、家康と、いわゆる天下取りの三英傑などといわれる三人に仕えた山内一豊とその妻千代が主人公である。

 私はそのドラマの時代考証を担当している。1996年の「秀吉」のとき以来なので、ちょうど10年ぶりということになる。

 ところで、その山内一豊、ふつうは「やまのうちかずとよ」といわれている。しかし、今年のドラマでは「やまうち」である。なぜ「やまのうち」ではなく「やまうち」なのか。

 理由はいくつかあるが、当時の平仮名書きの文書に「やまうちつしま殿」とあるのが決定打といってよい。ほかに、山内家が江戸時代、幕府に提出した家譜にも「やまうち」とあるし、一豊の子孫の方から「うちは、やまうちです」といっているのを聞いているのでまちがいない。

 私が、武将の苗字の読み方にこだわるようになったのは、大学院生のころ、近江の浅井氏の研究をやっていたときにさかのぼる。浅井亮政・久政・長政の戦国大名浅井氏三代であるが、私も、それまでは、世間一般で発音しているように「あさい」といっていた。ところが、地元では、誰もが皆「あざい」と濁って発音するのである。

 はじめのうち、「あざい」に違和感というか抵抗があり、「あさい」といっていたが、何となく、地元の人に疎外されているような印象があった。ところが、私が「あざい」と発音したとたん、地元の人が私を温かく迎えてくれるような気がしたのである。ただ、そのような気がしたというだけだったのかもしれないが、「あざい」と発音する地元の人の中に溶け込むことができたのはたしかである。

 以来、武将の苗字はもちろん、地名についても、地元での発音を重視するようにしている。たとえば、やはり、近江出身で、のちには出雲の戦国大名となった尼子氏は、ふつうは「あまこ」だが、地元では「あまご」と発音しているし、伊豆の堀越公方も、ふつうは「ほりこし」であるが、地元では「ほりごえ」で、私が書く本では、できるだけ地元での発音に従うようにしている。

 ただ、そうはいっても、全部が全部そうしているわけではない。あの織田氏は、地元での発音は「おた」なのである。「おだ」を「おた」に変えるだけの勇気はまだない。

【小和田哲男】

選者:小和田哲男[おわだ・てつお]
選者:小和田哲男さん1944年静岡市に生まれる
1972年早稲田大学大学院文学研究科博士課程修了
現在、静岡大学教育学部教授、静岡大学附属図書館長、文学博士
主要著書:
『後北条氏研究』(吉川弘文館)
今川義元』(ミネルヴァ書房)
『近江浅井氏の研究』(清文堂出版)
小和田哲男著作集』全7巻(清文堂出版)
歴史探索入門』(角川書店)

歴史書懇話会
〒113-0033 東京都文京区本郷7-2-8 吉川弘文館内

歴史書懇話会1968年から歴史書の普及とその販売の推進を目的に活動しています。

「歴史書通信」(隔月刊)は会員社の新刊・重版案内、書店フェア情報等を掲載する情報誌で、歴史関連のエッセイも掲載し、歴史知識の普及を図っています。紀伊國屋書店でも無料配布中!

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現在の会員社は青木書店明石書店・校倉書房・大月書店学生社柏書房京都大学学術出版会思文閣出版東京大学出版会東京堂出版刀水書房同成社塙書房法藏館山川出版社吉川弘文館の16社です。

2006年NHK大河ドラマ「功名が辻」
功名が辻 功名が辻第45回を数える今年のNHK大河ドラマでは、司馬遼太郎原作の「功名が辻」を1年間放送します(第1回「桶狭間」1月8日20時より放送)。
戦国時代に「内助の功」で夫・山内一豊を励まし続けた妻・千代を中心に描かれます。
◇夫婦の「出世物語」――
千代と一豊の愛を通じて戦国時代を描くという新しい切り口。
愚直で不器用、父を失い放浪の身の青年、山内一豊。そんな彼は、信長、秀吉、家康と主君を代えながら、戦国時代を生き抜き、ついには土佐24万石の大名にまで上り詰めたが、その出世の裏には、常に明るい性格の妻、千代の愛と励ましがありました。
◇脚本担当――大石静
◇山内一豊――上川隆也
◇千代――――仲間由紀恵

[ 番組企画意図 ]
戦国時代にも例えられるほど激しい現代の競争社会。日々生き残ることに疲れた人々にとって、もっとも必要なものは何でしょうか。「癒し」という言葉がはやって久しいですが、今、最も必要なものは、「人々の心に響く本当の励まし」なのではないでしょうか。

この大河ドラマは、司馬遼太郎「功名が辻」を原作に、「励ますこと」に特別の才能をもった山内一豊の妻・千代と、「愚直」という真心ひとつで戦国の終わりまで駆け抜けた夫・一豊の愛と知恵の歴史を描きます。

状況を読みぬく知恵、人の心をつかむ知恵、そして自分の正義を貫く知恵。それらを支える夫婦の愛。「妻の智恵」と「仕える側の目線」という視点から、戦国時代を新しく描き直します。

(*http://www.nhk.or.jp/taiga/ 「企画意図」よりそのまま引用)

山内一豊は、司馬遼太郎作歴史小説「功名が辻」なくしては、ほとんど世に知られることはなかったであろう人物です。大河ドラマに決定したことで、やっと何点かの専門研究書が出版され始めた経緯があるほど。ドラマが原作本「功名が辻」に忠実に沿った形で展開され、よりフィクション性の強いものになることは安易に想像されます。

そこで、いかにその時代設定に説得性を持たせるかが鍵となり、力量を問われるところなのですが、その時代考証責任を請け負っているのがまさに小和田先生です。「戦国時代を読む・見る・学ぶ」というタイトルのもと、「大河」だけでは分らない、戦国時代関連の書籍について専門家の目でピックアップ、ドラマを”きっかけ”として、その時代の歴史に関心を持ち、より深く探求していくことができるための書籍を選んでいただきました。

【じんぶんや・敏】

乱世を生きた4200名の人間像がよみがえる
戦国人名事典 このたび吉川弘文館では『戦国人名辞典』を刊行しました。この辞典の特徴は著名な戦国大名や武将だけでなく、家臣や商人、農民、僧侶、番匠(大工)、絵師、医師、女性たちなどを激動の時代を生きた数多くの人びとを取り上げたことだろうと思います。その数4200名…!史料的制約などから東国と呼ばれる地域が対象となっていますが、まさに歴史を動かしたのは一人の英雄ではなく、歴史の闇に埋もれてきた多くの人びとであったことが、この大部の人名辞典を読み進むと実感できるはずです。

 戦国時代は、極めて流動性の高い社会でした、天下人となった豊臣秀吉(『戦国人名辞典』では羽柴秀吉として立項されています)は百姓の子でした。『功名が辻』の主人公山内一豊も織田信長と戦い討ち死にした尾張の小領主の三男坊でした。この時代はだれもがひょんなきっかけで立身出世する可能性を持っていました。一方では『戦国人名辞典』には「戦死」と言う言葉が多く登場するのも事実です。乱世を前向き生きた個性の強い人々の姿を、私たちはこの辞典の中から発見することが出来ます。それは展望の見えにくい現代を生きる私たちに、一つの可能性を示唆してくれているのかもしれません。歴史学は生きています。その最新の成果に触れてください。

【吉川弘文館・横井真木雄】

■場所紀伊國屋書店新宿本店5階カウンター前
■会期1月4日(水)〜1月31日(火)
■お問合せ紀伊國屋書店新宿本店 5階売場 03-3354-0131 

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