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「日本史講座 全10巻完結によせて」
歴史学研究会と日本史研究会との共同編集による日本史の講座は、今回が4回目となる。1回目は1956〜57年の『日本歴史講座』全8巻、2回目は1970〜71年の『講座日本史』全10巻、3回目は1984〜85年の『講座日本歴史』全13巻、そして2004〜05年の『日本史講座』全10巻となる。講座が目指すところのひとつである「科学的歴史学の構築」という目標は50年にわたり受けつがれてきた。
しかし、なにもかもが50年前のものを踏襲しているわけではない。たとえば、かつては「日本史」は日本という自明の対象をもつように考えられていたが、いまではそのように考えている研究者はいない(と、思う)。これまた以前はあたりまえのように使われていた「社会構成体」「階級闘争」という概念が分析においてもっとも有効なものかどうか、見直されているのも確かだろう。
ただ、社会を総体的に、多元的につかみとろうとする姿勢は引き継がれ、戦後歴史学が重ねてきた模索は批判的にかつ確実に継承されてきた。 今回の講座の「編集方針」のなかに「関連諸学との協同のもとに、多様な資料から最大限かつ正確に歴史情報を探り出すための方法論の構築に寄与する」という一文がある。本シリーズは「講座」という性格から、新たな方法を詳細な実証とともに提示する、ということはできないのだが、前講座刊行以来、ますます広がってきた歴史資料の裾野を見通し、それらを検討することで新たに何がみえてくるか(みえてきたか)は十分に示せたのではないか。
前講座刊行から本講座刊行までの20年は、歴史学はさまざまな方向から大きく揺すぶられ、一方で、いろいろな資料を「史料」としていく方法の研鑽が重ねられた時期ではなかったかと思う。最新の成果にもとづく歴史像は実際に『日本史講座』のページを開いてみていただきたい。ここでは、戦後歴史学はどのように揺すぶられながらも自らを鍛えていったか、またそのなかでどのような手法が磨かれてきたか、考えてゆく手がかりとなる本を紹介していきたい。
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選者:東京大学出版会編集部
東京大学出版会は、1951年3月、ときの東京大学総長、南原繁先生の発意により全学教官有志の協賛を得て、日本の国立大学では初めての大学出版部として設立されました。小会は「大学に於ける研究とその成果の発表を助成するとともに、広く一般書、学術書の刊行により学問の普及、学術の振興を図る」(設立趣意書)ために、みなさまのご支援をいただきながら、出版活動を続けております。 小会は財団法人という独立した組織です。東京大学との密接な関係を保ちつつ、創造的で清新な学術研究の成果を、多くの読者を見すえて、学術書、教科書、教養書・一般書という形で、出版しております。出版分野は文学・語学から医学・薬学におよぶすべての学問分野に対応し、総刊行点数は5900点以上(2005年7月現在)になります。
(財団法人 東京大学出版会) |
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■日本史講座 全10巻
現代世界の流動的な状況を正面からうけとめて、 いま「日本史」学がとりくむべき課題を大胆に提起する。
歴史学研究会・日本史研究会共同編集 『日本史講座』 全10巻完結
◆様々な世界・地域との連関において、「日本史」を多元的に把握する。 ◆大きく社会が転換した時期に注目、現代が直面する諸問題の由来と解決の道筋を歴史の中に探る。 ◆多様な資料から最大限かつ正確に歴史情報を探り出すためのあらたな方法を追求する。 ◆現代世界と向き合う歴史学が創造する「これからの日本史」。
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