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私は出版する
なぜ宮台真司さんと北田暁大さんに語ってもらったのか。それは、宮台さんがこれまでの仕事で、時代の気分や特徴を、幅広く、的確に、乾いた目線で語ってきたからだ。一方の北田さんは、宮台さんとは微妙にスタンスを変えながら、やはり時代の気分や特徴を、乾いた語り口で記述し続けている。
年齢でいうと、宮台さんは1959年生まれの45歳で、北田さんは1971年生まれの34歳。宮台さんがこれからも第一線で活躍するであろうことは、いまさら確認する必要はあるまい。といいつつ、北田さんには宮台さんに取って代わる新しい風となって、停滞する日本の言説空間に風穴をあけほしい、と私は強く願っている。
『限界の思考』という本には、「空虚な時代を生き抜くための社会学」というサブタイトルがついている。とはいえ、そのサブタイトルを一枚めくってみると、そこには「宮台真司から北田暁大へ」というもうひとつのタイトルが浮かびあがる。宮台さんは決して終わっていないものの、そろそろポスト宮台が登場してもいい時期なのではないか、と私は考えていた。それは誰なのだろうと考え抜いた結果、北田さんの名前が浮かんできた。
双風舎は、小難しい理論書を出すつもりはない。歴史に残る理論書の刊行は、知の生産活動には必要不可欠なことであるが、それはゆとりのある老舗出版社に任せておけばよい。みずからが学んだ難解な理論を、かみ砕いて一般の人びとに説明し、社会に還元できて、なおかつ(言い方が悪いかもしれないが)時代に添い寝できるような著者とともに、本をつくっていけたらいいなあ、と私は思っている。
いまの世の中が、空虚で実りのないことを認めつつ、それでもどうにかならないのかなあ、と考え続ける人たちがいる。それが、双風舎の執筆陣の特徴なのかもしれない。それが、姜尚中さんであり、宮台さんや仲正昌樹さん、丸川哲史さん、そして北田さんなのだと思う。たえず大手の出版社から執筆のオファーが来そうな著者の方がたに、どうしようもない零細出版社が相手をしてもらっているだけでも幸せだと思う。くわえて、本まで出してもらっているのだから、バチがあたりそうだ。 |
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◎選者:谷川茂[たにがわ・しげる]
1964年、東京生まれ。 高卒で鉄道会社に就職。その後、日雇い労働や公務員、出版社の仕事に従事しながら、夜間大学にかよう。1990年にカンボジアへ渡航して、旅行会社経営やテレビのリサーチ稼業で学資を稼ぎつつ、大学院で経済を学び、現地でポルポト時代の研究をすすめる。2002年に帰国して、教育史料出版会の代表に。2003年9月にひとり出版社の双風舎を設立。設立からの1年は、資金繰りが読めずに、たくさん本を出しすぎてコケた。しかし、2年目からは復調。 |
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『限界の思考
〜空虚な時代を生き抜くための社会学〜』
宮台真司・北田暁大【著】(税込1,890円)
人間は壊れているのでしょうか? 不透明で強迫的な社会。参照項なき不自由な時代。 中身のない専門知が飛び交うネット空間。 現代思想が限界に達するこの時代に、 社会学はその限界を克服する方法を示すことができるのか? 気鋭の社会学者が徹底討論。
現代思想は死にました。とはいえ、歴史そのものを記述することは、現状を打開する処方箋にはならないものの、現状を治療する効果があると私は信じています。 さらに、専門知への信仰をうまく操縦することも、合わせて実践していきたい。 -----北田暁大
私はアイロニーの空転に抗おうとしています。抗うために歴史を召還しようとしています。 そして私には2ちゃんねる的なものが、けっして軽くは見えないし、楽にも見えません。 とても重く見えます。 だから、その重さをどうやって中和したらよいのか、ということを考えています。 -----宮台真司
第一章から第三章は、書店でのトークセッションの記録。 第四章と附録は、語り下ろし。 附録では、リラックスした雰囲気でふたりの本音トークが炸裂!
○7月末発売予定 当店で予約受付中です! 双風舎谷川さんの紹介する副読本を読んで、発売を待ちましょう。(じんぶんや) |
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双風舎は、2003年10月に活動をはじめた新しい出版社です。 社名は、宮台真司さんにつけてもらったとのこと。 思想・社会・メディア・教育など、人文系のジャンルを中心に、ひとりでも多くの読者に読んでいただけるような良書を出版しています。
http://homepage3.nifty.com/sofusha/
双風舎の谷川さんが、出版業界と社会を斬るブログ「双風亭日乗」もよろしく! (じんぶんや) http://d.hatena.ne.jp/lelele/ |