日
中 戦 争 ・ 戦 争 責 任 |
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| 『南京事件−虐殺≠フ構造』
秦郁彦【著】 中央公論社(1986-02-25出版) ISBN:4121007956
1937年12月、南京で起こった日本軍による虐殺事件について、これまでの研究が中国側の証言や主張で組み立てられてきたとの批判に立って、日本側史料も含めた分析を通じ、もっぱら「そのとき南京で何が起こったのか」を明らかにしようとするもの。本書は当時大変話題になったが、著者の意図を離れ、犠牲者が30万人か4万人か、という点に議論が矮小化していった嫌いがある。 |
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| 『戦争責任』
家永三郎【著】 岩波書店(2002-01出版) ISBN:4006030509
4半世紀にわたる教科書裁判で著名な研究者による、日本の戦争責任を論じた古典。 同じ著者に、『太平洋戦争』(岩波書店、1986年)、『一歴史学者の歩み』(岩波文庫、2003年)
、教科書裁判関係で、家永教科書裁判訴訟弁護団編集の『家永教科書裁判―三二年にわたる弁護団活動の総括』(日本評論社、1998年)などがある。
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| 『キメラ−満州国の肖像』
山室信一【著】 中央公論新社
(2004-07-25出版) ISBN:4121911385
「理想国」どころか、実は、頭が獅子、胴が羊、尾が龍の「怪物キメラ」だった、として「満州国」をその国家理念、統治機構の実態、そこに生きた普通の庶民などから新しく照射した好著。
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『侮らず、干渉せず、平伏さず−石橋湛山の対中国外交論』
増田弘【著】 草思社(1993-06-25出版) ISBN:4794205104
戦前はジャーナリスト、戦後の一時期は首相として独自の対中国政策を主張し続けた石橋湛山の時論や公式発言を集め、分析したもの。「優越感と劣等感が交錯する日本人の中国観に欠落していのものはなにか」という著者の問いも、石橋の独自の対中姿勢も、今日、貴重である。
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| 『戦争責任・戦後責任−日本とドイツはどう違うか』
粟屋憲太郎ほか【著】/ 朝日新聞社(1994-07-25出版) ISBN:4022596066
日本とドイツ。侵略した近隣諸国への謝罪と補償はどのようになされてきたか。田中宏、広渡清吾、山口定など現代史、日本アジア関係史、法律学、政治学の第一人者が「過去の克服」問題に挑戦している。
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| 『南京事件』
笠原十九司【著】 岩波書店(1997-11-20出版)/岩波新書、1997年 ISBN:4004305306
秦版『南京事件』から10年、事件後60年をへて出た本書は、東京裁判、南京軍事法廷などでの詳細な証言、その後出てきた中日の史料、さらに欧米人の当時の記録などを渉猟して、南京事件を再現している。同じ著者の『南京事件と三光作戦−未来に生かす戦争の記憶』(大月書店、1999年)は、戦後50周年に日本政府と国民が、「過去の清算」をおこない、アジア諸国民との「和解」を達成しようとした動きがあったのに、その機会を逸してしまった理由を分析し、南京事件と三光作戦を事例に「過ちの歴史」から学ぶことの大切さを述べている。
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| 『戦争を記憶する−広島・ホロコーストと現在』
藤原帰一【著】 講談社(2001-02-20出版) ISBN:4061495402
原爆投下や南京虐殺の正当性・非正当性を論議することだけでなく、戦争のとらえ方や覚え方が、それぞれの社会の歴史的・社会的経験と記憶に支えられており、したがって政府間の合意よりも、一歩踏み込んだ、「異なる社会の間での和解と赦し」へと深めていくことが必要、という本書のメッセージは、大変に貴重である。 |
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| 『昭和天皇<上><下>』
ハーバート・P・ビックス【著】、吉田裕【監修】、岡部牧夫・川島高峰【訳】 講談社(2002-07-30出版<上>、2002-11出版<下>) ISBN:406210590X<上>、4062105918<下>
日本で通常イメージされている、平和主義者、受け身の立憲君主説を完全に否定し、「昭和時代におきた重要な政治的・軍事的事件の多くに積極的に関わり指導的役割を果たした」昭和天皇を描くことで、日本の20世紀を再検討している。著者はハーバード大学出身の歴史学者。2001年まで一橋大学大学院教授、現在はニューヨーク州立大学ピンガムトン校教授。原書は2001年に書かれ、ビュリッツァ賞受賞。 |
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| 『戦争の日本近現代史―東大式レッスン!征韓論から太平洋戦争まで』
加藤陽子【著】 講談社(2002-03-20出版) ISBN:4061495992
なぜロシアが「文明の敵」と見なされたのか、なぜ日中・太平洋戦争は拡大したのか、など、「歴史のなぜ」に答える形式で、読みやすく、研究に裏付けられたしっかりした入門書。日本とアジアの近代史をまず知るには最良の啓蒙書。
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| 『日本人の戦争観――戦後史のなかの変容』
吉田裕【著】 岩波書店(2005-02-16出版) ISBN:4006031076
一億総懺悔論、大東亜戦争肯定論、そして戦後50年国会決議などなど。政治家・知識人の発言や文献、さらに戦記物まで使用してその言説を検証し、戦争責任について、日本では内外を分けたダブル・スタンダードが通用してきたことを鋭く描き出している。
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| 『靖国問題』
高橋哲哉【著】 筑摩書房(2005-04-10出版) ISBN:4480062327
総理の靖国神社参拝が理由で日中の首脳往来が3年以上途絶えている。「たかが靖国」とは言っていられない。日中歴史問題のシンボルとして極端に政治化してしまったテーマに、別の切り口から哲学、思想の専門家が迫る。同じ著者のものに、『戦後責任論』(講談社、1999年)などがある。
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戦
後 補 償 問 題 |
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| 『日本賠償論』
岡野鑑記【著】 東洋経済新報社(1958年出版) 絶版
サンフランシスコ講和条約時の対日賠償問題、戦後ビルマ、フィリピン、インドネシアなどとの賠償交渉を実証的に解明している。下敷きになっているのは、第一次大戦後の対独賠償問題である。戦後賠償にかんする実証的な古典的著作だと言えよう。 |
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| 『総説・賠償・終戦処理
昭和財政史――終戦から講和まで 第1巻』
大蔵省財政史室【編】 東洋経済新報社(1984-05出版) ISBN:4492810315
敗戦からサンフランシスコ講和にいたる7年間の財政金融行政を実証的に分析するとともに、当時の最大の課題−賠償など戦後処理プロセスを解明した貴重な戦後史資料。 |
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『外交フォーラム 1992年10月号』
都市出版/朱建栄「中国はなぜ賠償を放棄したか――政策決定過程と国民への説得」
毛沢東・周恩来は1972年の国交正常化時に賠償請求をなぜ放棄したのか。国際政治、国内政治の文脈から要領よく分析したもの。新事実も明らかにしている。 |
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『戦後補償の論理−被害者の声をどう聞くか』
高木健一【著】 れんが書房新社(1994-08-31出版) ISBN:4846201554
日本の戦後処理は何だったのか、サハリンの朝鮮人、韓国の原爆被害者、朝鮮人の従軍慰安婦などの戦後補償をもとめる具体的な運動や主張を紹介している。筆者は当時、戦後補償国際フォーラム実行委員会の代表。 |
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| 『戦後補償とは何か』
朝日新聞社戦後補償問題取材班【著】 朝日新聞社(1999-09-01出版) ISBN:4022612711
戦後50年、国内外の戦争被害者たちの補償を求める声が後を絶たない。補償要求の内容、日本政府の対応、アジア・欧米諸国の実情などを報告する。戦後補償問題の入門書。 |
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| 『戦争犯罪とは何か』
藤田久一【著】 岩波書店(1995-03-20出版) ISBN:400430380X 絶版
国際法学者が、戦争の変化と戦争犯罪観の変容、ニュルンブルグ裁判と極東裁判の比較などを通じて、新しい時代に「国際刑事裁判所」の試みを提言している。 |
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『中日戦争賠償問題−中国国民政府の戦時・戦後対日政策を中心に』
殷燕軍【著】 御茶の水書房(1996-10-25出版) ISBN:4275016394
日本と中国(国民政府)間の賠償交渉を関係諸国の外交文書などにもとづいて実証的に分析した、この分野でほとんど唯一の研究成果。中国人留学生のそれなりのメッセージが伝わる。 |
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『日本の戦後賠償――アジア経済協力の出発』
永野慎一郎・近藤正臣【編】 勁草書房(1999-11-15出版) ISBN:432650174X
戦後日本のアジアへの賠償が経済協力とセットになっていたことから、両者の関係を分析、またそれがアジアの経済建設にどう貢献したのかを検証している。インドネシア、フィリピン、マレーシア、シンガポールなどほぼ全体がカバーされており、便利である。 |
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| 『共同研究−中国戦後補償:
歴史・法・裁判』
奥田安弘・川島真【編】 [世界人権問題叢書] 明石書店(2000-02-29出版) ISBN:4750312517
行政法、国際法、国際私法、中国法、裁判執務など、さまざまな側面から、戦後補償について学問的かつ具体的に検討したもの。 |
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| 『戦争・復興・発展−昭和政治史における権力と構想』
北岡伸一・御厨貴【編】 東京大学出版会(2000-04-19出版) ISBN:4130301195
北岡伸一「賠償問題の政治力学(1945−59年)」がとくに戦後初期(国民政府、中華人民共国を含めて)の賠償をめぐる日中関係を分析している。
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| 『戦後補償から考える日本とアジア』
内海愛子【著】 山川出版社(2002-01-25出版) ISBN:4634546809
アジアの戦争被害者からは多くの訴えが出ているが、本書は、裁判で問われた問題点をまとめ、主に「被害者」の声を伝えようとしている。戦後補償についての平易な入門書。
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戦
後 の 日 中 関 係 、 日 本 外 交 |
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| 『日中関係
1945-1990』
田中明彦【著】 東京大学出版会(1991-04-25出版) ISBN:4130020641 絶版
国際政治の立場からみて、日本でもっとも標準的なテキスト。戦後から国交正常化まで日中関係を規定したのが冷戦という国際環境、日米関係だったというのが筆者の基本的主張である。80年代後半からの「成熟の時代」にもさまざまな不安定が続くという著者の見通しはある意味で正しかった。また付章で、日本の対中政策決定過程を分析しているのも本書の特色である。 |
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| 『中国人の日本観』
アレン・S・ホワイティング【著】、岡部達味【訳】 岩波書店(2000-03出版) ISBN:4006000138
対外関係には事実よりもイメージが大事と考える、米国の中国研究の大御所が、中国の新聞雑誌などを丹念に調べ、歴史問題、経済関係、日本の太平洋での役割などについて、中国人の日本観を分析している。 |
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『日本外交と中国1945-1972』
添谷芳秀【著】 慶応通信(1995-05-10出版) ISBN:4766405986
日中関係を戦後、60年代、国交正常化交渉の3つに分けて、日本の国内政治経済、米国の対中・対日政策のコンテキストで分析する。著者のスタンスは、対中関係がつねに国際関係に規定されてきたというもので、緻密でアカデミックな研究であるが、原典史料が格段に多くなり、論点も増えてきた今日の視点からすると、いささか物足りないところもある。 |
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『アジアのなかの日本と中国』
増田弘・波多野澄雄【編】 山川出版社(1995-10-25出版) ISBN:4634610302
日中の政治・経済・文化関係・歴史問題や中国外交だけでなく、日中関係の米・ソ・東南アジア・朝鮮半島などとの関わりも考慮に入れ、多面的に分析する。巻末の日中関係文献目録、年表が便利。 |
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『戦後保守のアジア観』
若宮啓文【著】 朝日新聞社(1995-11-25出版) ISBN:4022596414
日本人は隣人アジアとどう向き合うのか。 過去をめぐって繰り返される妄言と謝罪。その裏にある近代日本のゆがんだアジア像。吉田茂、岸信介など保守政治家の言動を通じて、日韓交渉、日中国交交渉などを検証する。 |
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| 『中国人の歴史観』
劉傑【著】/文春新書、1999年 文芸春秋(1999-12-20出版) ISBN:416660077X
「天朝大国時代への郷愁」と先進列強への抵抗と憧憬、また抑圧されてきた「屈辱の歴史」観などの相克に苦しんできた中国の人々。いまや、「5000年の文明と百年の屈辱」という固定観念から脱し、「新しい精神的源泉」を作り出さねばならない、とアピールする。中国出身の若手歴史学者による、バランスのとれた、また優れた時代感覚をもつ書物である。 |
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| 『戦後日本の中国政策−1950年代東アジアの国際政治の文脈』
陳肇斌【著】 東京大学出版会(2000-07-20出版) ISBN:413036099X
日本に留学した若い中国人研究者の成果。手堅い実証分析となっている。 |
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『日本にできることは何か−東アジア共同体を提案する』
森嶋通夫【著】/岩波書店、2001年 岩波書店(2001-10-23出版) ISBN:4000242059
1997年中国の南開大学での講義シリーズ。著者は長らくロンドン大学教授をつとめた経済学者。日中関係のプラス、マイナス面をトータルに議論しながら、中国とのあるべき関係を提示している。また、EUの経験をふまえて、柔らかな東アジア共同体の設立をいち早く提唱して注目を浴びた。 |
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| 『日中関係の管見と見証』
張香山【著】、鈴木英司【訳・構成】 三和書籍(2002-09-29出版) ISBN:4916037472
中日友好協会の責任者、日中関係史の“生き証人“として活躍した人の回想録。1950年代から90年代に至る中国の対日政策の基本構想や決定過程について確度の高い情報を提供してくれる。なお、『人民中国』日本語版の編集者、のちに中国文化省次官にもなった劉徳有の回想録『時は流れて−日中関係秘史50年』<上><下>、(藤原書店、2002年)もある。 |
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| 『中国の対外戦略』
岡部達味【著】 東京大学出版会(2002-11-21出版) ISBN:4130301276
1950年代から半世紀にわたる現代中国外交についてのほとんど唯一の読みやすい研究書。 対外観の変化を論じ、実は中国が古典的なリアリストの対外認識をもち、外交を展開してきた、というのが基調になっている。
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| 『中国とどう付き合うか』
天児慧【著】 日本放送出版協会(2003-10-30出版) ISBN:4140019840
日中関係についてジャーナリズムで積極的に発言している筆者の体験的論考。相互誤解の減少、理性的関係の構築、共通利益と意識の創造など、日中の「付き合い三原則」を提案している。
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| 『中日関係に対する戦略的新思考』
時殷弘【著】、中国通信社【訳】 日本僑報社(2004-01出版) ISBN:493149076X
著者は中国人民大学の国際政治の研究者。米国との対抗、台湾問題の解決のためには、歴の問題を棚上げにしてでも日中関係を重視する「戦略思考」が大事だと提起した。本書および馬立誠(もと『人民日報』編集者)の『「反日」からの脱却』(中央公論新社、2003年)は、対日政策について中国で初めての大規模な論戦を読んだ。本書は少数派の観点である。なお、金熙徳・林政波『日中“新思考“とは何か
- 馬立誠・時殷弘論文への批判』(日本僑報社、2003年)は、時殷弘、馬立誠にたいして激しく反論している。こちらが中国ではむしろ主流派だろう。 |
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| 『中国のインターネットにおける対日言論分析
- 理論と実証との模索』
祁景N【著】 日本僑報社(2004-08出版) ISBN:4931490786
中国人留学生の東大での修士論文をまとめたもの。中国社会最大の変化であるインターネットを使った対日言論を分析している。今日ではネット人口は1億を超え、利用者の圧倒的多数は若者である。この4月の反日デモでも顕著なように、いまやインターネットは世論形成を左右するようになっているが、その事情についてもっとも体系的なもの。
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| 『日本の東アジア構想
- 現代東アジアと日本<1>』
添谷芳秀、田所昌幸【編】 慶応義塾大学出版会(2004-02-25出版) ISBN:4766410416
冷戦後東アジアにおける日本のあり方について、政治、経済、安全保障、文化の各面から論述したものを編集したものだが、そのうちとくに、波多野澄雄「“歴史和解“への道標――戦後日本外交における“歴史問題“」 が日中の歴史的和解のための提言――「無名戦士の墓」、戦後補償に関わる被害の実態調査の立法化など――を行っている。
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| 『日中関係をどう構築するか――アジアの共生と協力をめざして』
毛里和子・張蘊嶺【編】 岩波書店(2004-03-25出版) ISBN:4000242237
日中の国際関係の研究者10名ずつが組織して作った「21世紀のアジアを考える日中研究者フォーラム」の3年間の共同作業の成果。天児慧、五百旗頭真、山本吉宣、王逸舟、楊伯江など日中の論客が今後の日中関係を論じている。
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