内容説明
享保十三年、久留米藩領井上村。大庄屋、高松家の長男である甚八と次男の庄十郎は、父に連れられて訪れた善導寺で、何千と集まる人々の姿を目の当たりにする。「ようく見とけ。これが百姓の力ぞ」。藩主から言い渡された増税に抗議して集まる群衆。あわや一揆かと思われたそのとき、あるお達しが下り――。九州の田舎で飢餓と圧政に苦しむ百姓のために医者を志した少年の成長を描く歴史巨編。
目次
宝暦四年(一七五四)霊鷲寺
第一章 年貢改め
第二章 疱瘡
第三章 飢餓
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ゴンゾウ@新潮部
96
久留米藩の大庄屋の次男の庄十郎が飢饉と圧政に苦しむ農民達の姿を見る。そして身づから疱瘡にかかりいに救われる。その経験から貧しい農民のために医師を志す。序盤は圧政と闘う農民達の描写が多くなかなか物語が進まず苦労したが医師を志す辺りからは読みやすくなった。題名はとても意味深いものでした。【ナツイチ 2017】2018/03/17
naoっぴ
80
これが日本人の原点なのかという思いで読んでいます。物語は久留米藩の大庄屋の次男として生まれた庄十郎が医師として成長していく話だが、上納米や旱魃・洪水・虫害に生きて行くだけで大変な百姓たちの暮らしが細やかに描かれ、藩を支える米作りの大変さがよくわかる。日乞い雨乞いの儀式や祭など自然と調和して生きる市井の人々の姿に日本人のルーツが見える。表題の「天に星地に花人に慈愛」との言葉が読むうちに染みてくる。病気と飢餓がすぐ隣にある暮らしの中、庄十郎の思いを心に感じながら下巻へ。2018/01/12
扉のこちら側
72
2018年197冊め。大庄屋の次男が医師の篤い看病で一命をとりとめたことを機に医学の道を志していく。冒頭で彼とは対照的な様子の長男の話が出たが、道を分かたれた兄弟はどうなっていくのだろうか。圧政と戦う農民たちが物語の鍵になるようである。2018/06/20
のぶ
71
江戸時代の久留米藩。主人公は大庄屋の次男、庄一郎。まだ上巻を読む限りだが、多くの農民に囲まれて生活していた。年貢の取り立ては苦しいが、天候不順も続き米の収穫も思うようにはならない。再三の交渉で、僅かに納める量を減免してもらったりしているが、決して生活は楽ではない。一揆を回避すべく奔走する姿も描かれ、読んでいて物語にのめり込んでいた。ある時期から集落に疱瘡が流行り始め、庄一郎は苦しむ百姓のために医者を志すようになる。下巻で庄一郎がどんな成長を遂げるのか?感想は下巻で。2018/03/11
てつ
40
ようやく月日が流れ始める。下巻へ。2018/12/09