内容説明
六浦賀将軍は、先の大戦でアメリカが勝利した改変歴史世界を舞台とする違法ゲーム「USA」を開発し、アメリカ人抵抗組織がゲリラ戦に勝利する方法を示したという。石村は心ならずも、片腕にガンアームを装着することになった槻野とともに将軍を捜索するはめに。二人は優秀だが毒舌なメカ操縦者、久地樂の助けを得て、地下ゲーム競技会へ、荒廃した流刑島へ、そして石村の過去へと旅することになるが……。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
海猫
153
カバーイラストで想起するほどロボ活劇小説ではなく、ディストピア要素の強い作品ではあったがそう読んでもなんだかスッキリしない。上巻では味のあった歪んだグロテスクな描写が、下巻になると風刺や倒錯的興味を通り過ぎて単純に悪趣味に思えてくる。ガジェットに溢れていてはいるが厚みのない世界観もちょっと気になる。こういうダウナーな雰囲気を味わう作品だと考えればけっこう面白かった気もするが、本を手にした時の期待感とはまったく違う手触りの内容だったしなー。あとやたら荒っぽい関西弁が炸裂しまくるところは高揚した。2016/12/03
KAZOO
125
後半も結構活動的な感じでSFというよりも異世界のミステリーのような感じを受けました。将軍あるいは特高や憲兵といった人物が出てくるのは昔の日本のようなのですが、実際はこの主人公の生い立ちが重要であったということなのですね。読んでいて冲方さんのマルドゥック・スクランブルを読んでいるような感じも受けました。上下巻の表紙に書いてああるような大きなロボットがあまり出てこない気がしました。2018/02/23
Shintaro
74
ピーター・トライアス初読みですが面白かったです。もちろん彼の精神的師匠のPKDのほうが文学的深みと哲学的考察は勝っている。一方トライアスはギークなエンタメとハリウッド的映像美で一日の長がある。白ワインか赤ワインか、肉か魚か、結論から言うと僕は両方楽しんじゃう主義です。両方食べてフルコースでしょ(そして今の体型)。石村と槻野のキャラが立っているし、エンタメ作品であるにもかかわらずエピローグでは不覚にも泣けた。映画化されるんじゃないですかね。そしてオリジナルへのリスペクト、ディック愛を感じながら再読しようか。2017/01/15
HANA
62
想像してたより地味。ディストピア小説独特の追う者追われる者の構造になってるのだが、そこに当てはまる絶対的な権力がどうも不在なため、読んでいて間の抜けたような気分になる。追われている緊迫感の欠如というか。とある勝負にしても、どうも淡々と進んでこちらも緊迫感に欠ける。楽しみにしてたロボにしても、これあまり出す意味無いような。読み進めるにつれて、ああディックって偉大だったんだな。以上の感想は出てきませんでした。真相についてもこないだ読んだ『ファーザーランド』の方が……。帯の煽り文句で期待しすぎたのかなあ。2016/11/30
ゆかーん
59
全ては皇国のため。その為になら命を投げ出すことも辞さない世界。USJ=日本合衆国では、皮肉にも『USA』という電卓ゲームの人気により、アメリカの自由と勇気に憧れるユートピア的ビジョンが横行します。皇国側は、そのゲームの開発者である、六浦賀を暗殺しようとしますが、本当の犯人は別にいました。真犯人を追いかけた結果見えてくる、ゲーム開発の真の意図に驚かされました!権力を武器に支配する皇国への怒りが、今回の『USA』制作に繋がっていたとは…。複雑に絡み合う人間同士の陰謀にゾクゾクさせられました!2017/07/15