内容説明
晋の内乱が鎮静し、重耳の弟夷吾(いご)が素早く君主に納まったが、軽佻不徳に人心は集まらず、重耳の帰国が切望された。刺客の魔手を逃れながら、飢えと屈辱の、19年1万里の流浪の末、ついに重耳は晋を再建し、やがて中国全土の覇者となった。──春秋随一の名君を描く、芸術選奨文部大臣賞受賞の名作。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
あさひ@WAKABA NO MIDORI TO...
108
重耳、上中下巻読了。ちょっと前に読んだ晏氏に続き、中国の遥か春秋時代への旅を終えたような心持ち。上巻の中華の覇権を求めた戦争の場面、中巻の晋国内における政治の場面、そして下巻の祖国を離れ延々と中国全土を放浪した外交、国際戦略の場面。供に大きなスケールで楽しませてくれる。重耳その人のと言うよりも、彼を巡る様々な人々を巻き込んだエンタメ作品と言えそう。宮城谷さんの中国もの、そのボリュームを負担と感じることなく、最後まで充実した読書の時間を楽しむことができました。2020/07/23
KAZOO
82
重耳がやっと下巻で活躍というか存在感がある感じになってきます。放浪のたびの後に弟が先に王位に就きますが、民意が就いてこずに短命に終わりやっと重耳が晋の王になります。人柄で周りに多くの人が集まります。19年の放浪のあとで9年は短いのですが存在感が合ったということなのでしょう。宮城谷さんの最初のほうの作品なので歴史的な記述が多く勉強になりました。2015/06/28
糜竺(びじく)
49
19年の流浪の末に、中国全土の覇者となった重耳の話でした。重厚で深く最後は爽やかでした。引用「夷吾の言葉を聞いていると、人を忌み嫌ったり、人と争って勝とうとする気が旺盛です。国を安定させるのは難しいでしょう」「還暦を間近にして、壮意を発揮し始めた重耳は、いかにも大器晩成であるが、人は生まれもった性情だけではどうにもならず、それに知識が加わり、さらに世事に洗われ、天地の象が溶け込んでくるようになって、初めて人格をなす。重耳に覇気を生じさせたのは、旅である、と言いきってもよい。旅において人を見、天地を見た」2017/02/07
Book & Travel
47
下巻は19年の彷徨の物語。多くの困難の末、晋に帰還し王となる重耳。器が大きく、多くの人物に慕われ支えられるが、完成された人というわけではない。それだけに有能な臣たちの支えや自らの経験から多くのことを学んでゆく。そして読んでいるほうも重耳と一緒に学んでいるような感覚になるのである。そう感じるのは、作者のこの時代の人物と文化・風習への相当な知識の蓄積が物語の裏に感じられるからだろう。歴史小説の醍醐味を存分に味わえ、読み終えてとても満ち足りた気分になった。宮城谷作品の凄さを感じられた作品でもあった。2017/04/23
akira
17
重耳下巻。 混迷を極める重耳の運命。ただ静かで欲がない。遠慮というもので構成されたような人間の物語がここまで面白くなる。物語は鮮やかさだけではないのだと教えられた。 理屈ではありえないことがある。英雄の出現は基本的にはそうだろう。数奇な流浪の旅を続けた一人の物語。それはなかなかに興味深かった。 「天啓がある」2019/04/21