内容説明
「試写室を出ると夕闇がたちこめている。すぐさま、京橋の〔与志乃〕へ行く。」──60代の池波正太郎が「週刊文春」に連載した“正太郎絵日記”。著者直筆のイラストとともに、映画や演劇、愛用の万年筆に帽子、食日記や酒、旅行のことなど、洒脱な文章で穏やかな老熟の日々が綴られる。何げない日常が、まるで小さな物語のようにも感じられるショート・エッセイと、それを彩る絵筆の妙とを二つ一緒に楽しめる、趣き深い画文集。
目次
夏去りぬ
ブニュエル監督の遺作
某月某日
オランダの裃
煙草
某月某日
万年筆
ガンジー首相の星
シモネ老人の指輪
永倉新八と映画〔ほか〕
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
金吾
23
楽な感じで読めるエッセイです。池波さんの食、芸術、生活等に関する考えに触れれます。子供時代の「秘密」「名刺」がお気に入りです。2024/02/13
加納恭史
13
やっと札幌の猛暑も過ぎたか。ほっとする。鬼平犯科帳が気になって、報恩と人情が深いと感心する。そこでこのエセーを読む。池波正太郎の脚本家の世界や人生をどう捕らえているか。なかなか鋭い眼力である。大正生まれだから秩序にも序列にも義理・人情にも深い共感がある。世の中に科学が進歩したが、反面失ったものも大きいと言う。タバコは普及したがその香りは失われた。新撰組の永倉新八は生き残ったが、映画の世の中にはびっくりしたと言う。池波正太郎は世界の映画の作品の研究も相当だ。大正時代から人は帽子をかぶった。当時は安全のため。2025/07/31
ハチ
11
池波エッセイ。酒、芸術、フランス、暮らし…。粋と信念が何気ない文章から滲み出てい、ゆっくりした読書時間を味わえる。挿絵もかわいく、オシャレだ。 夜明けにブランデーを。カッコ良いな。2019/09/22
さいたまのたぬき
6
タイトルの夜明けのブランデーは1話目より。 長年夜中に仕事をしていた池波さんの 晩年の仕事スタイルからの話である。 当時の人としては当たり前なのだが 池波さんは煙草をよく吸う人で そのころ始まった嫌煙運動との話など 自分の意見をどうしても突き通さないといけない人が 増えた気がすると書かれていたのが印象的。 そしてそういったことに配慮するようになって 世の中がよくなるかというとそうでもないと 書いているあたりになんだか今の世の中にも当てはまるなと 思ったりしながら読んでいました。 2014/11/17
陽@宇宙望遠鏡⭐︎星と宇宙とロケットが好き
6
初、池波正太郎。鬼平途中でこっちを先に。何故か自分の祖父を思い出す。煙草の嗜み方や、帽子をいつも被るのは礼節でも有り素敵な慣習だったのね。思い出が蘇り、二重に嬉しく。喪われつつある美しい慣習を続けている池波氏に惚れます。女中や黒白(こくびゃく)等の呼び名、石鹸や封筒の使い方などに胸が甘酸っぱくなるのです。三島由紀夫も好んだ「田中冬二」作品を探して読んでみます。この作家を勧めて下さった方には、改めてお礼を申し上げます。有難うございます。2013/09/15