内容説明
芸術院の会員の座を狙う日本画家の室生は、選挙の投票権を持つ現会員らに対し、露骨な接待攻勢に出る。いっぽう、ライバルの稲山は、周囲の期待に応えるために不本意ながら選挙戦に身を投じる。会員の座を射止めるのは果たしてどちらなのか。金と名誉にまみれ、派閥抗争の巣と化した“伏魔殿”日本画壇の清と濁を描き、その現実の姿に迫った問題作。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
巨峰
48
黒川さんが直木賞を受賞したので急遽2刷目が刊行された(1刷目は2007年)こんな面白い作品がほとんど読まれずに眠っていたなんて。。。日本の美術界の最高峰日本芸術学院の選挙は億単位の金が乱れ飛ぶ金権選挙だった。野望に燃える日本画家界の一流画家とそれに取り入る中堅画家、参謀となる老画廊店主。登場人物はけして清らかではないけどたまらなく魅力的だ。2014/08/06
keiトモニ
47
登場人物多数過ぎで、混乱すると思ったものの本筋と関係ないな。にしても腰巾着の大津芸術大学准教授大村祥三。好色ぶりには呆れるな。玲子…“私は室生と加賀に利用されたん?…結果的にはな…ビールを呷り、私明日、室生さんに会う!…そんなアホな”☚だから言わんこっちゃない、大村先生よ。アホかお前は、ええ歳こいて、いつまで女性臀部を追っかけてるねん。女性は開き直ったら怖いで!色魔山尾ぐらいにしとき。しかし美千絵の夫斎木誠一郎、美術文藝音楽演劇スポーツ等に興味も関心もなく、麻雀好きで明るい性格で酒飲み。☚こんな人大好き。2018/02/17
ピロ麻呂
38
日本画壇学芸会員の権力闘争を描く作品。いつものヤクザものではないので、読むのに時間がかかった(^_^;)いろんな分野のいろんな協会でも、きっと政治とカネが絡む裏の世界があるんやろなぁ…実力より、資金力や政治力のある人がトップになっていく。それが組織なのかも。2019/01/03
リキヨシオ
34
日本画壇界の権力の象徴である「芸術院会員」を目指す芸術家が繰り広げる選挙戦の内幕は億単位の札束が飛び交う票取り合戦。この業界で出世して権力を手にする為の選挙工作…読んでいて「あの業界でもこんな事が…」と裏工作と同じものを感じて辟易しながらも、画家、画廊、画塾、公募団体など様々な思惑が複雑に絡み合う画壇界の現状を知る事ができて、絵を描いて食べていく事の大変さも理解できた。芸術院会員になるには年齢的に最後の機会…出世欲の強い大物日本画家の室井と弟子の大村、そして選挙参謀になった殿馬…それぞれの選挙戦が始まる!2016/10/30
UK
28
芸術院の会員の座を狙う、日本画壇の権力争いの裏側をみっしりと緻密に描く。どこま現実を反映しているのかわからないが、すごく真に迫っていて面白い。しかしこれは悲しい図だこと。絵が好き、絵が上手いというだけでは生活もできず、権力闘争に溺れていく。後書きに「とりあえず文学賞では500円玉も飛ばない」とあってほっとする。このミスだの本屋大賞がお金で動いたらとっても寂しいものね。黒川さん、凄いや。まだまだ追いかけてみたい。 2016/04/02