文春文庫<br> 又蔵の火

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文春文庫
又蔵の火

  • 著者名:藤沢周平【著】
  • 価格 ¥628(本体¥571)
  • 文藝春秋(2012/05発売)
  • ポイント 5pt (実際に付与されるポイントはご注文内容確認画面でご確認下さい)
  • ISBN:9784167192402

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内容説明

脱藩の果て、一族の面汚しとして死んだ放蕩者の兄。その兄にも三分の理があると信じ、一心不乱に剣の精進を重ね、理不尽ともいえる仇討ちを甥に挑む又蔵。鮮烈かつ哀切極まる決闘場面の感動が語り継がれる表題作の他、島帰りの男と彼を慕う娘との束の間の幸せを描いた「割れた月」など全5篇収録。「主人公たちは、いずれも暗い宿命のようなものに背中を押されて生き、あるいは死ぬ」(「あとがき」より)。“負のロマン”と賛された初期名品集。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

ケンイチミズバ

120
逆恨みで降りかかる理不尽な殺生。斬りかかられ刃を振り払っただけに過ぎないのに。脱藩した者がおめおめと金策のため舞い戻るのがいけない。兄の復讐に燃える炎をふつふつと絶やすことなく剣を修錬した弟は時代がとうに刀から学問になっているのに顔も知らない、しかも遠縁にあたる親戚ではないか、叔父に仇討ちを告げる。私なら逃げる。説得しても無駄ならそれが正しい道だ。恥もクソもない命あってのこと。が、武士のDNAが卑怯者と言われ、立ち止まることをさせた。虚しいほどに滑稽な命のやり取り。プライドが許さないは現代にも通じるが。2019/12/02

じいじ

96
50作目の藤沢小説だが、読むほどに人間の温かさ、人肌のぬくもりを感じて、ますます彼の小説が好きになっていきます。さて今作、初期の中編5作品を収載。氏があとがきで、「5篇どれもが暗さが基調になっている」と述べているが、藤沢さんらしい謙遜で、とても読み応えがあって味わい深い一冊です。【又蔵の火】は、脱藩して殺された兄貴の恨みを晴らす、仇討ちの決闘シーンが迫力があります。私は26歳で江戸でひと肌あげる【帰郷】の主人公の男が好きです。一途な気性で弔いの異名をもつ、喧嘩好きな一匹狼の物語です。 2021/09/04

やも

78
5話の中編集。久しぶりの藤沢周平さん。いやぁやっぱりいい。贅肉のない文章は読んでて惚れ惚れしちゃう。「女がだらしなく五寸ほど閉め残して行った襖を、立って行って閉めなおすと、…」とか、これだけで2人の性格が見えてくるもんね。主人公だけじゃない、モブの使い方もグッと来るんだよね〜【又蔵の火】なんて、ハツがいるからこその、この余韻だもんね。藤沢さんはどうしようもない碌でなしを書くのが上手い。ドヤさ!な決め台詞がないのがかっこいいんだよね〜。★42022/08/30

ふじさん

76
「帰郷」を仲代達也、常盤貴子でドラマ化されたのを見た後で読み返した。ドラマは原作に忠実に描かれており楽しく見た。又蔵の火は、藤沢周平の二冊目の作品集で色調は暗いが好きな作品の一つだ。やくざを主人公にした作品だが、何故か彼らに共感を抱くことが出来た。特に好きな「帰郷」は、訳あって女房を置き去りし、故郷を出たやくざの宇之吉が病身の身体おして帰郷し、初めて存在を知った自分の娘のためにひと肌脱ぐという人情噺だ。どの短編も暗いながらも温かい作家の眼差しも感じる秀作だ。 2020/10/30

AICHAN

64
図書館本。武家もの、町人ものの短編集。表題作は仇討ちもの。古文書がちらほら引用されているので、あるいは本当にあった仇討ちから題材を取ったのかもしれない。あとは博奕打ちもの。木曽の博奕打ちが親分の身代わりで罪を被り江戸に逃れる。言い交わした仲の女を木曽に置いて。3年後には木曽に戻るつもりだったが、江戸で悪い女につかまり、その亭主を殺すハメになる。数十年後、博奕打ちはようやく木曽に戻る。女は死んでいたが、娘が残されていた。博奕打ち世界の酷薄さ、男と女の情、親子の絆…。締め付けられた。2018/07/29

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